第230話 海外怖い!!(第三者視点)

「とりあえず、私についてくるデスよ。私が居れば海外でもなんとかなるデスよ」


 ノエルは白い神官服に換装して後ろにいる陽菜たちを励ます。


 実際ノエルには他国を動かせるだけの力がある。なんらかの協力を対価に要求されるかもしれないが、それでも協力さえすれば、相手にこっちの要望を叶えてもらうことが出来る。


 それに、一度引き受けた陽菜たちを探して無事に返すという約束はノエルの中で最後まできちんと果たすものという認識になっていた。


 これもノエルがアニメに触れていたことが大きい。正義の味方は誰かとした約束を破ったりしないという情報が蓄積されているのだ。


「わ、分かりました。皆もいいかな?」

「俺達は構わないぞ。どうせこの姉ちゃん?に頼る以外に俺達が日本に帰ることができる道はほとんどないだろうし」

「そうだよなぁ。俺たち中学生だし、こんな所から俺達だけじゃ帰れるわけない」

「うん、私も賛成。私達だけじゃ、多分ヤバい。パスポートとかもないし、騙されてどこかでのたれ死ぬだけだと思う」


 四人の中学生たちは、ノエルに付いていくことで意見は一致していた。


 素行の悪いパーティだったら、ノエルの提案を蹴ってしまうかもしれないが、そんなことをすれば、パスポートも持たない怪しい探索者なんて一発でジ・エンド。


 そこで人生終了である。


「大丈夫!!私はそれなりに有名な探索者デスからね!!兎に角このダンジョンの最寄りのハンターズギルドに行くデスよ」

『了解』


 ノエルはパーティを連れて探索者組合に当たる施設に足を踏み入れた。


「こんにちは~ですよ」

「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか」

「聖女が来た。そう伝えてくれればいいですよ~」

「わ、分かりました!!」


 ノエルは近づいてきた職員に探索者カードを提示しながら一言だけ伝えただけで、職員は慌てて奥に引っ込んだ。


「あなたが聖女様ですか?」

「そうですよ~?あなたは?」


 奥から出て着たのはしっかりとしたスーツに身を包んだアラブ系の中年の男性。すらりとした体格でなんらかの武術を収めているのか、背筋がピンと伸びている。


「おっと失礼しました。私はこの支所の長をしておりますアースィムと申します。宜しくお願いします。応接室にご案内しますのでついてきていただけますか?」

「分かったですよ。後ろのパーティも私の連れだから一緒に行ってもいいです?」

「分かりました。ご一緒に付いてきてください」

「ありがとですよ~」


 アースィムは自己紹介すると、ノエルを応接室に案内しようとするので、ノエルは後ろを視線で指して尋ねた。


 その視線を受けたアースィムは後ろの明らかにアジア系の探索者パーティを見て、ある程度事情を察したため、ノエルと一緒に来ることを許可した。


「皆ついてくるデスよ」

『了解』


 中学生たちはそのほとんどを理解できていない。なぜなら二人が流暢な英語で会話していたからだ。小学生のころから英語を習っているとはいえ、ネイティブや訛った英語はとても聞き取りにくいのである。


「それで、本日のご用件は何でしょうか?」

「まずはこの子たちのパスポートと、私の分も含む日本への飛行機のチケットを手配し、日本に帰るまでの生活の面倒を見て欲しいですよ。対価はダンジョン失踪事件に関しての情報提供って所でどうですか?」


 ノエルは自分たちの要望と出せる対価を述べる。


 ノエルとしては出来るだけ動かずに報酬を引き出したかった。だから自分が失踪事件を調べて得た情報を開示することで願いを叶えてもらえないかと、淡い期待を込めて提示してみる。


「ふむ。なるほど。そういうことですか。分かりました。ただ、対価が少々少なすぎますね。あなたたちが現れたことで大よその検討は付きます」

「ふぅ~。やっぱりだめですか~。それじゃあ、私が出来る範囲で困っていることを解決するですよ」


 しかし支所長にノエルの思惑が通じることは無く却下されてしまう。ノエルとしては本当に運よく通らないかなぁという気持ちだったのですぐに気持ちを切り替えた。


「それならまぁいいでしょう。重傷の怪我人の治療と可能であれば食料事情も少し改善も行ってもらえると助かります」

「怪我人の治療は問題ないですが、食糧事情の方は限界があるですよ?それと必要なものを用意してもらう必要があるです」


 支所長はノエルに条件を提示し、ノエルも自分のできない事は出来ないと言ってお互いに条件をすり合わせた。


「それは仕方ありません。食料事情に関しては少しでも良くなればこちらも楽になるので」

「分かったですよ。それで頼むですよ」

「分かりました。宜しくお願いします」


 お互い妥協しつつ、落とし所が決まったので手を差し出し合って握手で合意した。


「それでは手配してきますので少々お待ちください」


 四人の名前や住所などを確認し、顔写真を撮った支所長は手続きのために部屋を出ていった。


「皆の分のパスポートと飛行機のチケット、それから私が対価を支払うまでの間の生活の面倒まで見てもらえることになったので安心するデスよ。ただ、私は少しやらないといけないことが出来たので、皆の拠点が決まったらしばらく別行動デスよ」

「はぁ~、ありがとうございます」

『ありがとうございます!!』


 支所長が出ていった後、保護したパーティに事情を事情を説明するノエル。陽菜を含むパーティメンバーはノエルに頭を下げた。


「気にしないでいいデスよ。陽葵との約束デスからね。皆は拠点から出ないようにしてくださいデスよ。出たら騙されて身ぐるみ剥がされてポイデスよ。次は守ってあげられないデスからね」

『わ、分かりました!!』

 

 パーティの行動に首を振った後、にこやかに笑いながら怖いことをいうノエル、にパーティはガクガクと首を縦に振るのであった。


 全員の気持ちは固まっていた。


 海外怖い!!


 と。

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