第017話 ぼっち卒業
「お……い」
最悪だ。まさかこんなことになるなんて……。
これからの高校生活ずっとからかわれて過ごすことになるんだ……。
嫌だ嫌だ嫌だ……。
元々陰キャの俺はネガティブな考えが心の中を支配していく。
「お~い……」
もうこうなったら中学時代と同じように出来るだけ影を薄くして、目立たないように、波風立てないように三年間過ごすしかない。
せっかくビシッと決めてきた髪型だけど、もう明日からは適当でいいかな……。
俺は俯いていた顔を上げる。
「うわっ!?」
目の前に人懐っこそうなイケメンの顔があった。思わず俺は仰け反ってしまった。
「何度も呼んだんだぜ!?」
不機嫌そうに頬を膨らませ、プイッとそっぽを向いて怒りを露わにしていた。
厳つい男がやるのは無しだが、幼い感じの男がやると見れなくはないのは、本人も分かっているのかもしれない。
「ごめんごめん、佐倉だったっけ?どうかしたのか?」
「いや、他の面々はもう帰っちまったのにお前だけ動かないから任されたんだよ。佐藤は寮なんだろ?俺もそうだからさ」
「え!?」
辺りをキョロキョロと見回すと、俺と佐倉以外はもう誰もいなくなっていた。
俺が呆然としている間にどれだけ時間が経ってるんだよ……。
自分の不甲斐なさに思わずため息が出る。
「ため息吐きたいのはこっちだからな?全く入学早々こんなことを任されるなんて」
「ホントに悪いな」
ヤレヤレと呆れるように首を振る佐倉に、俺は頭を下げた。
「ま、まぁ、そこまで落ち込むなよ。とりあえず、寮に行こうぜ!!」
まさかそんな反応をされるとは思っていなかったのか、苦笑しながら佐倉が俺の方を叩く。
軽口のつもりだったのかもしれないな。それなら悪いことをした。
「そうだな。そういえば改めて佐藤
「俺は佐倉孝明。アキとでも呼んでくれよな!!」
俺はこれ以上落ち込むのは止め、改めて自己紹介をして手を差し出した。佐倉も名乗り返して、俺の手をがっちりと握り返してくれた。
ボッチの俺に高校初めての友達が出来た瞬間だった。
「まず一人目が……」
俺は寮への帰り道で俺以降に自己紹介をしたクラスメイト達の事を聞いている。
話によると俺の後に探索者適性があったのは四人いた。
高橋功。
いかにもモテそうなサッカー好きの男。髪の毛を染めていて、線の細い佐倉とは別の好青年といったタイプのイケメンらしい。ずっとクラスの中心にいてカースト最上位に常に君臨していそうなタイプだ。女子たちもこいつが気になる人がすでに何人もいるらしい。やっぱりイケメンは得だよな。
土屋明美。
髪の毛を茶色に染めたあか抜けた雰囲気を持つ綺麗な女の子。さばさばした性格と面倒見の良さを感じさせる対応ですでに女子の中心になりつつあるらしい。一日目だというのに半端じゃないコミュ力だ。
山之内亮二。
佐倉や高橋とも全然違った、脳筋タイプのイケメン。その豪快な性格は井上と近いような気がするが、もう少し柔らかい感じのようだ。井上が獰猛だとすれば、山之内はアホ、と言ったところだろうか。
吉田美沙。
めかくれ女子。前髪が目にかかるほど長く、顔の全体像は分からないけど、鼻から下のパーツは整っているとか。絶対に美少女だぞ、と佐倉は断言していた。彼女は所謂大人しい系の女子で、自己紹介も言葉少な目に恥ずかしそうにすぐに終わらせてしまったらしい。読書が趣味のようだ。
俺の後に四人も探索者適性を持つものがいた。俺を入れてこのクラスには九人もの探索者がいる。このクラスは二十人だからほとんど半分だ。
この異常な探索者適性持ちの多さは一体何なんだ?
「まぁこんな感じだな」
「なるほどな。助かったよ」
「気にすんな。これから長い付き合いになりそうだからな」
俺が放心している間のことを聞いている内に、俺たちは学生寮へとたどり着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます