第360話 うちの犬が可愛すぎて可愛い
選挙活動が始まって三日、俺達は放課後に行方不明者の捜索を進めていた。
ギャル先輩は未だに真面眼鏡先輩の邪魔ばかりしているのを見かける。
真面眼鏡先輩は嫌がらせに負けずに演説をしているらしいが、どうしても男たちの視線はギャル先輩のほうに奪われてしまうので中々上手くいっていないらしい。
「ええぃ!!どこか行きたまえ!!」
「私はた・ま・た・まここで演説しているだけだしぃ」
真面眼鏡先輩は何とかギャル先輩から逃れようとしているらしいが、どこに行っても気づけば真面眼鏡先輩の下に現れて邪魔を始めるようだ。
その執念は逆に凄い様な気がしないでもない。でもなぜ他の西脇先輩や神崎先輩の所にいかないのかなぁ。
それだけが疑問である。
選挙の事はさておき、捜索をいつも全員で行っていたら誰も休みに出来ない。その状態を回避するために、俺は一人で、女子は二人一組でローテーションをして活動することにした。
今日は俺とラックが組んで捜索する番だ。
ラックの影魔から連絡が来たら行動し、それまでは待機だ。
「ウォンウォンウォンッ」
ラックがもっと働きたいとごねるので、仕方なく仕事を増やしたら、影魔で皆の負担を軽減するように、対象の命の最低限の保護までやってくれるようになってしまったので、俺達は本当に最後の仕上げだけになってしまった。
この前自分もちゃんと働こうと決めたのにどうしようもない人間だ俺は。
俺は思わず自嘲する。
「本当にこんなに働いていいのか?」
俺は心配になってラックを撫でながら話しかける。
「ワフッ!!ウォウォウォウォンッ」
ラックは、むしろまだ動き足りない。もっと動きたい、と体をウズウズさせて尻尾をブンブンと振って俺にアピールする。
影魔は基本的にラックからは自律して徘徊しているため、全くと言っていいほどコストがかからず、働いていないのと変わらないらしい。
「それに俺の従魔なんだからもっとこき使ってくれていい?……全く!!……けなげすぎだろこの野郎!!」
「ワフッ。ウォンッ」
そんな風にラックが従魔の鏡のようなことを言ってくれるので目頭が熱くなって、俺は思わずワシャワシャと撫でまくった。
ラックも嬉しそうに鳴いて俺に頭をこすり付けてくる。
まさか出会った時はこんなに凄いヤツだとは思わなかったけど、とんでもない進化を遂げたもんだな。これからもっと成長すると考えると、一体どこまで行くのか分からないな。
俺はラックと出会ってからの日々を思い出して少し物思いに耽った。
「それじゃあ、今は頼らせてもらうけど、学校卒業したら俺もちゃんと頑張るから許してくれよ?」
ラックの働きたいという気持ちを無碍にすることも出来ず、学生の間は頼らせてもらうことにした。
「ウォンッ」
「何?卒業したらむしろもっと自分のしたいことをしろ?おいおい、お前ってやつはホントに!!」
しかし、ラックが俺を頬を鼻で小突いてそんなことを言うので、俺は額に手を当てて天を仰いでしまった。
どこまで主人想いの奴なんだ。
うちのペットが可愛すぎる件について……。
「おいおい、そんなに俺に尽くす必要なんてないんだぞ?ラックも自分の好きなことをしていいんだ。ラックにも好きなことあるだろ?体を動かしたりさぁ」
「ウォンッ」
「なにぃ!?俺の役に立つのが自分のしたいことだとぉおお!?ラック!!お前は俺をキュン死させるつもりなのかぁああ!?」
俺は心配になってラックにも好きなことをしてもらおうと思ったんだけど、どこまでも主人想いのラックに俺は思わずギュっと抱きしめた。
「ウォウォウォンッ」
ラックが苦しいと抗議をする。ちょっと力を籠め過ぎたみたいだ。
でもそんなことを言われてたら感極まって思い切り抱きしめちゃうだろ?
「おっとごめんな。でもお前が悪いんだぞ?俺を喜ばせるようなことばかり言うから」
「ウォンッ」
「ほら、またそういうことを言う」
ラックに謝罪した後で、呆れるように言い放つと、ラックはご主人様のことを一番に考えるのが従魔として当然のことだとか言い出す。
こんなに主人第一の従魔居る?
控えめにいってもうちのラックは世界一の従魔であり、ペットだと思う。
くぅ~、皆に自慢できないのが悔やまれる。ラックの力はトップシークレットだからな。
「一体俺はお前に何を返せばいいんだろうな?」
積み重なっていく恩に、俺はラックを撫でながら問いかける。
「ワフッ」
「おいおい、もう返してもらってるから俺が楽しそうにしてればそれでいいって!?俺はお前に何も返してないぞ!?」
ラックがそんなことを言うので、俺は首を振る。
俺はラックにこんなに良くしてもらう程のことをした覚えはないぞ?
殺さない方法が従魔になるということだっただけだし、ラックが自分からなったんだしなぁ。
「ウォンッ」
「ご主人様の従魔になれた、それだけで返してもらってるだと!?」
従魔になるってそんなに感謝されるようなことじゃないよな!?
むしろ俺の命令を聞かなければいけなくなるから嫌な場合も多いんじゃないのか?
「ウォンッ」
「もういい。これ以上は本当にやめるんだ。俺の心が耐えきれそうにない」
さらに俺に感謝を伝えて来ようとするので、俺がこのままでは本当にキュン死してしまいそうだったので話を打ち切った。
全くうちのペットは最高だぜ!!
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