第231話 ごめんなさい。無理です!!
「はぁ~、えらい目に合った……」
俺は強制連行から解放され、帰路を歩いている。
強制連行された後、高校入学から今日に至るまでの話を延々とさせられた。途中シアも言葉少な目ではあるけど、補足や自分目線で感じたことを述べつつ、最後まで付き合った。
「シアが構わないのなら、仕方ないからパーティメンバーについては許す」
一応天音や零の事も何事もなく許されることになった。ただ、真さんもシア同様になぜか天音たちを許容する方向になっている。
一体どうなってんだってばよ。
そもそもそういう関係じゃないと何度も説明したのに……。
「お父さんがふーくんを気に入った証拠。ふーくんままもおk。つまり公認」
当のシアも俺の腕に自分の腕を絡めて嬉しそうに歩いている。別に嫌ではないし、可愛い女の子を腕を組んで歩くのはむしろ嬉しい。天音もやっていたことだから特に拒絶することなく好きにさせている。
今日は積もる話もあるだろうし、親子水入らずで過ごすのかと思いきや、俺が語り終えて全員で一緒に夕食を食べたら、俺と一緒に寮に帰ると言い出して学校の寮を目指して歩いている最中だ。
真さんが寂しそうな顔をしていたのが印象的だった。
葛城夫妻はやはりそれなりに高ランク探索者らしく、高級ホテルに部屋を取り、その一室で時間を気にせず延々と話す羽目になった。
そのホテルから学校までは徒歩十分くらいの距離だ。
「それはひとまず保留な」
「ん」
正直未だに現実感がないのでもう少し時間が欲しかった。
嬉しそうに腕を組んでいるシアを見ると心苦しんだけどね。
しかし、告白以降シアのスキンシップが大分過剰になってきているので、男なんて可愛い女の子にくっつかれて悪い気はしない生き物だから、このまま押し切られてしまいそうな気がする。
そもそもシアみたいな人類最強クラスの可愛い女の子が、俺に告白してくれるチャンスなんてもう二度とないのに保留にすること自体烏滸がましい話なんだけどね。
「ごめんな」
「いい。どっちにしろ一緒にいるから」
「そ、そっか」
なんかこれ俺が断っても断らなくても外堀が埋まって意味がない気もする。
いやいや、そんなことはないはずだ。
きっとこの考える時間に意味はある……はず。
悶々と考えながら言葉少なくシアと会話しているとあっという間に学校の入り口に辿り着いた。
「いるな」
「ん」
そろそろ八時も回るという時間なのに、校門には待っている人間の気配があった。
シアもその気配に気付いている。
「あら奇遇ですね、佐藤君」
校門付近の街灯に照らされて夜の闇の中からその姿を現したのは、そうご存知の通り、我らが生徒会長だった。
今日は朝から学校に行かなかったから出かけていると判断したのか、出来る限り校門付近で待っていたのかもしれない。
一体何をしたいのか分からないけど、並々ならぬ執念を感じる。
「ホントですね。会長はこんな時間にどうしたんですか?」
ただ、俺も随分と慣れてきてしまって対応も普通になり、警戒心が保てなくなってきた。
「日課の夜の散歩をしているんですよ、そろそろ寮に戻ろうかと思っていたところです」
「そうなんですね、自分達も寮に帰るところですよ。ご一緒しますか?」
「ええ。今日はどこかにお出かけされてたんですか?」
いつも通り合流して一緒に寮に歩き出すと、生徒会長がいかにも外から帰ってきたのを見たという
「はい、シアと出かける用事がありまして……」
「なるほど。だからお邪魔虫がいるんですね」
質問にシアに視線を向けながら答えると、生徒会長が少し腰を折って忌々し気にシアを見つめた。
「お邪魔虫じゃない。もう私はふーくんの女。ラブラブ。チューもした」
「なんですって!?それは事実ですか!?」
そんな生徒会長に、昼間の生き生きとしたシアからすっかりいつも通りに戻った彼女が端的に答えて牽制する。
シアの言葉にバッと凄い勢いで俺の顔を凝視する生徒会長。その目は血走っていて久しぶりにこの人に恐怖感を抱いた。
「いや、違いますよ!?シア、嘘は良くないぞ!?」
「ごめん。言い直す。大好きだから私がチューした」
俺はその恐怖感から慌てて手を振り、シアに注意すると、シアは素直に言い直した。
「でも……キスはしたんですね?」
ただ、俺がシアとキスしたという事実は変わらず、突っ込まれる。
その目は一切笑ってなかった。
ひぇ!?怖い。
「え、ええまぁ、不可抗力だったんですけどね。振り返りざまに突然だったので躱す暇もありませんでした」
「そうですか。それでは私ともキスできますね?」
「はっ?」
俺が苦し紛れの言い訳をすると、生徒会長が訳の分からない答えが返ってきた。
意味が分からな過ぎて心の底からさらなる恐怖が湧いてくる。
「だから……私ともしてもらえますよね、キス?」
俺が意味が分かっていないと思ったのか、繰り返す生徒会長。そして俺ににじり寄って迫ってくる。
「ごめんなさい!!(怖すぎて)無理です!!」
その顔はなんだかホラーじみていて俺はすぐさまその場から離れ、体を直角に折った。
「え……」
「失礼します!!シア、また明日な!!」
「ん」
俺はそのまま振り返らずにシアに別れの挨拶を告げ、寮に戻った。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
いつものように迎えてくれる霞さんの笑顔が俺の恐怖を少しだけ和らげてくれた。
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