第063話 超ボーナスモンスター現る
「ふぁ~」
俺は目を覚まし、伸びをした後、テントの外に出る。寝つきも目覚めも最高なため、寝ぼけて「知らない天井だ」なんて言ったりしない。探索者適性様様だ。
「ラック、おはよう」
「ウォン」
ラックに声を落として挨拶をすると、ラックも小さな声で返してくれる。もちろんシアを起こさないための配慮だ。
朱島ダンジョンは十階層のダンジョンだと聞いている。昨日あれだけ進めたから今日中に攻略できると思う。俺はシアが起きるまで簡単な料理を用意し始めた。
「おはよ」
「おはよう、ご飯できるぞ」
「ありがと」
俺たちは普通に料理が出来るので、カセットコンロを二つ用意してフライパンでトーストとベーコンエッグを焼き、付け合わせにサラダを作って、最後に簡単なコンソメスープを用意した。
「美味しそう」
「まぁネットで事前に調べたやつばかりだけどな」
「関係ない。美味しいは正義」
「ははははっ。そうだな」
朝食を見てシアのアホ毛がぐるぐると回って嬉しそうだ。ネットのレシピとは言え、自分で作ったものを喜ばれるのは良いものだな。
俺たちは朝食を食べ終えて少し腹を落ち着かせた後、探索に出かけた。
そして十二時前に十階層に到達する。
しかし、ラックのように強い気配を感じない。
というか先への階段がある。
「あれ?おかしいな」
「どうしたの?」
「朱島ダンジョンって十階構造だと思ったんだけど、違うみたいだ」
「ん。ダンジョンリバース」
「ああ、そういうことか。構造だけじゃなくて階層数も変わるんだな」
おかしいなと思って呟くと、シアが答えをくれた。
そういえばここはダンジョンリバースで調査のために封鎖されているんだった。最近毎日来ているからすっかり忘れていた。だから十階層じゃなくなっていても可笑しくないのか。
それならどこまでこのダンジョンが続いているか分からないけど、今日と明日で攻略するためには、どんどん先に進んでいくしかないと思う。
「ちょっと急ぎ目で行かないと不味いかもな?」
「ん」
「それじゃあ、次の階からは少しだけ駆け足で進んでいくか」
「ん」
時間が足りないかもしれないということでシアに提案してみると、快く受け入れてくれた。
シアも早く深い階層に行けた方が強い敵が出てくるから、その方がうれしいんだと思う。出来るだけ早く上位のモンスターにたどり着いた方がレベル上がる訳だし。
俺たちは次の階層から軽くジョギングしながら次の階を目指して進んだ。
十一階層からは敵がグループでいることが多くなったけど、唯のボーナスモンスターなので、特に苦戦することも無く倒してどんどん階層を下りて行った。
「二十階層に到着っと」
「はぁ……はぁ……速い」
うんうん、この階に着くのが速かったってことだな。
確かに駆け足で進んできたからな、そう思うのも無理はない。
一応十六時頃にはこの二十階層に辿り着くことが出来た。
「ん~、ここも最下層じゃないな」
「そういうこともある」
「まぁな。次々進んでいこう」
「ん」
この階層にもさらに先へ進む階段がある。
一体このダンジョンは何階になったんだろうか。
できればもう半分は超えてるといいとは思う。
「あれは!?」
二十一階からは他よりも二回りは大きなモンスターが、今まで出会ってきた黒モンを従えるようにグループを作っていた。
「せいっ!!」
強いのかと期待して隠形で背後に近づいて殴ってみる。
―パァンッ!!
一撃で弾け飛んだので、あいつもどうやら見掛け倒しのボーナスモンスターだったらしい。
「これは!?」
しかも地面に落ちていた魔石を見ると、今まで拾っていたボーナス魔石よりも一回り大きい。今回のモンスターとの試練は、巨体で見た目は強そうだけど、実際は弱いので、あの巨体に挑めるかどうかがカギということだ。
「大きい」
俺が魔石の大きさに驚いていると後ろからシアが覗き込んだ。シアのアホ毛も大きな魔石に喜んでいるのか、グルグルと風車のように回っている。
「あぁ、これでもっと稼げるな」
「ん」
俺たちはその後も新しく現れた超ボーナスモンスターを何匹も倒しながら進み、その日は結局二十八階層まで辿り着くことができた。
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