第150話 常識人達の会話(第三者視点)
朱島ダンジョンの探索後。どこか遠くを眺めながら二人の人物が会話をしていた。
片方はチャイナドレスのような舞闘着を身に纏う女性で、もう一方は二次元作品のくノ一が着ていそうな、ミニスカの忍装束に袖を通している女性。
二人はとあるパーティに属しているメンバーだ。
「なんかこのパーティに居ると自分の価値観がおかしくなるね?」
そうぼやくのは霜月天音。彼女はここ数週間のレベル上げで普人たちの実力を嫌と言うほど味わった人物。
Bランクの探索者である自分が、まさかこのパーティの中で一番弱いとは彼女自身思っていなかった。
自分より弱いと思っていた探索者になったばかりの七海は、魔法の申し子みたいな人間で、火力が強すぎて自分ではその殲滅力に勝てそうにない上に、彼女の装備品が自分でも手が届かないような超高性能武具で固められていて、とんでもない強さを発揮していたのだ。
「それどこで手に入れたの?」と天音が武具の入手先を七海に尋ねると、「お兄ちゃんがDランクダンジョンって言ってた!!」と答えられて、天音は内心「そんなわけあるか!!」と叫んだのを思い出していた。
「そうね。私Sランクになってからこんな短期間にこれだけのレベルが上がったことなんてないわよ?」
そしてもう一人は黒崎零。彼女も自分がSランク探索者という肩書と隠密能力、それに珍しい精神系能力を併せ持っていることで、自分がそれなりの実力を有していると思っていたが、このパーティの中では、自分なんて井の中の蛙だったのだと思い知らされた。
自分よりも早く敵に気付く普人とアレクシア。敵から身を隠す力でも普人の影に劣り、火力も先程の天音同様に他の三人に勝つことが出来なくて、Sランクであるというプライドがぽっきり折れてしまった。
しかし、ここにいることで自分のレベルがガンガン上がっていることも事実で、なんとも言えない気持ちになっている。
「私もそうよ。レベルだけで言えば、もうすでにSランクに足を突っ込んでるし」
天音も最初こそ弱かったものの、朱島ダンジョンでのレベルアップで、すでにSランクの力を身に着け、朱島ダンジョンで一人で活動することさえ可能になった。
それに、朱島ダンジョンの更なるダンジョンリバースにより、天音にぴったりな装備品が出てからは、さらに飛躍的に戦闘力が向上した。
それは零も同様で、このダンジョンで今までよりもずっと性能の良いくノ一装備を手に入れていた。
「私達とんでもないパーティに参加しちゃったわね……」
「ホントにね……」
二人はお互いにしみじみと呟く。
まさか自分が参加したパーティがこんな規格外だとは誰が予想できただろうか。いや出来る人間はいないだろう。
「それもこれもあの子達の、特に普人君のおかげだけど」
「そうね。初めて見た時はこの子の探索者としての未来は暗いと思ったけど、その予想は見事に外れたわ」
「私も最初はこいつ本当に強いの?って思っていたのに、蓋を開けたらこれだものね」
二人は七海とアレクシアと話す普人の事をボーっと見つめる。
二人の脳裏には昨日のパジャマパーティでの一幕が思い起こされる。
それは普人に対する気持ち。
七海に言われなければ、意識するのはもっともっと気持ちが大きくなってからのはずだった。しかし、七海に強制的白状させられたことで自分の気持ちが明確になり、少し意識してしまうのは花も恥じらう乙女であれば仕方のない事だろう。
逆に恋心を自覚しても尚、以前と全く変わらずに普人と接しているアレクシアが異常であった。
「おーい、帰らないのか?」
そんな二人に普人から声が掛けられる。
「あ、いや、帰るわよ」
「うん、そうね、私も帰るわ」
二人の脳内がピンク色になっていたため、反応がしどろもどろになってしまったが、彼女達は帰路へ着いた。
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