第267話 ようこそ、誰もが夢見て憧れる場所へ
「今日の夜はラスベガスに行ってみないか?」
「え?ラスベガスってあの?」
「そうそう。一度は行ってみたかったんだよね」
俺が提案したのはラスベガスに宿泊するということ。
だってラスベガスのカジノでの一攫千金って憧れるじゃん。いや、もう一生使いきれない程の資産あるでしょって言われるかもしれないけど、それとこれとは別でしょ!!
「あ、私も行ってみたい!!面白そう!!」
「ん」
七海とシアは目を輝かせている。
「そういえば私も行ったことなかったわね。父さんに誘われたことはあったけど」
「今は年齢制限もないものね。小さくても保護者が居れば入場できるし」
「そうそう」
天音が昔の事を思い出して呟くと、零がカジノの入場制限について話し、天音が同意するように頷く。
世界にモンスターが現れる前はカジノに入れるのは大人だけだったんだけど、人口が大幅に減り、探索者の台頭したことよって、入場制限の年齢が十六歳まで下げられた上に、それよりも小さい子でも成人した保護者と一緒なら入場も賭け事も出来るようになったらしい。
だから俺達でも問題なく入場できるし、七海の保護者として零がいれば何も問題はない。
「どうする?あんまり興味ないか?」
「いや、ちょっと興味あるわ。それにどうせ全部無くなったって破産なんてしないし、気楽にできるしね」
「そうね。最近は感覚がおかしくなったけど、私たちは多少ギャンブルをしたところで破産なんてしないのよね。それなら私もやってみようかしら」
そんなに興味ないかと思ったけど、二人も破産する心配がないと分かるとやってみたいという。
「そうか?別に無理しなくてもいいんだぞ?」
「私は本当にやってみたいわ。一度は行ってみたいと思っていたし」
「そうね。私もよ」
念のため無理をさせていたら申し訳ないので、再度確認してみたけど、気が変わらないようなのでこれ以上は何も言わないことにした。
「ジャック達にラスベガスを案内してもらいたいんだけど、いいか?」
「え、あ、はい、も、勿論です!!」
「謹んでお受けさせていただきます!!」
ディスティニーランドでカイザーを追い払うイベントが終わってからというもの、二人はずっとこの調子だ。俺に敗北した時以上に
普通に接してくれって言ったんだけど、二人は頑なに首を横に振った。
一体どうしたって言うんだろうな?
まぁ意思疎通に問題があるわけじゃないから気にしないことにしている。
「それじゃあ早速行こう」
俺達はラックの影転移でラスベガスの人気のない場所に移動した。
「そ、それじゃあ、まずは服を整えましょう」
「え?」
「こ、これから行くカジノは身なりに関して結構厳しいですよ」
「そうなのか、分かった」
ラスベガスについた俺達はジャックの案内の元、まず服装を整えることになり、ブティックに案内された。
「うぉ、みんな綺麗だよ」
「わーい、やった!!」
「やった」
「うふふ。ありがと」
「お世辞でも嬉しいわ」
俺はそそくさとタキシードに着替えた俺は女性陣を待っていると、全員が煌びやかなドレスを身に纏っていた。
七海はオレンジ色のオフショルダーのドレス、シアは瞳に合せた紺色のビスチェタイプのドレス、天音は胸元が大きく開いたワインレッドのドレス、零は髪の毛の色に合せた、背中が大きく開いたホルターネックの黒のドレス。
皆が皆、各々の個性にあっていてそれぞれの魅力を引き出していた。
「お兄ちゃんもカッコイイよ!!」
「ん。好き」
「そうね。中々男前よ」
「ええ、とっても似合ってるわ」
「お、おう。ありがとな」
逆にこっちは一人なので皆に褒めかえされると照れる。一人は明らかに誉め言葉ではなく唯の告白だったけど。
とりあえず今のところは無視しておく。
「それじゃあ、いきましょうか佐藤さん」
「分かった」
俺と同じようにタキシードに身を包んだジャック達に促され、俺は支払いを済ませてから二人についていった。
「ここが……カジノ!!」
「そうです。俺達が会員になっている店なので、俺達の紹介ってことで問題なく入れると思います」
「そうか。よろしく頼む」
「分かりました!!」
俺達が辿り着いたのはとんでもなく立派で、それでいて気品を失っていない上品な佇まいの店。
心は未だに一般庶民の俺は思わず喉を鳴らす。
「お、ジャックじゃないか。久しぶりだな。また負けに来たのか?」
店の前で唐突にジャックに声をかけてきた滅茶苦茶ガタイが良くて強そうな男。その男は店の前で入り口に立っている二人の内の一人だった。どうやらジャックを知っているらしい。
「おう。久しぶりだな。違う。今日はこちらの方たちの紹介と、案内をするために来たんだ」
「お前がそんなことするなんて珍しいな」
「色々あんだよ」
「ほう」
ジャックの返事に俺達を品定めするようにじろじろと観察する男。
「まぁいい。お前の紹介だからうちの店に入る資格がある。それじゃあ、身分証を出してくれ」
ひとしきり観察した男は俺達に身分証の提示を要求する。俺達は全員ギルドカードを提示した。
「そっちの嬢ちゃんは保護者が必要だぜ?」
「それは私が保護者になるわ」
「そうか。それなら問題ないな。ようこそ、誰もが一攫千金を夢見て訪れるカジノ・ヘブンへ」
身分の確認が終わった俺達はさっきまでの強面の男とは思えないほどの朗らかな笑顔でカジノに迎えられた。
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