第349話 モテ期?
アキに怒られつつ、昇降口に辿り着いた俺達。
「こ、これは……」
「下駄箱にラブレターって奴じゃねぇか!!やっぱりお前は敵だぁ!!そこになおれぇ!!」
下駄箱に入っていた数通の手紙。
アキはそれを見てさらに怒り狂った。
「ちょ、ちょっと待てって流石にどう考えてもおかしいだろう」
「何がおかしいんだ!!こんちくしょー!!」
俺が慌てて宥めようとしたんだけど、アキは聞く耳を持たない。
最初の一人だけならまぁ奇跡的に俺を好いてくれる人がいた、とまだ素直に喜ぶことも出来たかもしれないけど、流石に下駄箱に複数のラブレターらしき手紙まであるのは何がなんでもおかしい。
「昨日まで一切そういう兆候はなくて、俺が何か変わったわけでもないのに、急にこんなに変わるわけないだろ普通」
「そんなの分からないだろ!!」
アキは歯を食いしばって俺を威嚇する。
「いや、そう言われてしまうと可能性はゼロじゃないから否定できないけど、それにしたって限りなく可能性は低い。だから何か理由があるはずなんだ」
「どんな理由なんだよ!!」
「それは何度も考えているけど、全く分からない」
つまり、こうなった原因がどこかにあるはずだ。しかし、いくら考えてもこんな扱いを受ける理由が思い当たらない。
スパエモの施術によって美少女達と一緒に居ても絡まれなくなるくらいには外見が変化した時でさえ一切何もなかったのに、一体何がどうなって今こんな状態になったんだろう。
「それならお前がさらにモテただけだろうが!!いい加減にしろ!!」
アキはフンとそっぽを向いてドスドスと先に歩いていってしまった。
「ん」
シアが何故か俺にピタリとくっついてきた。
「どうしたんだ?」
「ふーくんはカッコいい。モテるのは当然。嫁として鼻が高い」
「いやいや、まだ嫁じゃないでしょ」
俺がシアに尋ねたら、さも当然のように嫁ポジを強調してくる。
「まだということは将来はそうなるということ。つまり今もすでに嫁ということで間違いない」
「いや待てその理論は絶対おかしい」
俺の言葉尻を捕らえて独自な理論を展開するシアに、俺は手と首をブンブンと横に振った。
「ラブレターが欲しいのなら私が原稿用紙千枚くらいの軽めのをあげますデスよ?」
俺と話しながら器用にノエルを追い返しているシア。ノエルはそれでも負けじと近寄ってきて、ラブレターの部分の発音をやたらカッコよく強調してアピールしてくる。
「原稿用紙千枚ってもうラブレターじゃないだろ」
原稿用紙千枚って四十万文字。それはもはや超大作の上中下巻くらいのレベルだ。それが軽めってノエルの頭の中はどうなってるんだ?
「兎に角、これ以上ここで考えたところで答えは出ないから一旦保留にして後で考えるぞ。今は教室に行こう」
「そうだな」
「ん」
「はいデスよ」
俺はひとまず拡張バッグの中に手紙を放り込むと見せかけて影の中に収納して、皆で教室に急いだ。
お昼の時間にスマホを確認したら、零からメッセージが返ってきていた。
『それなら早い方がいいでしょうから、今日放課後に佐藤家に伺うわ』
そう書いてあった。
「分かった。それにしてもいつも時間を合わせてもらってるけど無理してないか?俺達としてはありがたいけど、そんなに無理して合わせてくれなくてもいいんだからな。自分のことを優先してくれよ?と」
いつも俺達のことを考えてくれるので負担になってないか心配だった。
俺達としては大変頼りになるし、助かるんだけど、面倒事を大抵押し付けている形だからな。
『大丈夫よ。これでもあなたたちよりも長く生きてるからその辺りは弁えてるわ。だから、あなたたちは心配しないで私に任せておけばいいわ。でも心配してくれてありがとう』
俺の返事に対してなんとも男前の返事が返ってくる。
やはりとても頼りになるお姉さんだった。
「お帰りなさい」
俺達は授業が終わるなり合流して家に辿り着くと、そこにはすでに零が訪れていて出迎えてくれた。
「ほら、あなたたちも座ってこれでも飲みなさい」
母さんは俺達がリビングに入るなり、お茶を持ってきて着席を促す。俺達は母さんの指示に従い、テーブルに着く。
ズズズッ。しばしの間、お茶を堪能する俺達。
「それじゃあ、落ち着いたところで早速受けた依頼のことを話すわね。一応情報が洩れる可能性が考えてその辺りのことはチェック済みだから大丈夫よ」
ここにいるのは、母さん、俺、七海、シア、天音、零の六人だ。ノエルは勿論俺達のパーティメンバーではないのでここにはいない。ミラも真さん達の所にいるので来てはいない。
それから零から詳しい内容を聞いた俺たちは改めて問題がないことを確認して、今後の流れを確認して話を終えた。
「ふーくん。ラブレター貰ってた」
「え!?お兄ちゃんラブレターもらったの!?」
仕事の話が終わり、雑談に移り変わると、シアがそんなことを暴露する。七海はその事実にひどく驚いていた。
そうだよな、俺がラブレターなんて貰えるわけないもんな。
「ああ、実はな……」
俺は今日あった出来事を順を追って話し始める。
「ちょっと迂闊だったかしら……」
話を聞き終えた零は少し俯いて何がしかを呟いた。
「どうかしたのか、零」
「いえ、なんでもないわ。こっちの話よ」
気になって尋ねてみたが、特になんでなかったらしく零は静かに首を振った。
零がないでもないというならそうなんだろう。
俺は気にしないことにした。
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