第149話 息抜きと積み重なった脅威

「今日も沢山倒したな」

「うん!!レベルが一杯上がった!!」

「そうか良かったな」


 俺達は今日も朱島ダンジョンでレベル上げを行い、一日中モンスターを狩りまくった。七海は嬉しそうに俺に報告してくるので、俺はツインテールがピコピコ揺れる頭を撫でてやる。


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 ■名前

  佐藤普人

 ■熟練度

 ・神・鼓動(99999/99999)

 ・神・代謝(99999/99999)

 ・神・思考(99999/99999)

 ・神・呼吸(99999/99999)

 ・神・五感(99999/99999)

 ・神・直感(99999/99999)

 ・新・殴打(1895/9999)

 ・新・蹴撃(36/9999)

 ・神・防御(9999/9999)

 ・真・愛撫(2258/9999)

 ・新・隠形(3592/9999)

 ・新・会話(23/9999)

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 緊急事態になってから俺達は毎日ひたすらにレベル上げを行い、近隣のダンジョンがスタンピードを起こした際に備えていた。そのおかげで俺は熟練度がかなり上がっている。殴打と蹴撃が進化し、話す人数と量が増えたせいか、会話も一気に進化まで駆け上った。


 この辺りは現在、この前森林ダンジョンがスタンピードを起こした以外は、今の所スタンピードは起こっていない。ただ、どうやら森林ダンジョンでもダンジョンリバースが起こり、現在調査行われているようだ。


 森林ダンジョンは遠いので、朱島ダンジョンに潜っている今は特に用もないからどうでもいいんだけど。 


「おーい、帰らないのか?」

「あ、いや、帰るわよ」

「うん、そうね、私も帰るわ」


 なんだか二人で遠くを見ながら話し込んでいる天音と零に声を掛けると、二人はしどろもどろになりながら公園からそそくさと家に帰っていった。


「シア、七海はどんな感じだ?」

「ん。朱島でも一人で戦える」

「やったぁああああ!!」


 俺達も帰路を歩き出し、雑談を始める。


 なるほど。つまり七海もDランクモンスター複数と渡り合えるだけの力を得たということか。


 最近やっと自分がCランクを倒せる程度の力を手に入れたというのに、あっという間に追いつかれそうで怖い。


 熟練度上げを頑張ってギリギリまで兄貴の威厳を保ちたいところだ。


「どうする?今ならCランクのダンジョンに潜れるけど」

「ここの方が効率良い」

「そ、そっか。それならここでのレベル上げを継続だな」

「ん」


 今は緊急事態と言うこともあってランクによる入場制限がないので、どこのダンジョンにも潜ることが出来る。


 だからCランク以上のダンジョンに潜る事を提案したんだけど、シアによると朱島のDランクのボーナスモンスターの方が効率がいいらしい。


 レベルが無い俺では分からないので、シアがそういうのならそうなんだろうと納得することにした。


「うーん、でもここも少し飽きてきたなぁ」


 朱島でのレベル上げの継続が決まると、七海がぼやくように呟いた。


「まぁその気持ちは分からなくもないな」

「ん」


 俺とシアは七海の言葉に同意する。


 かれこれ二週間くらいここに潜ってレベルをあげているので、同じモンスターばかりで飽きてくる。


 もっと深い階層に行くという方法もあるけど、深い階層に潜って未知の凶悪なモンスターと出会ってしまうのも怖い。


 そのため、低階層で戦い、モンスターも変わり映えしないので、マンネリ化してきていた。


 スタンピードも今のところ起こっていないしな。確かにそろそろ頃合いかもしれない。


「それじゃあ、数日レベル上げを休みにして何処かに気分転換に出かけないか」

「あっ。それいいね!!ここ最近レベル上げばかりだったし」

「ん」


 しかし、どこに行くか。


 俺はESJのVIP会員カードがあるのを思い出した。確かこっちのほうにもESJ関連会社のスパリゾートがあったはずだ。


「そういえば、確かESJ関連のスパリゾートがこっちにもあったよな?」

「確かに。あったかも」

「それじゃあ、しばらくそこでゆっくりするのはどうだろうか?」

「賛成!!私もそろそろエステとか受けてみたい!!」

「ん。楽しみ」


 俺の提案に七海もシアも嬉しそうに頷く。


 二人とも賛成のようだ。


「それじゃあ、決まりだな。天音と零にもカードを上げたら喜ぶかな」

「絶対喜ぶよ!!全くたらしだよね、お兄ちゃんって!!」


 俺が二人にカードを渡そうとすると、七海が斜め上の事をいってプリプリと怒り出す。


「いや、別にそんなつもりじゃ……」

「お兄ちゃんにそんなつもりがなくてもそうなの!!しかもそんな物誰も手に入れられないんだからね!!そんなものを女の子が貰ったら一瞬でメロメロになっちゃうよ!!」


 七海の怒りに困惑する俺だったんだけど、七海に言われてみると、確かにあのVIPカードはたった六枚しかなくて、残り三枚。しかもそのカードがあればESJ関連施設が全て無料で使えるような代物となれば、確かに貰った側は恐縮するか、滅茶苦茶喜ぶんじゃないかな。


 ESJに出てくる作品が好きなら尚更だと思う。


「あげる人もいないしな。せっかくパーティメンバーになったんだから、ちょうどいいと思っただけなんだけどな」

「たったそれだけのことで、あんなにレアで物凄いカードを誰かにあげるなんて普通出来ないからね!!」


 俺としてはアイツら以外にあげるのにちょうどいい人物が思い当たらないだけ。


 しかし、七海に言わせると、そんなことが出来る人間は多くないらしい。


 使い道の無い物をいつまで取っておいても仕方ないと思うけどなぁ。


「そ、そういうもんか……」

「全くそうやってお兄ちゃんは新しい女を増やしていくんだから。もうこれ以上は止めてよね」


 隣を歩く七海はそっぽを向いてプリプリしながら呆れるように呟く。


「いやいや、全員そういう関係じゃないよな?」


 そこは流石に反論させてもらうぞ。


 シアとはひょんなことからキスをしてしまったけど、あれは事故みたいなものだ。でもあれ以来シアを意識してしまってる自分がいるのは仕方がないことだと思う。


 そんなイベント今まで一度も起きたことないし、ましてやとんでもない美少女とのキスときたら意識せざるを得ないでしょ。


 シアは全然気にして無さそうだけど。タイミングを逃してあれ以来言葉の意味も聞けてない。


「お母さんも言ってたじゃん。同じパーティに居ると大体そうなるって」

「なるかなぁ」


 七海はそういうけど、俺にはイマイチそうなっている未来が見えない。


「なるよ、私が保証する」

「保証されても困るんだけど……」


 七海に保証されても困惑しかない。


「とりあえず、しばらく休みにしてスパリゾートでのんびりする。これでいいか?」

「うん、そうしようよ!!」

「ん!!」


 俺は話を打ち切ってまとめ、七海とシアが俺に同意するように首を縦に振った。



◼️◼️◼️◼️◼️



 真っ暗闇の世界。


 空気もなく、普通の人間がそこにいれば圧死しているであろう深海。


 本来光のないその世界に、夥しいほどの赤い二つの光がひしめき合っていた。


 それはまるで爆発寸前の爆弾のようにさえ見える。


『グギャア』


 一つの声がきっかけとなり、その爆弾は指向性を持って動き始めた。


 

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