第185話 侵攻作戦(第三者視点)

 とあるダンジョン内に異形の者達が突然瞬間移動でもしてきたように姿を現した。彼らは魔界からの侵略者。魔界の中層民、下層民、最下層民からなる侵略部隊であった。


「もしもし、聞こえますか?聞こえますか?」


 姿を現すなり、一団の中でも強い力もつ中層民の一人の異形の者が、腕につけたグロテスクな時計のような物体に向かって話しかける。


―ピピー、ガガーガー


 しかし、異音が聞こえるばかりで何の反応もない。


 その時計は通信機になっていて、魔界にある端末のオペレーターと会話できるのだが、ダンジョンシステムのオーバーヒートによって使い物にならなくなってしまったのである。


「駄目みたいだ」

「仕方あるまい」

「そうだな、私達だけやればよかろう」

「そうだな」


 本来であれば通信機から時折指示を仰いで計画進めていく腹積もりであったが、連絡が取れない以上、自分たちの判断で作戦を実行していくことにした。


「ふむ、それにしても、ここは異世界にあるダンジョンで間違いないようだな」

「ああ、突然端末から異音が聞こえてきた時はどうなることかと思ったが、どうやら杞憂だったらしいな」


 中層民たちは辺りを見回し、魔力の流れなども確認して、異世界のダンジョン内である事を理解する。


 異世界と魔界の狭間で彷徨う可能性もあったので、彼らはきちんと到達できたことに安堵の表情を浮かべた。


「異世界のダンジョンにさえ来れたなら問題ないだろう。サトツという奴に魔王様は過敏になっていたが、俺達なら何も問題ないさ」

「そうだな。ついでにさっさとそのサトツとかいう奴を倒せば魔王様からの覚えもめでたかろう」


 ダンジョンにつけた安心感から気が大きくなり、普人のことを過小評価する別の二人の中層民。彼らは当時の様子を直に見ていないのでその時の異常さが分かっていなかった。


「その通りだな。このダンジョン内にモンスターを掌握して、最下層民と共に外にいる人間どもを襲わせれば、人間達も一たまりもあるまい」

「うむ。もしそれで手に負えない輩がいれば私たちが手を下せば問題あるまい」

「ひとまずその方向でいくとしようか」

『了解』


 他の二人も同調し、ある程度の方針が決まったところで外への侵攻準備を進める。


「下層民は最下層民を率いてダンジョン内のモンスターを外に出るように仕向けろ。もし手におえない奴がいたら連絡をよこせ」

「はっ」


 下層民の一人が返事をして事前の打ち合わせ通りにいくつかのグループに分かれ、それを数名の下層民で率いてダンジョン内へと散らばっていった。


「よし、俺達も行くか」

「ああ」

「了解」

「行こう」


 一団を率いるトップの中層民たちが地上に向かって走り出した。


 ものの数十分でダンジョンの一階へと到達した彼ら。一階層にはDランクモンスター達がぎゅうぎゅうに詰め込まれた満員電車のごとく、埋め尽くされていた。


「どうやら下層民たちをけしかけることもなく、スタンピードが起こっていたらしいな」

「これは好都合だ。外で大きな被害は出していないとしても、このレベルのモンスターのスタンピードが起これば、弱い人間達は疲弊するだろう。そこに下層民達が出向けば、いとも簡単に服従させることができるに違いない」

「うむ。ここにいるモンスターと下層民達が全て出た後で私たちも外に出ることにしよう」

「そうだな」


 一階の様子を見るなり、予定を変更し、モンスター達と下層民達に先鋒を任せ、中層民たちはしばらく無視を決めこむにした。


「そういえば、ここはどのあたりのダンジョンなのだろうな?」

「確か前回飛ばしたダンジョンから離れた場所のダンジョンと言っていたから、世界の反対側とか言われてもおかしくないんじゃないか?」

「確かにな。それなら流石のサトツもいないだろうしな」

「ははははっ。そうだな」


 計画が順調そのものだと考えている中層民たちは、たわいのない話を始める。


 しかし、ここはまさかの豊島区の、しかも神ノ宮学園のダンジョンの一つ。残念ながら普人の居るDランクダンジョンではなく、Fランクダンジョンではあるが、間違いなく、前回のダンジョンからそう離れていない場所であることを彼らが知る由もない。


「そろそろか」

「うむ、どうやら後ろも来たようだしちょうどいいだろう」

「おう、そうか。それはタイミングが良かったな」

「ああ。ホントにな」


 一階に残っていたモンスター達のほとんどがダンジョンの外に消えたころ、二階からの階段から大勢の足音が中層民たちの耳に届く。それは自分たちの出撃をまるで祝福してるように思え、この作戦の成功を確信していた。


 中層民のリーダーの掛け声で、下層民達と追加のモンスター達もダンジョンの外に歩き出し、外へと出て行った。


 下層民が全員出てから十分程経ってから中層民も歩き出す。


 ダンジョンの外からは魔界では見ることが出来ない日の光という物のせいで、外が真っ白に輝いているのが彼らには分かった。その光のせいで外の様子が見えない。


 そして、ようやく洞窟型のダンジョンから外に出る。


「おおなんて光に溢れている世界なのか!!」

「この暖かな光は心地いい」

「これこそが我らが求めた新しい世界」

「うむ。ここから私たちの世界が築かれていくとなると、楽しみだ」


 外の素晴らしい光景に見惚れる中層民たち。


 ただし、彼らは気づかなかった。すでに下層民と最下層民が誰一人いないことを。そして、四人の前に一人の男が待ち構えていたことを。



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