第161話 誰が聞いても信じるにたる理由
「おお!!」
「どうかしたの?大丈夫かしら?」
俺が脳内に響き渡る声に感動していると、自分に何かあったのかと心配した零が俺に声を掛けてきた。
「いや、大丈夫だ!!むしろ楽になるかもしれない!!」
「え?ホントに?」
「ああ、ちょっと待っててくれ!!」
「了解!!」
俺は精神を集中して新しく分かるようになった感覚に身を任せる。
「ふぅ~」
"気功"と言えば、体に纏わせて戦うものって相場が決まっている。俺はパンチを繰り出しながら、身の内に流れる血流とは別の力を自分の体に纏わせるように動かす。
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が一割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が二割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が三割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が四割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が五割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が六割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が七割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が八割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
『"気功"の熟練度が一定に達しました。"気功"が九割向上します』
―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ
その作業をしながらひたすらに殴る。気功の熟練度が加速度的に上昇し、その過程で俺が消し飛ばす敵の数もどんどん増えていく。
「信じられない……」
零が何か言っているけど、俺は集中していて頭の中に入ってこない。
『"気功"の熟練度が限界に達しました。"思考"が"新・気功"へと進化しました』
そして遂に至った。
「はぁああああああああああ!!」
俺は気を拳に集め、思いきり振りぬく。
―ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザァアアアアアアアンッ
俺のパンチが海を割った。
「え!?」
「あ!?」
「は!?」
「ほ!?」
周りから変な声が聞こえたけど、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
目の前のモンスターが全て吹き飛び、真っ二つの谷のように数百メートルの範囲で数キロ先まで割れた。
気功やべぇ……。
「お兄ちゃんすっごーい!!今のなに?」
呆然としていた俺のとびかかってくる七海。俺はそれを受け止めてクルクルと回転して地面に下す。
俺は自分のステータスの事を語ることが出来ないので何も言えない。
「いや、俺にも分からない。力が沸いてきてパンチを打ったらこうなったんだ」
「ふーん。でもホントに何とかしちゃった!!さっすがお兄ちゃんだね!!」
七海はまるで自分の事のように胸を張る。
「はははは。運が良かったんだよ。たまたまだ」
俺はこの土壇場で気功が分かるようになった幸運に感謝した。これもパンチ、もとい殴打を続けたおかげだな!!
「あはははは……何あれ」
「あはははは……もう知らないわ」
天音と零は同じところで乾いた笑みを浮かべている。
「それでお兄ちゃん。後は様子見って感じ?」
「いや、まずはアレの対処が多分必要になる」
俺は割れた海を指した。
対処しないと、アレが元に戻った時に周りに被害が出る可能性がある。
「七海、魔力回復ポーション飲めばなんとかなりそうか?」
「うーん。どうだろう。でも、多分大丈夫だと思うよ!!」
「そうか、それじゃあ、頼むな!!」
「うん、任せて!!」
俺は七海に魔力回復ポーションを渡し、七海はそれを飲みほした。
「え、いやいや正気?七海ちゃんでも無理かもしれないわよ?」
「そ、そうよ!!危ないわよ!!」
七海がやる気満々で、海の方に向かっていくのを見て、零と天音が俺に詰め寄って抗議してくる。
「まぁまぁ落ち着け二人とも。大丈夫だ」
「なんでよ?」
二人を宥める俺に、天音が訝し気な視線で尋ねた。
「それは七海が大丈夫だと言ったからだ」
「「……」」
俺が満面の笑みで完璧な理由を述べると、二人はあまりに完璧な回答ゆえに二人は黙ってしまった。
―ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
地鳴りのような音と共に海がもとに元どっていく。
「えぇええええええええい!!」
七海は杖を前に突き出し、魔力を込める。
すると、海が戻る際に発生したエネルギーを七海がうまく調整し、以前の穏やかな状態にへと戻った。
「ほらな?大丈夫だっただろ?」
七海の言うことに間違いはないんだからな。
「この兄妹ホントになんなの……」
「本当に何ともなかったわね……」
俺が二人に声を掛けると、二人は再び呆然として立ち尽くした。
当たり前のことなのにどうしたんだろうな?
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