第036話 不穏な事を言うのはやめて下さい
「かなりデカいな……」
「はぇ~、流石神ノ宮学園」
探索者育成にも力を入れていることからダンジョン探索部は学校を上げた部と言っても過言ではないみたいだ。だから別棟に専用の施設を持っていても不思議じゃない。とはいえ、別棟そのものがすべてダンジョン探索に関する施設だとは思わなかった。
ダンジョンに関する資料を集めた図書館、探索者適性を持つ人間の体を鍛えるためのトレーニングルーム、実際に戦闘訓練をする訓練場、探索者の体をマネージメントするトレーナーや癒すヒーラー等々、様々な施設や人材が別棟に全て収まっていた。
「ホントに神ノ宮学園って凄い学校だったんだな。俺よく特待生入試で受かったよ」
「ホントにな。お前は結構ツイてると思うぜ?」
「やっぱりそう思うか?俺も常々ツイてる思ってるよ」
うんうん、俺って昔からツイているからね。
「お前って中々面白いよな」
「お前もな」
そんなことを言いあってお互いに笑い合った。
「それよりもこの学校って知ってるか?ダンジョンを持ってるんだぜ?」
「ダンジョンを!?」
それは初耳だった。
まさか学校がダンジョンを管理しているとは……。
「ああ。だからこの学校に来れば誕生日よりも前にダンジョンに入って覚醒することが出来るし、学校管理のFランク、Eランク、Dランクのダンジョンに成績や試験に応じて入ることができるんだぜ」
「マジかよ!?それじゃあ、探索者適性を持った人はこの学園に来たい人ばっかじゃないのか?」
こんな充実した設備があるのならぜひ入学したい人たちばかりだろう。
「一応ダンジョンを持っている学校はここだけじゃないしな。とはいえここが一番多くのダンジョンを管理し、専用の設備までかなり整っているのは間違いないから探索者適性がある中学三年生の一番人気であることは間違いないな。でも全員が受かるわけじゃないし、全員を推薦で取るわけでもないからな」
「推薦もらう方も中々大変なんだな」
「そりゃあな」
探索者の推薦は推薦で苦労があるんだなと知った。
俺たちはそのまま話をしながら自分たち以外にもこの建物を訪れている連中と同様に中に入った。
「いらっしゃいませ」
中に入ると受付が存在していた。そこには自分達以外の人間が列を作っている。ここがダンジョン探索関連施設であることから、ここにきているのは皆ダンジョン探索の関係者であることが推測できる。
「思ってる以上にこの学校には探索者がいるんだな」
「そりゃあ大体半分は探索者って言われてるからな。残り半分は学力特化のエリートさ」
「へぇ~」
「ホントに知らない方が驚きだからな」
俺はなぜか呆れられた。
「ようこそダンジョン探索棟へいらっしゃいました。探索部の見学でよろしいですか?」
「はい、お願いしまーす!!」
「俺はこいつの付き添いです」
俺たちの出番になり、受付さんが俺達の対応をしてくれる。
「あら?あなたは推薦組ではないですか?」
「はい、俺は特待生枠ですね」
探索者推薦枠ではない人間は珍しいらしく
「あ、そうなんですか。わかりました。まず見学者は部室に行っていただきます。部室は「あ、高塚さん、こいつらは俺が連れてきますんで大丈夫ですよ」」
受付の人らしき名前を呼んで会話に割り込んできたのは、早乙女先輩だった。
「あら、早乙女君。知り合いなの?」
「寮生の後輩でね」
「そうなのね、それじゃあ、後はお願いするわ」
「了解っす~。ほら、お前たちついてこいよ」
軽く受付さんと早乙女先輩が会話した後、俺達は急かされるように早乙女先輩の後について部室へと向かった。
「ようこそ、ダンジョン探索部へ。佐倉は分かるが、佐藤はどうしたんだ?お前は一般枠だろ?」
部室は学校を上げた部活だけあってかなり広く、ワンフロア全てが部室として利用されていて、その中の一室に案内された形だ。
「ええ、俺はアキ、佐倉の付き添いですよ」
「なーんだ。お前も入ってくれるのかと思ったぜ」
少し残念そうにオーバーなリアクションをとる早乙女先輩。
「自分は一人が向いてますからね」
「まぁ無理強いはしねぇよ。入りたくなったらいつでも行って来いよ」
「はい」
ははははっ。レベルとスキルと能力値があったらすぐにでも入ってますよ……。
俺はそんな態度はおくびにも出さずに頷いた。
「まぁいい。お前たちは俺が案内してやろう」
「いいんですか?忙しいんじゃ?」
アキが少し驚いて早乙女先輩に尋ねる。
確かに学校公式の部活のダンジョン探索部の部長ともなれば、非常に多忙でも可笑しくはない。もちろん何よりもダンジョンに潜ることが第一だとは思うけど。
「今日は予定があったんだがな、急にキャンセルになって予定が空いたんだよ。だから問題ない」
「それじゃあ、お願いします」
この後、ダンジョン探索部に関する説明を一通り聞いて、専用棟を案内してもらった。本当は入ってはいけない場所まで案内してもらって少し悪いような気がしたけど、
「気にするな!!」
とニコリと笑う早乙女先輩によって一蹴された。
「今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いや、気にするな。んじゃな。また部活で会おう」
アキは入部手続きを行い、俺は特になにもせずそのまま帰寮することになった。
「俺は入りませんよ?ではまた」
「ははははっ。俺はそうは思わないがな」
「え!?」
俺が帰ろうと出口に向かおうとすると、早乙女先輩が笑いながら意味深な事を呟いたので、驚いて後ろを振り向く。
「またな~!!」
しかし、そんな俺を尻目に、振り返らずに手を振りながら早乙女先輩は探索棟の奥へと去っていった。
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