第295話 王様
「なんか世界樹滅茶苦茶大きくなってない?」
「あ、ホントだ。それに凄く元気になってる」
「そうね、一体どうなってるのかしら?」
「やっぱりあの人間達の仕業じゃない?」
おっぱいがばるんばるんになった女エルフ達が落ち着くと、彼女たちの話題は目の前にある世界樹の回復と成長に移る。
「そういえば一体どうして我らは進化したのだ?」
「うむ。それは世界樹が成長したからじゃろうが、その原因は考えられるとすれば……」
解放されたサリオンさんと長は、自分たちが進化した原因を話し始める。二人の視線は俺達に向けられて、戻ってきた他のエルフ達の視線も一緒にこちらに集まった。
滅茶苦茶気まずいな。
いやまぁ世界樹を回復させたのは俺達だし、世界樹も成長したのも俺達が回復させた時だから、原因は俺達にあるというのは火を見るよりも明らかだよな。
「十中八九彼らによる回復のせいじゃろうなぁ」
「確かにそれしか考えられないか……」
俺達を見ながら頷き合うサリオンさんと長。
「そういえば、お主達の名前を聞いてなかったの」
「あ、そういえばそうですね。名乗りもしなくすみません。俺は佐藤普人、こっちは妹の佐藤七海、その隣にいるのが左から葛城アレクシア、霜月天音、黒崎零です」
俺が挨拶をして、他の皆を紹介すると、七海たちは俺の声に合せて一歩前に出てお辞儀をした後、また後ろに下がった。
「いやいや、自己紹介ありがとう。それでお主達に聞きたいのじゃが、魔力を送っている時に何か感じなかったかの?」
―ギクッ
「い、いや、俺は何も感じませんでしたね。なぁ?」
俺は思わず体を硬直させてしまうけど、出来るだけ表情に出さないようにして答え、七海にも同意を求めるように尋ねる。
頼む!!何もないと言ってくれ!!
「えぇ!?何?」
俺の圧が強すぎたのか、七海は困惑の表情になる。
「だから魔力を世界樹に送っている時に何か変な感じしなかったか?」
俺は気持ちを落ち着かせて七海達に再度尋ねた。
「んーん。何も感じなかったよ」
「ん」
「私も特に何も感じなかったわよ」
「そうね。私もよ」
ふぅ。どうやら皆俺の気を感じ取ってはいなかったようだ。いや、零が感じ取れないということはないはずだから、今の瞬間に俺が望んでいることを理解してくれたに違いない。
流石俺達のお姉さん、頼りになる。
俺は零の気配りに感謝した。
「ど、どうやら妹たちも特に何も感じてないみたいですね」
「そうか。しかし、なんにせよ、お主達のおかげでワシらはこのように進化することが出来たの間違いない。それはまさに神の御業と言えよう。今後お主達、いや王とその家族や妃達には我らの絶対の忠誠を誓おう」
俺が冷や汗をかきながら返事をすると、何故か長に跪かれてしまった。
「いやいや、勘弁してくださいよ。俺達は何もしてませんって。それに彼女たちは妃じゃありませんから!!」
「それは聞けぬ話じゃ。徐々に体が馴染んできたせいか、王に跪くのが自然な好意じゃと分かってしまうのじゃ。これはワシらの意志ではどうにもできん。彼女らが妃でなくとも、王と親しい関係にある人物達であれば、それに準じる扱いになるじゃろうて」
俺は慌てて彼らを立ち上がらせようとしたんだけど、受け入れてもらえなかった。
「これどうしたらいいと思う?」
「お兄ちゃんに忠誠を誓ってるんでしょ?いいじゃん。別に困ることないし」
「ん。もらえるものは貰っておく」
七海は好きにさせたらいいという感じで、シアはESJに行った時と同じような態度を取った。
「王様とか中々なれるんものじゃないわよ。やってみたらいいじゃない」
「うーん。国際問題的にはどうなるか分からないけど、報告しなければ何も問題ないわ」
天音は他人事だと思ってニヤニヤしながら俺を見ているし、零も何故かこのことを報告しないことにしたようだ。
報告してよ!!なぜかこういう時は悪ノリするんだから!!
「はぁ……。兎に角頭を上げてください。そうは言われても俺から何かを命令することはありませんので、今まで通り生活していてください。もし何かあった時は力になってください。それから今後畏まった態度で接するのは止めてください。そうじゃないと居心地が悪いんで。俺からは以上です」
「分かったのじゃ。王の仰せのままに」
俺はひとまず一旦問題を棚上げしてお願い事を伝えると、再びエルフたちが頭を下げた。
「はぁ……気を注ぐんじゃなかったかなぁ」
俺は世界樹に気を送り込んだことを若干後悔した。
「それではこれより、セイクリッドツリーイーターの討伐、世界樹の回復と成長と我らの進化、そして新たなる王を迎えられたことを祝って宴を開催する!!」
『おおぉ!!』
その後、エルフ主導の下、盛大な宴が行われることとなった。
エルフの民族衣装に身を包む女性のエルフたちは、元々スレンダーな体型を想定して作られていたせいか、上からあふれ出しそうになって目のやり場に困ったし、短い貫頭衣に近いその衣装の下から覗く生足もスラッとしていて艶めかしくてドキドキした。
「うへへ……」
そんな彼女たちに両サイドから酌―飲み物はジュースだった―をしてもらうのは、たった一日で収穫時期まで育った四つの果実に挟まれてとんでもなく天国のようなひと時だった。
「この場は皆に免じて何も言わないけど、後で説教なんだから!!」
「
「私達と言うものがありながらあれじゃあ当然ね」
「それもそうだわ」
宴が終わった後、俺は正座させられて地獄の説教タイムある事を今はまだ知らない。
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