第309話 幼女の正体
「いや、俺じゃないぞ?」
俺は幼女の問いかけに首を振って答えた。
なんで血を飲んでるのに契約者が分からないんだ?
「む、なんじゃと?我の新しい主は粋な男と決めておったのじゃがな……。それじゃあ、どこの良い男が我の主になったのじゃ?」
うむむと悩んだ後、辺りをキョロキョロと見回す幼女。
「ん。私」
「ほうほう。我のように美しい銀髪。にっくき太陽が浮かぶ青空のような透き通った瞳。線が細く丸みのある体つき。まるで人形の如き容貌、極めつけは少女が着るであろう服装……どう見ても女じゃろうが!!」
シアが幼女にアホ毛をピーンと立てて返事をすると、親指と曲げた人差し指で顎を挟み、品定めをするようにシアの姿を頭のてっぺんから足のつま先まで検分しながらその姿を論評した後、ノリツッコミをして地団太を踏んだ。
隠し部屋とはいえ、どっちが入ってくるなんて分かるもんじゃない。
「いやいや、男と女どっちが契約者になるかなんて分からないだろ?」
俺は疑問に思ったので尋ねる。
「そんなことはない。この部屋に入るには男の魔力が必要だったはずじゃ。それとこの棺を開けるのにも男の魔力が必要なはずじゃ」
「ん?いや、俺の魔力は全く反応しなかったぞ?それどころか女の魔力で開いた扉が開いたな。それに棺に関して言えば、そもそもそんな鍵みたいな者は掛かってなかったな」
「……」
幼女が自信ありげに答えたけど、俺がさっきあったことを伝えると黙ってしまった。
流石にその程度の手順だけで契約者が男になると思うのは流石に安易すぎる。
「それに仮に男の魔力で開いたとしても、俺達みたいに混合のメンバーが来る可能性もある。だから結局契約者の性別がどちらになるかなんて分からないよな?」
「……」
さらに、ちょっと考えただけでも分かることを伝えたら、さらに黙って俯いてしまった。
あらら、言い過ぎたかな。
「ちょっとお兄ちゃん、こんな小さな女の子をいじめすぎだよ!!」
「ん。私の妹。いじめちゃダメ」
案の定、七海とシアに怒られてしまった。
「その……なんか悪かったな?ちょっと言い過ぎだった」
「……」
俺が頭を下げたけど、何も言わずに肩を震わせ始めた。
うわっ。まさか泣かせてしまったか……?
「この通り、俺が悪かった!!」
「……ふふふふ、ふはははっ、はーはっはっはっはっ!!まぁそんなこともあるじゃろうな!!」
俺は適当な謝罪過ぎたと思い切り頭を下げたら、突然顔を上げて腰に両手を当てて笑い始める。
「は?」
俺は意味が分からな過ぎて素っ頓狂な声を上げた。
なんだ、泣きそうになっていたと思ったら実は笑っていただけだと!?
「はぁ……ただの取り越し苦労かよ。それならそれでいいか。それで?お前は何者なんだ?」
ため息を吐いて勘違いだったことに安堵すると共に呆れてしまったけど、兎に角今は情報が必要だ。
俺は幼女の正体を尋ねる。
「はーはっはっはっはっ!!よくぞ聞いてくれたのじゃ!!何を隠そう我は吸血鬼最後の真祖であり王。ミラーディア・アルディベールと言う!!ひれ伏すが良いのじゃ!!はーはっはっはっはっ!!」
幼女はいきなり威張り散らした風に自己紹介をした。
『……』
俺達は思わず沈黙。
「おお!!我の偉大さに言葉も出ないのかのう!!はーはっはっはっはっ!!流石我じゃ!!」
「違うわ!!呆れてるだけだ!!流石にそのなりで王はないだろ、王は!!」
何を勘違いしたのか俺達が自分の偉大さで言葉を失っていると思っているようなので、俺は思わずツッコんでしまった。
流石にその小さな体で王は無理があるだろう。
「なんじゃとぉお!?このナイスバデーで数々の童貞の男を虜にした我のこの姿のどこが王にふさわしくないと言うんじゃ?」
「鏡を見ろよ、鏡!!」
科を作って「うっふん」とでも言いたげな表情で叫ぶミラーディアに俺は影から鏡を取り出して渡してやる。
「あっ」
しかし、俺はその時俺がやったことの無意味さに気付いた。
吸血鬼と言えば鏡に映らないということで有名だ。それが本当なら俺のやったことは何の照明も出来ずに終わる。
そのはずだった。
「ふん。よかろう………………なんじゃこりゃぁあああああああああああ!?」
俺は引っ込める前に俺の鏡を手に取り、自分の姿を鏡に映したミラーディアはどこかのジーパンをはいた刑事も真っ青なほどの叫び声をあげた。
「お、おい、どうしたんだ?」
ミラーディアの尋常じゃない姿に俺は恐る恐る尋ねる。
ま、まさか鏡が実は弱点だったとか?
「わ、我の……」
「我の?」
「体が……」
「体が?」
「縮んでおるのじゃあああああああああああ!!いやぁああああああああああ!!我のナイスバデーがぁあああああああああ!!」
幼女は四つん這いになった地面をドンドンと叩いて悔しがった。
どうやら本来はもっと成長していたらしいけど、なぜか幼女になってしまったらしい。
「い、いや、それはともかく、吸血鬼って鏡に映るのか!?」
俺は至極当然の疑問が飛び出す。
「吸血鬼が鏡に映らない訳なかろうがぁあああああああああ!!」
俺は涙目をした吸血鬼の王に怒鳴られながら衝撃の事実を知ることとなったのであった。
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