第147話 格付け(第三者視点)
「はい!!今日集まって貰ったのは他でもありません!!お兄ちゃんのことです!!」
ここはとある家の一室。そこには四人の美少女達が集まっていた。
まず初めに話し始めた佐藤七海。この家に住む佐藤瞳の娘で、佐藤普人の妹。
次に葛城アレクシア。佐藤普人のクラスメイトにして、最初のパーティメンバー。普人のヒモ。付け加えればお互いのファーストキスを捧げた相手。
三人目は霜月天音。学校が始まってしばらくしてダンジョン探索部に合流した一つ年上の同級生。普人のパーティメンバーに志願してアレクシアに加入を認められた人物。
そして最後に黒崎零。普人の探索者登録を行った元組合職員にしてSランク探索者。普人と七海を気にしてパーティの引率として志願し、パーティメンバーとなった人物。
以上の四名がとある家の一室。もとい佐藤七海の新しい部屋に集まっていた。全員がお風呂上がりでパジャマに着替えている。全員拡張バッグ持ちでそれくらいの物は常に持ち歩いている。
「普人君の事ってなに?」
「はい、あーちゃん、いい質問です」
「あーちゃん!?」
天音は初対面の七海によく分からない愛称で呼ばれて困惑する。
「四人にはお兄ちゃんに対する気持ちを洗いざらい吐いてもらいます!!」
「ん」
「はぁ!?」
「え!?」
しかし、困惑を無視して続けれられた言葉は、少なくとも天音と零の二人には驚きを齎すには十分な力を持っていた。
「なんで七海ちゃんにそんなこと話さなきゃいけないのよ!!」
「そうよそうよ!!」
天音と零の二人は七海の宣言に噛みつく。
「それは私がお兄ちゃんの妹だからです!!お兄ちゃんが付き合うべき相手は私が決めます!!ちなみに私がお兄ちゃんにパーティから外すように言えば、お兄ちゃんは必ずその人を外してしまうので、逆らうと自分のためになりませんよ?」
その二人に七海は平然と脅しをかけて二人を黙らせようとする。
「えぇ~!!なにそれひっどーい」
「横暴よ!!」
「横暴もへったくれもありません!!本音で話してください。今はそれさえすればお兄ちゃんにそんなこと言ったりしませんよ。安心してください。お兄ちゃんには皆の気持ちを言ったりしないので」
脅しに反発してブーイングをする二人だが、七海は聞く耳を持たない。
「はぁ……仕方ないか」
「あきらめましょう。勝ち目がないわ」
二人は諦めて本音を語ることにした。
「それでは一番付き合いの長いシアお姉ちゃんから」
「ん。とても感謝してる。命を助けてくれたのも、私を強くしてくれたのもふー君。でも、他の人と一緒にいるのを見るとここがザワザワする」
アレクシアは思った事を胸の辺りを押さえながら率直に伝える。そこには虚飾など一切なく、素直な気持ちが現れていた。
七海は予想していたが、他の二人は驚愕の表情を浮かべている。
「はい、お姉ちゃん長文ありがとうございます。ちなみに他の人というのは、女性限定ですか?」
「ん、そうかも」
七海の質問に、同意するアレクシア。
思えば佐倉孝明と一緒にいる普人を見ても全然胸がざわつかない。しかし、天音や零が傍に居るのを見ると胸の辺りがキュッと締め付けられ、ゾワゾワする感覚があったの思い出していた。
「なるほどなるほど!!お姉ちゃん、それお兄ちゃんに恋しちゃってますよ!!」
「そうなの?」
七海に恋という言葉を提示されてもアレクシアにはイマイチ実感がない。
「まさかここまで自覚がないなんて思わなかった。そうです、お姉ちゃんはお兄ちゃんに恋しちゃってます」
「そうだったんだ」
「そうですよ?」
「これが恋。初めて知った」
アレクシアはこの気持ちが恋だという指摘を受けて、今この時初めてその気持ちを自覚した。
