第060話 新ボーナスエリアの解禁
寮に帰り着いたのは二十二時過ぎ。
霞さんが用意してくれたご飯を食べて風呂に入り、そそくさとベッドに横になる。
「Eランクか……」
「ウォン?」
俺がEランクの探索者カードを持ち上げて眺めていると、ラックが不思議そうな顔をしてベッドの上に顔を載せる。
「ああ、俺みたいに弱い探索者でもランクアップできたなぁと思ってな」
「ウォンッ」
俺が感慨深げにつぶやくと、ラックが誇らしげに体を反らして小さく鳴く。
「当然だって?いやいや、滅茶苦茶緊張してたからな。でも、新垣さんのおかげでなんとか合格できた。いい先輩だったな」
「ウォンッ」
ラックも同意するように頷きながら吠える。
「おお、ラックもそう思うか!!ヨーシヨシヨシ!!」
ラックが同意してくれたのが嬉しくなって、ガバリと起き上がり、顔をワシャワシャと撫でまわしてやる。
最底辺の俺でもとりあえずEランクに昇格することができた。どこまで行けるか分からないけど、もっと上を目指して頑張ろう。
「よし、明日からも頑張るか!!」
「ウォン」
心を新たにした俺は、気合を入れた後、眠りについた。
翌日。
「おはよう。昨日はどうだった?」
「ああ、なんとかEランクになれたよ」
朝、アキと一緒にご飯を食べ、試験結果について話す。
「いいなぁ。俺も早くランクを上げてハーレムしたいぜ」
「お前はいつもそればっかりだな」
「バッカだなぁ。将来イイ女を侍らせて人生を謳歌したいだろうが!!」
「俺は一人でいいよ……」
こいつはなんでそこまでハーレムにこだわるんだ?
結婚相手なんて一人で十分だろ。
今は人口、特に男性の比率が減っているので、一夫多妻制が認められている。だから法律的には問題ないんだけど、やはり女性側としてはいい気持ちはしないと思う。
その辺りを解決できるなら悪くはないのかもしれないけどさ。
「それはいいけど、さっさと学校行こうぜ」
「あっと、そうだな」
朝食に時間をかけ過ぎて少し遅くなってしまった俺たちは、少し急いでご飯を食べ、すぐに支度をして学校へと向かった。
「おはよ」
「葛城さん、おはよう」
「シア、おはよ」
教室に着くと、シアが言葉短く挨拶をしてきたので俺とアキが返す。
最近はこの三人で行動していることが多い。それというのも俺とアキがクラスメイト達から空気のような扱いになっていることと、シアが俺とパーティを組んでいるということが主に起因している。
「今日は勉強会ない」
「おお、じゃあ今日はダンジョン行くか」
「ん」
今日はダンジョン探索部の勉強会がないらしく、放課後にダンジョンに行くことになった。
「そういえばEランクになったよ」
「ん、お揃い」
俺が探索者カードを取り出すと、彼女も取り出して見せてきた。
アホ毛がユラユラと揺れていて嬉し気だ。
「あぁ、だからDランクダンジョンにも行けるけど、どうする?」
「ん?別にいつもの所でいい」
俺が申し訳なかったので、せっかくだから上のランクのダンジョンに誘ってみたんだけど、断られてしまった。
「いいのか?」
「ん。いつもの所が良い」
「そっか」
彼女がいつもの所でいいというならそれでいい。
俺はボーナス魔石を狩れるしな。
Dランクダンジョンにはまた今度行こう。
「はいはい、ご馳走様!!」
「な、なんだよ……」
「うるせぇ、毎日毎日見せつけやがって!!こっちの身になってみろ!!」
約束が終わると、アキがなぜか切れ気味に俺に突っかかる。
見せつけるって何をだ?
まさか……。
「何か勘違いしてないか?」
「してねぇよ!!葛城さんと毎日イチャイチャしてて羨ましいだなんて思ってないんだからね!!」
やっぱり勘違いしてんじゃねぇか。
「いや、シアとはそういう関係じゃないから。な?シア」
「ん……」
俺が同意を得るようにシアに尋ねると、シアが肯定する。
「ほらな?」
「はいはいそうですか!!」
それを見て、アキにドヤ顔で返すと、さらに機嫌が悪くなった。
俺が何をしたっていうんだ!!
シアとの間に甘い関係なんてないんだぞ!!
そんな一幕がありながらも、放課後はいつものようにダンジョンに向かった。
影の中に入ってダンジョンに近づくと、中から調査隊らしい人物たちが外に出てくるのが見えた。外にはいくつもの班らしいグループが戻ってきていて、調査隊の本気度が窺える。
流石に見つかるかなぁと思ったけど、影の隠密性が高いのか気づかれる様子はない。
「あれがダンジョンの調査隊だな」
「ん」
シアに聞こえるように呟くと、シアも頷く。
「ということは、調査が終わったってことだな」
「つまり?」
「奥まで行けるってことだ!!」
「ん!!」
そう、今までは鉢合わせするのを危惧して奥に進んでいなかったんだけど、今日からは全く問題なく進むことが出来るようになる。
そのことが分かると、シアの眼が露骨に嬉しそうな光を宿した。
奥の方には未知のモンスターが待ってるかもしれないからな。
俺も楽しみだ。
「次の休みは下層に行こうか?」
「ん!!」
平日はどうしても時間が限られるのでやはり金曜から泊りがけの方が良いと思う。そう考えて提案すると、シアはいつもより気合の入った声で返事をした。
アホ毛が狂喜乱舞している所を見ると、とても楽しみなんだろうな。
「よし、今日も行けるところまで行こう」
「ん!!」
俺たちは三階までしか行ってなかったダンジョンを七階まで進んで、その日の探索を終えた。特にシアは、週末が楽しみなのかいつもよりも張り切ってボーナスモンスターを倒しまくっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます