第064話 億プレイヤー
再びダンジョンキャンプを楽しんだ俺たちは、翌日にさらに奥へと進んだ。
シアは大きい相手と戦う俺を見たいということで、二十一階層から三十階層までは大きい見た目だけのボーナスモンスターを俺が相手をして、今まで通り唯の黒いモンスターに関してはシアが相手をした。
「どうだ?」
「もう少し」
「了解」
俺が敵を倒すのを見て何かを得られるとは思えないけど、見たいというなら別に構わない。相手が大きくなろうと一向に強くなる気配がないからだ。
その上倒した魔石は自分の物、というルールになったので、超ボーナス魔石は全部俺の報酬になっている。ボーナス魔石は一個十万。この超ボーナス魔石がいくらになるか気になった。
それがすでに数十個は俺の物になっている。だから俺だけが戦うくらいどうってことない。むしろいつでも来いって感じだ。
三十一階層からはほとんどが大きいサイズのモンスターだったので、主に俺が倒して、細々とした黒いモンスターに関してはシアが討伐した。そして俺たちはようやく最終階層である四十階層に辿り着いた。
「ここが最終階層みたいだ」
「ん」
ここ以降は階段がない。それにしてもここは見覚えがあるような気がするけど、気のせいだろう。
その階層もなんなく踏破して最後の部屋に辿り着くと、そこはラックと戦った場所と酷似していた。
「なんだか見たことがあるような?」
「ん?」
「いやいや、そんなはずないだろう」
俺はキョロキョロと見回した後、頭を振ってその考えを頭から消し去った。その様子をシアが不思議そうに見ている。
俺が感じた既視感はありえない。俺は落とし穴の中にあった試練を乗り越えただけなのだから。
「どうやら調査隊がボスを倒してしまったらしいな」
「ん。残念」
部屋の中に入ったがボスは確認できなかった。すでにボスモンスターは討伐されていたらしく、帰還魔法陣が展開されていた。
「どうする?」
時間はまだ午後三時ごろ。帰還魔法陣を使えばすぐに外に出られる。
まだダンジョン内でレベル上げしても問題ない時間だ。
「もう少し手伝ってほしい」
「了解」
彼女はまだしばらく残りたいみたいなので了承した。
ただ、そのまま見ているだけだと暇だし、ただついてくるのも面倒だと思ったので、ラックを呼び出してラックの背に乗せて見学してもらった。モフモフを堪能しながら勝手についてってくれるのならそこまで苦にならないだろう。
それからはひたすら俺がモンスターを狩りまくった。とにかく狩った。三十五階層から四十階層の敵のリスポーンが追いつかず、ほとんどの敵がいなくなる程だった。俺は超ボーナス魔石を沢山手に入れられて満足している。
「戦ってみる」
「了解」
四時間程俺が超ボーナスモンスターを倒していると、シアがそう言った。
何かつかめたのだろうか?
シアは近くにいたデカくて黒光りしているミノタウロスみたいな超ボーナスモンスターに果敢に挑んだ。
―スパァンッ!!
シアの刀が光の軌跡を描いた。
―ズーンっ
ミノタウロスは真っ二つになって地面へと倒れ、そのまま粒子化して消えた。
「……」
シアはミノタウロスを倒してしばらく何も言わず放心した後、自分の手を握ったり閉じたりして何か考え事をしていた。
何かあったのかな?
ああ~、分かったぞ。少し大きいモンスターで怖かったんだけど、実際戦ってみたら大したことがなくて拍子抜けしてるんだな。分かる分かる。
俺が目を瞑って頷いていると、シアがこちらに近づいてきた。
「もう少し戦ってもいい?」
「ああ、もちろん」
「ん。ありがと」
一度倒した後、見掛け倒しだということを理解したシアは俺と一緒に超ボーナスモンスターを二十一時まで狩った。
いつものように影の力でダンジョンから出て、帰りに学校近くのいつもの買取所でボーナス魔石を販売すると、
「百万円だと!?」
という金額が提示された。そのあまりの破格さに俺は驚き戦いた。
まさかそんなに高いなんて……。
確かに十万円より高いとは思ったけど……。
「Aランク魔石なら当然」
「ああ、なるほどな」
シアの言葉に俺は納得する。
ボーナス魔石はBランク相当で買い取ってもらえた。ということは超ボーナス魔石ならそのさらに一つ上のAランク相当の魔石、ということだ。なんで気が付かなかったんだ。
それにしても今週だけで超ボーナス魔石を数百個手に入れた。それはつまり数億ということ。それに元々のボーナス魔石も千個以上ある。俺はEランク探索者になったばかりなのに、億以上の魔石貯金をする億プレイヤーになっていたようだ。
やっぱり俺ってツイてるな、と改めて認識させられることになった。
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