「これでシアお姉ちゃんはお兄ちゃんラブなことが分かりました。次はあーちゃんお願いします」
シアの気持ちを理解できたところで、七海は天音にターゲットを変える。
「え?わ、わたし?」
「そうです。早くお願いします」
分かってはいたものの、いざ自分に話を振られると、天音は少し緊張してしまう。
「私は別に何とも思ってないわよ……。私の胸ばかり見てこないからその点は好感が持てるけど」
七海に促され、そっぽを向いて話す天音。七海にはそこには他の感情が隠されいているように見えた。
「本当ですか?」
「うっ」
七海が聞き返すと、天音は言葉に詰まる。
それはその言葉がすべてじゃないと物語っているようなものだ。
「もう一度聞きます。本当ですか?」
「うっ。実は虫モンスターのスタンピードから身を挺して守ってくれた時から、カッコいいなって思ってました!!」
再び聞き返された天音は思わず白状してしまった。
「ふむ。正直でよろしい!!」
「ううっ。恥ずかしい……」
その言葉を聞けた七海は満足そうに頷くと、天音は目の前にあるテーブルに突っ伏して真っ赤になった顔を隠した。
「それでは最後に零さん。あなたはお兄ちゃんのことをどう思いますか?」
「私はほら、皆みたいに接点があまりないから……特に思うところはないっていうか」
最後に話の船を向けられた零も、天音と同様に目を逸らし、髪の毛を弄びながら答える。
そこには動揺が現れていた。
「ふーん。本当に?」
「ええ、まぁ」
七海に尋ねられると、取り繕いつつ短く返事をする零。
「お兄ちゃんに言っちゃおっかなぁ」
「ああ!!待って!!白状する!!白状するから!!」
「はい。それではどうぞ」
七海はそこに嘘の香りを感じ、脅迫を匂わすと、零はあっさりと降参してしまった。
「守秘義務があるからホントは言えないんだけど、以前私は普人君の調査を依頼されたの」
「へぇ。それで?」
七海は初めて聞く話に内心驚きながらも、それを出さないようにしながら零の話を促す。
「調査はしたんだけど、私の力が一切通じなかった。Sランクのこの私の。だからそんな彼に興味を持った」
「ふむふむ」
零は自分があまりに衝撃を受けた時の話をする。零はこんな人間もいるんだと素直に称賛した。
「それで、前に組合に来た時も礼儀正しかったし、いい子だとは思ってたのもあって、この前、彼に綺麗だって言われてちょっとドキッとしたと同時に嬉しいって思っちゃったの。年が離れてるのに恥ずかしいわね」
自分で言っていて照れるように俯く零。
「なるほど。分かりました。ありがとうございます。皆さんちゃんと答えてくれたので、パーティ参加は認めます!!」
『ふぅ~……』
全員の言葉に納得した七海は三人のパーティ継続を認めた。それにより天音と零は安堵のため息を吐いた。
「シアお姉ちゃんは完全に堕ちていて、他の二人は今後シアお姉ちゃんの仲間入りする可能性は十分あるということですね」
「ん」
「は、はい」
「そ、そうね」
七海に話をまとめられ、シアは何事もなく頷き、他の二人は認めたくないけど、認めざるを得ないと言った表情で頷いた。
「私から見て三人は、容姿的にも、性格的にも、能力的にも、お兄ちゃんの隣にいる資格があると思っています。私としても三人なら誰でもお兄ちゃんを任せても良いです。ただ、お兄ちゃんには私がいることを忘れないでくださいね?」
「ん」
「わかったよ」
「分かったわ」
七海がニッコリ笑ってそういうと、三人は神妙に頷いた。
普人ハーレムの格付けがなされた瞬間であった。
■■■■■
「ハーックション!!な、なんだ?誰か俺の噂でもしてるのか?」
一方その頃、普人はお風呂でくしゃみをしていた。
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