第148話 おや、女子たちの様子が……?

 俺は風呂から上がると自室に向かって頭を拭きながら歩いていく。


 すると、進行方向左側にある部屋からゾロゾロと女性陣が外に出てきた。


「お、七海の部屋で遊んでたのか?」

「う、うん、まぁね」

「え、ええ、ちょっとね」

「ん」


 俺の問いかけになんだか歯切れの悪い二人といつもと変わらないシア。


「あ、お兄ちゃん!!」

「七海、どうかしたのか?」


 そこに七海が部屋の中から顔を出したので、なんだか微妙な雰囲気になっている天音と零のことを尋ねてみる。


 七海はなら何か知っているかもしれない。


「どうもしないよ、ねぇ~?」

「うん、どうもしないよ、はははっ」

「そうそう。とても楽しかったわ。ふふふっ」


 七海に二人に確認するように尋ねると、二人はとてもにこやかな笑顔で答える。


 二人とも七海と仲良くしてくれてるみたいだ。ありがたいな。


「そうか。七海と遊んでくれてありがとな」

「ううん、全然いいよ!!」

「ええ、そうね、私達も楽しかったし」


 俺がその感謝を述べると、天音と零はお互いに顔を見合わせながら笑顔で答えてくれた。


 二人ともなんだか最初より仲が良くなっているみたいで何よりだ。


「皆はどうするんだ?もう寝るのか?」

「あ、お兄ちゃん。今度は五人でゲームやろうよ。皆揃ってやってないし」

「それもいいかもな。あんまり遅くなるのは駄目だけど、そうするか」


 俺が皆に尋ねると七海が代表して答える。


 確かにさっきまではいつも誰か一人が抜けている状態だった。今は全員揃っているので、それでやったらまた違った楽しみがあるかもしれない。


 それならやってみるのも悪くない。


「うん!!」

「皆もそれでいいか?」


 七海が嬉しそうに返事をするので皆に確認をとる。


「ん」

「私もいいよぉ」

「私はえっと、その……」


 シアと天音はすぐに答えたんだけど、零がちょっと歯切れが悪い。


 おそらく性格が変わった自分をさらけ出してしまって恥ずかしい気持ちと、滅茶苦茶やりたいという気持ちがせめぎ合っているんだと思う。


「やりたいんだな」

「えっと……まぁ……はい」


 俺が零の気持ちを肯定してやると、恥ずかしそうに顔を赤らめて口元を手で隠して返事をした。


 いつもはクールな零だけど、その表情と仕草は普通の女の子みたいで可愛らしい。


「零は綺麗で大人なのに可愛い所もあるな」

「~~!?そ、そうかしら?」


 ついつい俺が思ったことを呟くと、零が赤い顔のそっぽを向いてしまった。


「あ、悪い。気を悪くしたなら謝る」

「い、いいえ、気にしてないわ。早くゲームしましょ」


 俺は零を怒らせてしまったと思い、頭を下げると、零は顔を背けたままリビングへと早歩きで去っていった。


 物凄く怒らせてしまったのかもしれない。


「そうだよ、イチャイチャ禁止なんだからね!!」

「いや、だからしてないよな」


 七海が俺にビシッと人差し指を突きつけてきたんだけど、俺には訳が分からず否定した。


 だって、怒らせただけじゃん。イチャイチャなんてこれっぽっちもしてないのに。


「はいはい、そんなことは良いからゲームしに行きましょうよ!!」

「あ、ああ、そうだな」


 天音に背中を押されて俺達もリビングに向かう。


 そこにはすでにゲームの準備を整えていた零がいた。


「さぁさぁ!!早くやりましょうよ!!全員私の前に平伏すがいいわ!!」


 既に性格が変わっていた。俺達は今度は五人全員で別のパーティ系ゲームをして遊んだ。零は白熱して性格が変わっていたけど、概ねみんなで楽しむことが出来たと思う。


「えへへ、お兄ちゃん~」

「もう、七海は本当に仕方ない妹だな」


 ウチは結構広いとは言え、家族以外に三人分の個室はないので、俺と七海が一緒に寝て、七海の部屋で二人、客室で一人が寝ることになった。


 案の定七海は俺に抱き着いて甘えてきたので俺はヨシヨシと撫でた。すでに制御できるようになっているのでおかしなことになる事はない。


「今日はどうだった?」

「うん、魔法使えて楽しかったよ」


 七海に今日のダンジョンでのレベル上げのことを訪ねると、楽しそうな声色で答えた。


 七海の探索は野良ダンジョン以来だったし、初めて自分で能動的に魔法を使って敵を倒していたので、心配していたんだけど、どうやら杞憂で済んだようだ。


「そっか。明日からも頑張っていこうな?」

「うん、分かった。よろしくね、お兄ちゃん」

「任せておけ」


 俺たちは軽く話を済ませると、そのまま徐々に意識を落としていった。


「それじゃあ、今日も今日とてレベル上げに行きますか」

「ん」

「はーい」

「りょーかーい」

「いきましょう」


 次の日もまた俺達は朱島ダンジョンでレベル上げに勤しむのであった。

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