第075話 恐怖の日常の幕開け
「ふわぁ……」
今日も良い朝だ。カーテンの隙間から差し込む日の光によって目が覚める。
「zzz……zzz……」
ラックは暢気に腹を晒してだらけきった表情で寝顔を晒していた。
全く……便利な能力がなければ駄犬もいいところだぞ……。
そんなところも可愛いけどな。
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■名前
佐藤普人
■熟練度
・神・鼓動(99999/99999)
・神・代謝(99999/99999)
・神・思考(99999/99999)
・神・呼吸(99999/99999)
・神・五感(85243/99999)
・神・直感(85243/99999)
・殴打(2257/9999)
・蹴撃(1725/9999)
・神・防御(9999/9999)
・愛撫(6085/9999)
・隠形(7692/9999)
・会話(523/9999)
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数日ぶりにステータスを見ると、五感と直感がもうすぐ上限に到達しそうだ。上がり幅を見る限り今日で無意識下のものに関しては全てカンストすると思う。
ただ、能動的な動作の方はやはり無意識下の動作や感覚と比べると中々上がらない。そろそろ能動的な熟練度に関しても本格的に上げていった方がいいだろうか。それに、他の能動的な動作を探してみた方がいいかもしれない。
なぜかネット上に全然情報がないので自身の力でどうにかするしかない。
そういえば、これってまさか……。
今更ながら思い当たることがあった。
それは某超有名な漫画の特別な資格を持つ人間の裏試験。
これってあれにそっくりじゃないか?
そうか、そういうことだったのか!!
熟練度を極めることは探索者としての裏試験に違いない。
つまり、能動的な熟練度ももっと沢山見つけて上限まで上げておく事こそが、本当の探索者として最低限到達しておくべき力という位置づけなんだ。
なるほどなぁ。ひとつ賢くなった。
俺は能動的な動作の方も意識して積極的に上限まで引き上げることに決めた。
「さて、今日も行きますか」
いい時間になったのでアキと合流して朝食を食べ、準備をして学校へ向かう。
「ラック、今日はどうする?」
「ウォンッ」
ラックは留守番しているというので俺はそのまま部屋を出て、アキと一緒に寮から外に出る。
しかし、そこにはあの人が待っていた。
「おはようございます。佐藤君、佐倉君」
生徒会長、北条時音その人である。
一体何でこの人がここにいるんだ?
「おはよございまーす!!麗しの会長!!朝から会長に会えるなんてツイてるなぁ。良い一日になりそうです」
「おはようございます会長。どうしたんですか?」
アキは相変わらずだが、俺は気になったので尋ねる。
「いえ、たまたま通りがかったら、お二人をお見かけしたので声を掛けたんですよ?」
白々しい程にっこりとした笑顔で答える会長。
本当だろうか。しかし、偶然じゃないと証明することもできないので、油断はできない。
「そうですか、これから学校ですか?」
「ええ、ご一緒しませんか?」
「断る理由もありません。分かりました」
にこやかに俺達を誘う生徒会長を疑いながらも、俺は特に断る理由も浮かばずにその提案を受け入れた。
一体何を考えているんだろうか。
「それではまたお会いしましょう」
「はい」
「またぜひご一緒してくださいね、会長!!」
淑女然とした控えめな手の振り方で昇降口で分かれた俺達と生徒会長。特に何事もなく学校までたどり着いた。道中も軽く雑談した程度。不審な点は何もなかった。
アキは名残惜しそうに滅茶苦茶絵笑顔を浮かべてまだ手を振っている。
先日生徒会入りを断った腹いせや報復なども考えたんだけど、何か企んでいると思っていたのは俺の勘繰りすぎだったかもしれない。
俺は自分の杞憂に首を振る。
「おい、どうしたんだ?授業に遅れるぞ?」
考え事をして靴を履き替えるのを忘れていた俺をアキが急かす。
「ああ悪い」
俺はすぐに考えを振り切り、教室に向かった。しかし、その杞憂はすぐに裏切られることになる。
授業の休憩時間、トイレに行こうとして教室を出ると、
「あら、佐藤君じゃないですか」
生徒会長と遭遇した。
「ああ、生徒会長、なんでこんな所に?」
「たまたま一年生を授業している先生に用がありまして」
「そうですか。それじゃあ、自分はトイレに行くので」
「ええ、失礼しますね」
短い会話を交わし、すぐに分かれる。
お昼の時間、屋上でアキとシアと一緒にご飯を食べようとすると、その途中で再び会長とであう。
「あら、また奇遇ですね」
「あぁああ!!会長達も屋上でご飯ですか?」
「ええ、あなた達もですか?」
「はい!!ご一緒しませんか?」
こうして昼ご飯は会長達と一緒に食べることになった。
そこで交わされる会話も何の変哲もない日常的な会話。しかし、俺は徐々におかしいと思い始めていた。
その気持ちを示すように、それからもその日のうちに何度も何度も事あるごとに生徒会長に出会う。
明らかにおかしい。
学校から帰る時も何故か待ち伏せしていて、「あら、佐藤君、これから寮に帰るんですか?」と話しかけてきて、お互いの寮の近くまで一緒に帰った。
その時も何も特別なことはなかった。しかし、俺の不信感だけがどんどん募っていくばかりだった。
その現象はどんどんエスカレートして、次の日は寮から出て以降、学校が終わるまで、延々と不自然な待ち伏せが続いた。
どこに行くにも何をするにも生徒会長が偶々だと言い張って俺に遭遇してくる。
「奇遇ですね!!佐藤くん」
「ひぃいいいいいいい!!」
俺は生徒会長がなんでそんな事をするのか意味が分からなすぎて怖かった。
これが俺の恐怖の学校生活の幕開けだった。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
カクコン用の新作を公開しております。
https://kakuyomu.jp/works/16817139557489215035
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