第323話 最終兵器(第三者視点)

―パァンッ

―パァンッ

―パァンッ

―パァンッ

―パァンッ


 行く手を阻む鉱物の塊を消し飛ばしながら一筋の光が真っ暗な暗闇の中に無限大のきらめきが浮かぶ世界を突き進んでいた。


 その光は普人が怒りで全力以上の力を込めて放った”気”の一撃である。


 普人のもはや人を超えた一撃はすでに何光年も宇宙と言う海を突き進んでいた。それでもなお勢いが衰えることはなく、今もひたすらに直進を続けている。


ードォオオオオオオオオンッ!!

ードォオオオオオオオオンッ!!

ードォオオオオオオオオンッ!!


 そんな時光に触れて幾つもの爆発が起こった。


 しかし、光は一切の影響を受けることなくそのまま真っすぐと進んでいく。


 光に横から攻撃していたのはいくつもの艦隊。それはリザードリアンの本星に残っていた筈の防衛艦であった。


 彼らがなぜここに出てきたかと言えば、勿論星を防衛するため。


 そう、光の進む先には彼らの母星がある。


 彼らは、地球を遥かに凌駕する技術で作られた探知器によって、遠く彼方から飛来するエネルギー波をキャッチした。


 それが自分たちの戦闘艦隊を壊滅させたエネルギー波であることを察知した彼らは、このままでは自分たちの星が光によって消し飛ばされてしまう、そう考えたのだ。


 だから彼らはなんとか光をどうにか出来ないかと光の通り道で待ち構えて、攻撃を放ったのであった。


 しかし、その結果は先の通り。


 光に一切の変化などない。


 光はあざ笑うかのようにリザードリアンの母星に向かって進み続けるのであった。




 一方リザードリアンの母星。


「くっ。ダメか……」

「まさかわが軍最強の攻撃手段が効かないとは……」


 司令室のような場所でモニターを見ていた老齢のリザードリアンが悔しそうにつぶやく。


 そう彼らはモニター越しに光への攻撃の様子を見ていた。しかし、なんの効果がなかったことに落胆しているのだ。


「もはやアレの封印を解くしかないのではないか?」


 椅子に座っていてひと際豪華で威圧的な服装をしている司令官リザードリアンが提案する。


「いや、あれは周辺全てを飲み込むと言われている禁忌の武器ですよ?使えばあの光だけでなく、この星にもどんな影響があるか分かりません。絶対に使用するべきじゃありません」


 彼らが使おうとしているのはブラックホール弾。


 ぶつかった瞬間にマイクロブラックホールを生み出す、という武器である。


 過去に実験で使用した際、近隣の惑星を飲み込み、実験していた部隊も壊滅したという、自分たちでさえ碌に扱うことが出来ない、地球人はおろか、地球をはるかにしのぐ技術を持つ彼らにおいても、過ぎた武器であった。


 しかし、現状光さえも吸い込むというその武器以外にエネルギー波を食い止める手段を見当たらないのも事実。


「それでは他に代案でもあるのかね?」

「くっ……」


 司令官に問われて、副官は何も言い返すことはできなかった。


「それではこれよりブラックホール弾によるエネルギー波の迎撃作戦を行う。各自ブラックホール弾の使用許可申請手続きを進めよ」

『はっ』


 地球の核同様に、どこか遠くであれば壊滅できる武器として使用することは可能なので、厳重なセキュリティと複雑な使用許可手続きの下、手順を踏むことで使用可能な状態になっている。


 そのため、彼らは最終手段だとしてブラックホール弾の使用を決断した。


 司令官の指示に従い、司令室内に居る全員が各自で使用許可申請手続きを行い、それぞれに送られてくるパスを全て入力することで第一ロックが解除される。


「登録クルーによるブラックホール弾の使用許可申請とパスを確認。第一ロックを解除されました」

「うむ。次に声紋認証を行う。全員認証を進めよ」

『はっ』


 第二ロックは登録クルー全員の声紋認証だ。各々が自らの所属と階級、名前を話し、その声が本人と認められば、第二ロックが解除される。


「登録クルーによる声紋認証確認。第二ロックが解除されました。最終ロック画面を表示します」


 第二ロックが解除されると、司令官の網膜パターンによる認証が司令官の目の前に半透明なウィンドウとして浮かび上がった。


「網膜パターンが確認されました。最終ロックへと移行」


 自動的に司令官の網膜パターンが読み込まれ、第三ロックが解除され、司令官座っている机にガラスのようなもので守られたボタンが現れる。


―パリーンッ


「最終ロック解除」


 ガラスをたたき割るようにしてスイッチを押した司令官。


「最終ロックの解除が確認されました。目標を設定してください」

「エネルギー波のスピードを計算にいれ、我が星にもっとも被害を及ぼさない位置を割り出して設定しろ」

「はっ。計算が終了しました。目標を設定しました。トリガーを表出します」


 オペレーターに従い、指示を出す司令官。司令官の指示に従ってオペレーターが目標を設定すると、司令官の前にホログラムのような半透明の銃が現れる。


「ファイブカウントで発射する。五、四、三、二、一、発射!!」


 ホログラムは実際に体積があり、掴むことが可能で、司令官の掛け声によってカウントをしてゼロと共にトリガーが引かれた。

 

 その瞬間、リザードリアンの本星よりブラックホール弾が普人のエネルギー波に向かって発射されたのであった。

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