第082話 一つ屋根の下に美少女がいる生活②
「お兄ちゃんはここね!!」
「分かった分かった」
俺が居間に戻ると、自分の隣の椅子をポンポンと手でたたいて示すので俺がその椅子に腰を下ろす。七海は俺が座るなり、俺の椅子に自分の椅子をくっつけるように移動して来て、俺の横に陣取った。
「流石に食いずらいぞ?」
「別にいいじゃん」
「はぁ……困った妹だ」
俺が苦笑しながら七海を注意したけど、意に介そうとしない。
シアが来てから俺にまとわりついてきている七海。ちゃんと納得してもらったはずなんだけど、それでもシアに俺がとられると思って警戒してるらしい。
そんなことあるわけないのにな。
「相変わらず
「もっちろーん!!」
母さんが七海に向かって呆れ気味言うんだけど、七海は嬉しそうに俺に腕を絡ませた。
「七海、そういうことを学校の男友達とかにしてないだろうな?」
「えぇ~!?そんなのするわけないじゃん。お兄ちゃんだけだよ」
「ならいいんだ」
俺はちょっと心配になったので確認すると、滅茶苦茶嫌そうな顔をして答えた。
それはもう大嫌いな虫を見るような苦虫を嚙み潰したような顔だ。
そんなに嫌そうな表情をするなら本当にしてないんだろうな。もししていたら相手をこの世から抹殺しないといけない所だった。ふぅ……危ない危ない。
「おはよ」
俺達が会話している所にシアがやってくる。
問題なく服を着ていた、今日も今日とて制服を。
俺は一安心の息を吐いた。
「シアちゃんはそこに座ってね」
「ん」
「ガルルルル……」
母さんが空いてる席を示すとシアはそこに腰かける。七海はシアが来るなり自分の縄張りに入ってきた敵に威嚇する狼のように唸り声を上げている。
「せいっ」
失礼な態度をとる七海に探索者としての力を使わずに頭をこつんと叩く。
「いたっ。ひどいよ、お兄ちゃん」
「ひどいのは七海だろ?兄ちゃんの友達にそんな態度とるなよ」
「ふぁーい」
涙目になって俺を見上げる七海に、少し不機嫌そうに言うと、不承不承と言った感じで大人しくなった。
「悪いな、こんな妹で」
「ん。大好きなだけ。気にしない」
「ははははっ。こんなんだけど悪い奴じゃないんだ。仲良くしてやってくれ」
「ん」
シアに俺が謝罪すると、彼女は全然気にしてないと首を振ってくれたので、俺は隣でしょんぼりと大人しくしている七海の肩に手を置いた。
全く……俺とシアがどうこうなることなんてないんだから、もう少し普通に接してくれよな。
「はいはい、あんたたち。冷めないうちに食べなさい。シアちゃんも食べてね」
「はーい」
「わかったよ」
「ん。いただきます」
『いただきます』
母さんが俺達のやり取りに呆れながら、手をパンパンと叩いて食事を促すので、俺達は朝ご飯を食べ始めた。
昨日の夜は店のお持ち帰りメニューだったので、久しぶりの母さんの手料理だ。料理が好きな母さんの料理は相変わらず美味いと同時に、なんだか胸も一杯になった。
「お兄ちゃんゲームしようよ」
「ああいいぞ」
俺達は朝ご飯を食べ終えると、一緒にゲームをすることになった。
「シアも一緒にやろう」
「いいの?」
俺がシアも誘うと、シアは七海に顔を向けた。
なるほど、決定権は俺ではなく、七海にあると言うことか。
「もう、仕方ないな。一緒にやりましょ」
「ありがと、ななみん」
「はぁ!?」
呆れて許可する七海にシアが礼を言うと、七海は不機嫌そうに声を上げた。
「あんた!!馴れ馴れしいんですけど!!」
「ん、ダメだった?」
プリプリと怒りながらシアをビシリと指をさす七海。そんな七海の態度にしょんぼりとするシア。アホ毛も物凄く萎れている。
うぉーい!!シアが落ち込んだら何を言われるか分からないんだぞ!!
七海それ以上は止めるんだ!!
