第262話 ディスティニー、それは運命
ジャックとジョージの案内の元、エモーショナル・スタジオを一日楽しんだ俺達は関連のホテルのお金で取れる一番いい部屋を取ってぐっすりと疲れを癒した。案内してくれたジャックとジョージにもいい部屋を取ってやったら泣いて喜んだ。
「本場のディスティニーランド楽しみ!!」
「ん」
「私もアメリカに住んでたけど行ったことないのよね」
「私も旅行で来た時は行けなかったわ」
「そっか。そりゃあ楽しみだな」
翌朝、目が覚めた俺達はホテルの朝食を食べながら皆でこれから行くディスティニーランドについて話していて、全員が初めて行くということが分かった。
やっぱり二度目より、一度目の経験を皆で共有できるっていうのはいいもんだよな。
俺達はご飯を食べ終えたら、ホテルをチェックアウトして転移を繰り返してディスティニーランドに辿り着いた。
「今日は絶対楽しむわよ!!」
「そうね!!」
天音と零は俄然気合が入っている。
それはそうだよな。昨日は散々他人から、特に男達から注目されて気が気じゃなかっただろうし。俺も威圧していたけど、それだけで男の本能のを抑えきることはできなかった。
あれだけの男達からの厭らしい視線を集めていれば、二人ともアトラクションやショッピングどころではなかったはずだ。
「ああ、今日はゆっくり楽しんでくれ」
俺は気合の入る二人を見て肩を竦めて苦笑いを浮かべた。
「あの日本人の女の子達マジで可愛くない?」
「それな。全員レベル高すぎ」
「お前ちょっと声かけてみろよ」
「そうだなぁ。行ってみるか。……ひっ」
しかし、彼女たちに平穏は訪れなかった。なぜなら彼女たちが圧倒的な美をもっていたからだ。
昨日はサキュバスの恰好をしていた二人に注目が集まっていたおかげで、七海とシアには他人の眼があまり行かなかったんだけど、今日は四人とも可愛らしい服装で決めているので、全員に目が行くのは仕方がない。
ただ、シアが近づくな、というオーラを全力で全方位に放っているので男たちは近づけないでいるんだけどね。
「はぁ……今日は昨日と違って人目を気にせずに楽しめると思っていたのに……」
「ホントねぇ……」
何度かアトラクションに乗った後、昨日衆目に晒されて辟易としている二人は、二人してため息を吐いた。
スパエモ行く前ならもう少し一目は避けられたと思うんだけねぇ。スパエモで全身磨かれた皆はそれこそ芸能人もビックリの美しさ、可愛らしさだから男は放っておかないよな。
「もう二人とも!!そんなに周りなんて気にしなくても平気だよ!!だってお兄ちゃんがいるからね!!」
「ん。ラックもいるからもっと気を抜いても平気」
そんな二人を見てマイペースな七海とシアが声を掛ける。
「ん?俺なんかが守ることで気にせず遊べるなら遊んでくれていいぞ?」
突然話を振られた俺。
俺はBランクモンスターようやく倒せるようになった程度の力しかないのに、なぜ俺なんだろうかと疑問を抱きながらも、七海たちの言葉を否定することはできないので、俺は二人に守る事を確約する。
二人とも俺なんかより高ランクの探索者なんだからいらん心配だと思うんだけどな。
「そ、そう?ま、まぁ普人君が守ってくれるなら少しは気にしなくて済むかもね」
「そうね。佐藤君が守ってくれるなら安心できるわ」
俺の言葉にどこかよそよそしく俺の顔を直視せずに別の所を見て答える二人。
やっぱり余計なお世話だったのかもしれないな。
ただ、そのおかげか二人の肩の力が抜けて、それ以降は結構楽しめていたように思う。
あいつがやって来るまでは。
「やぁやぁ麗しいお嬢さん方!!」
やたらと芝居がかった王子様のような身なりと容姿をした金髪碧眼の男が俺達の前にやってきた。
こいつの呼び方を聞く限り、俺が数に入っていないようだけどな。
「きゃー!!あれはカイザー様よ!!」
「本当だわ!!アメリカの英雄カイザー様じゃない!!なんでディスティニーランドにいるのかしら!?」
「生カイザー様を見れるなんて幸せ!!」
「はぁーん。カイザー様ぁ!!」
なぜか突然姿を現したかのように周囲の人たちの視線がカイザーとやらに向く。
一体何者なんだ?このカイザーってのは。
「なんなのこの人?」
「邪魔」
七海とシアがキラキラとしたオーラを減資するような相手をゴミをみるような目で見ながら不機嫌そうな顔になる。
「おっと、この私を知らないとは、私もまだまだのようですね。そちらのお二人はご存知のようですが」
「あなたを知らない人の方が少ないと思いますよ、剣王カイザー」
「そうね、私もこっちに居た時はよく名前を聞いたし」
どうやら零と天音はこのキラキラ王子―名前はカイザーって言うらしいけど―の事を知っているらしい。
「こいつは一体何者なんだ?」
「この人はアメリカ最強の探索者と言われている剣王カイザーよ」
へぇ。この気障な王子様がねぇ。
あんまりオーラとか感じないけどな。
人って見かけによらないもんだ。
俺は王子様を上から下までじっくりと眺める。
「おいおい、僕は男に見つめられる趣味はないんだ。それに僕と彼女たちの会話に割り込まないでくれないか?どこかに行きたまえ」
王子はそんな俺を汚物を見るような目で蔑み、追い払うように手を払った。
その瞬間、辺りの気温が何度か下がったような気配がした。
「たまたまディスティニーランドに来てみたら、君たちのような素敵な女性と出会えた。これを運命と呼ばずして何と呼ぶ?せっかくだから僕とお茶でもしないか?」
そんな辺りの雰囲気を感じ取ることもなく、カイザーは七海達に気障なセリフで吐いた。
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