第039話 Re:E級ダンジョンから始まるボーナス生活
「おお~、変わってる」
朱島ダンジョンの中はダンジョンリバースとやらで構造が変わっていた。落とし穴から帰ってきた時は分からなかったけど、入り口から入ると全然違うことがはっきりと目に見える。
モンスターを含むダンジョン内は、現在高ランクの探索者チームが調査中らしい。警備もザルだったし、念のためってことだと思う。多分そんなに大したことはないじゃないかな。
でも今、中に冒険者がいるなら出会わないように気を付けないといけないな。
俺はツイてるから低階層なら多分大丈夫!!
「ラック出てきていいぞ」
真新しくなったダンジョン内を見回しながらしばらく進んだ後、ラックを影から出してやる。
「ウォンッ!!」
嬉しそうに鳴いた後、ハアハアと荒い呼吸を繰り返してうずうずしているのを我慢している。
「よし、散歩にいくぞ!!どっちが先に敵を見つけるか競争だ!!」
「ウォンッ!!」
俺はラックを促すように走り始めると、ラックも尻尾を振りながら駆け出した。
「おいおい、ラック、ちょっと遅いんじゃないか?」
「クゥンッ」
「何?俺が速すぎるって?そんなことないぞ?俺なんて人間の中でも一番弱いんだ。俺が速かったら、ラックは誰にも勝てないぞ?」
「ウォンッ!?」
挑発するようにラックを煽るが、情けないことを言うので、事実を教えてやると、驚愕して鳴いた。
何を驚いているんだろうな?
自分のスピードの遅さかな?
「よしよし、その内速くなれるさ。頑張って速くなろうな!!」
「ウォンウォン」
隣を走りながらラックを慰めるように頭を撫でてやると、嬉しそうに鳴いた。
「おっ。そろそろ敵が出てくるみたいだ。慎重に隠れていこうな?」
「ウォンッ」
ラックは影に入り、俺は隠形しながら敵に近づいていく。
あ、あれは!?ボーナスモンスター!?
壁を背にして顔を少しだけだして敵の様子を窺うと、そこにいたのはあの黒いコボリンだった。
マジで!?それじゃあ、ここは一階層からボーナスモンスターが出現するダンジョンになったってことじゃないか!!最高だな!!
ラックの方が防御力があるし、多分問題なく勝てるだろう。
「ラック、弱い敵がいたぞ。倒していいぞ」
俺がそう言うと、ラックは影から飛び出して黒いコボリンに襲い掛かった。
―ザシュッ!!
散歩の延長のように黒コボリンの隣を駆け抜けると、切り裂く音と共にコボリンの頭が飛んだ。その頭が地面に落ちると、黒いコボリンの死体が消えて魔石が残った。
おお~、黒いコボリンはラックでも一撃か。やっぱり弱いんだなぁ。
「ヨシヨシ、良かったぞ?」
「ウォンッ!!」
魔石を加えて持ってくるラックの頭をわしゃわしゃと撫でてやると、ラックは尻尾をブンブンと振って俺に頭を擦り付けた。
よし、今日はラックのストレス発散だからな。戦闘はラックに任せよう。
「よし、ラック敵を見つけ次第、倒してしまっていいぞ」
「ウォオオオオオオオオオオオオンッ!!」
俺の言葉嬉しかったのか、遠吠えをした。
それから俺たちは敵を見つけてはラックに倒させて、まるでドッグランで犬と遊ぶような感覚でダンジョン内を探索し、一階層の敵を殲滅した。
「ふぃ~、今日も稼げたな。ラックのおかげだぞ!!」
「ウォンウォーン!!」
百個近いボーナス魔石に俺はラックと戯れて喜び合う。
ボーナス魔石は一個十万。百個ともなれば一千万!!
朱島ダンジョンはなんてボーナスステージに生まれ変わってくれたんだ!!
これでまた母さんと妹にプレゼント、どころか色んなものをプレゼント出来そうだぞ!!
この間、妹には携帯に、SWOTCHを買ってやったからな。
母さんには料理が好きだから調理器具とか家電をプレゼントした。
今度は何をプレゼントしてやろうか……悩む。
プレゼントを貰って喜ぶ二人の顔が目に浮かぶなぁ。
それよりもこれは探索者たち皆が稼げるチャンスじゃないか!?
多分調査が終わったら朱島ダンジョンは人気になって稼げなくなるだろう。
それなら今のうちに稼いでおこう。
俺は調査が終わらないうちにちょこちょこラックを連れてここに散歩に来よう。
心の中でそう誓った。
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