第015話 偶然という名の必然

 ハプニングはあったけど、無事に学校に辿り着いた俺はクラス分け表を確認する。


「一年二組か……」


 ダンジョンが現れた当時、そこからあふれたモンスターたちによって、世界中で沢山の人が殺された。世界人口はおおよそ二分の一程度になったと言われている。


 子供たちはその数は大きく減らし、日本中の学校が廃校や統合され、数を減らすこととなった。


 今では一学年のクラス数は多くても三クラス程度。大抵の学校は二クラスくらいしかないところが多い。特に公立の学校に関してはその傾向が強かった。俺がこれから通う学校は四クラスある。ただ、一クラス辺りが二十人程度だ。


 俺は案内図に従い、自分のクラスの教室へと向かった。


―ガラガラガラッ


 教室の扉を開けると、一瞬俺の方に視線が集まったと思えばすぐに霧散する。中学からの知り合いなのか、何人かはすでにグループになって話をしている人達もいた。


 しかし、ひと際目を引くのはやはり彼女だ。


 そう朝スカートに頭を突っ込んでしまったロシア系美少女だった。彼女は窓際の一番後ろの席で、俺以外の男たちもちらちらと彼女のことを横目で見ていた。


 俺はとりあえず自分の席を探すと、なんとちょうど彼女の席の隣の席だった。


 なんという偶然なのだろうか……。

 まさか同じクラスの上に、さらに隣の席になるとは……。


 俺はその偶然を呪った。


 さっきの今で物凄く気まずい。それに彼女を見るとあの鮮烈な光景を思い出してしまい、頭の中に邪なシーンが浮かんで来る。俺は頭を振って般若心経を唱えて心頭滅却してその場を凌いだ。


「よろしく……」

「ん……」


 俺が隣を向いて申し訳なさげに告げると、彼女はこちらに興味無さそうに見向きもせずに、窓からを外を眺めながら短く返事をするだけだった。


 やっぱり出会いが出会いだけに滅茶苦茶嫌われているよなぁ。

 こんな美少女に嫌われるとか、芽がないとしてもまだデビュー前だというのに辛すぎる。


「はーい。席に着け~」


 暫くいたたまれない雰囲気の中で縮こまって過ごしていると、クラスメイトが全員揃い、担任の先生が扉を開けて教室へと入ってきた。


 担任の先生はタイトなスーツとスカートを履いた、如何にも出来る女という雰囲気を持つ女性の先生だ。少々吊り目でとても気が強そうな顔をしている。言葉遣いからもそれは窺える。


「私はお前たちの担任の式山葵だ。よろしくな。何か質問があるやつはいるか?」

「先生彼氏はいますか!!」


 先生が軽く自己紹介をした後、俺の目の前に座っている男がビシッと手を挙げて彼女に尋ねた。


 全くそんなことを尋ねるなんて漫画か何かかよ、と思ったんだけど、


「はぁ……毎年そういう奴がいるが、今年はお前か……。まぁいい……。彼氏はいない。これでも探索者資格を持ってるんでな。少なくとも私より強い奴じゃないと候補にも挙がらん」


 と溜息を吐いて呆れるように答える先生。


「わっかりました!!すぐに検査を受けてきます!!」


 しかし目の前の男は先生の呆れも気にすることなく、とんでもないハイテンションで敬礼した。


 教室内に笑いが起こる。


 こいつとんでもない勇気があるやつだな。

 ある意味探索者向きかもしれない、適性さえあれば。

 そして適性があれば、いつか先生を超えることもあるかもしれない。

 そうなれば彼も先生の彼氏候補か、凄いな。


 それからも他愛のない質問がいくつか舞い跳び、先生は淡々と答えた。


「質問はここまで。自己紹介とかは入学式後のホームルームでやるから今は無しだ。これから入学式の説明をしておく」


 質問タイムが終わると、式山先生は入学式の説明を行う。話が終わったらちょうどいい時間になったらしく、俺達は整列して入学式が行われる講堂へと向かった。

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