「七海、そのくらいにしてやってくれないか?」
「ぶーぶー」
俺がとりなすように会話に割り込むと、七海が頬を膨らませて ブーたれる。
そのしぐさはとても可愛いんだけど、それどころじゃない。
「またバタどら買ってきてやるから、な?」
「はぁ……分かった。呼び方それでいいよ」
七海を物で釣ってなんとか宥めることに成功した俺。
シアがうちに滞在している間は、俺が二人の間に入ってなんとかとりなしていくしかないんだろうなと諦める。
「ありがと、ななみん」
「~!?」
七海はなぜか顔を赤くした。シアは本当にうれしかったのか、微笑を浮かべていたのだ、彼女にとっては最高に嬉しい時の表情だった。アホ毛も楽し気のぴょんぴょんと飛び跳ねている。
その表情はまるで妖精が舞い降りたかの如く可愛らしく、七海も心を撃ち抜かれてしまったらしい。
「べ、別に勘違いしないでよね!!仕方なく、仕方なくなんだからね?」
「ん」
慌てて腕を組んでそっぽを向く七海だったけど、シアは嬉しそうに眺めていた。俺たちはこの前買ってやったSWOTCHのパーティ系ゲームを皆で遊んだ。
とても白熱するゲームで、途中昼食を食べた後も遊び続け、いつの間にか日が暮れていた。
「あら?料理酒が切れてるわね……」
「母さん、俺が買ってくるよ」
料理好きの母さんが調味料を切らすなんて珍しい。
でも、昨日は全然体を動かしてないので、少し体を動かすために俺が買いに行けばちょうどいい。
「別に車出すわよ?」
「ちょっと体動かしたいからいいよ」
「そう?」
「うん」
自分で行こうとする母さんを止めて俺が家を出る。市街地まで走っていき、一番近いスーパーに行って料理酒を買って帰ってきた。
たまにすれ違う車の中の人に驚かれたりしたけど、この辺りで探索者があまりいないから見たことがなかったんだろうな。
距離的には往復十数キロ程度。軽く走っただけだけど、少し汗をかいたから夕食の前にお風呂に入ろう。
「ただいま。母さん、料理酒ここに置いとくね?」
「おかえり。ええ、ありがとね」
「気にしなくて良いよ」
俺は帰り次第、キッチンにあるテーブルの上に料理酒を置いて自室に戻り着替えなどをもって風呂場に向かう。
そしてその扉を開ける。
「え!?」
そこに居たのは最後の砦を守る桃色の布以外を脱ぎ去り、その桃色の布も今まさに腰から腿の方に引き下ろしている最中のシアだった。
彼女の体は透視で見えたのと同じように均整がとれていて、女性らしいラインが美しく、少しかがんだ状態で大きさを強調するその母性の塊も芸術と言われてもおかしくないくらい綺麗な曲線を描いていた。
ギリギリ髪の毛が大事部分を隠している。
「ん?」
「マジでごめん!!」
俺はすぐに振り返って後ろ手に扉を閉めて謝った。
家の中で気配とか気にしてなかったからマジでびっくりした。
「なんでシアが?」
「ふーくんママにお風呂にはいりなさいって言われた」
俺のつぶやきに答えたのは、引き戸を少しだけ開けて顔を覗かせるシア。
なんでそこで出てくるんだろう?
本来なら中で叫び声を上げたりする所じゃないんだろうか。
露出した肩回りが扉から微妙にはみ出しているのが、妙に艶めかしいのでさっさと戻って欲しい。
「本当に悪かった。この通り」
「ふー君なら気にしない」
「いや、何か埋め合わせするよ。もちろんそれで許されるとは思ってないけど」
俺は顔を出したシアに向かって頭を下げ、その前で両手を合わせて謝ったことに対して、彼女が首を振ったのが気配で分かった。
いや、俺みたいなどうでもいい奴に裸を見られても何とも思わないのかもしれないけど、それとこれとは話が別だ。
独りよがりかもしれないけど、俺が何か罰を受けないと気が済まない。
「だから気にしてない。ダンジョンに行ければそれでいい」
「分かった。妹は説得してゴールデンウィーク中に必ずダンジョンに一緒にいく」
「ん」
ダンジョンに一緒に行くくらいで良いならいくらでも一緒に行く。俺はゴールデンウィーク中にシアを近くのダンジョンに連れて行こうと決めた。
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