第005話 熟練度

 鍾乳洞のような洞窟を一歩、また一歩と奥へと進んでいく。あかりのようなものはないのにダンジョン内は明るく、ツルツルとした岩肌もきちんと視認できる。


「これがダンジョンかぁ」


 辺りをキョロキョロと田舎から都会に出てきたおのぼりさんのように見回す俺。


 寒くもなく、熱すぎることもなく、結構快適な空間でとても不思議な力が働いているのが分かる。とにかく敵を探さないと。


「うぉ!?」


 辺りを警戒しながら進んでいると、突然体から力が湧き上がるような感覚に襲われた。


『ステータスが活性化しました』


 脳内に機械の声とはまた違った、女性的だけど無機質な声が響き渡る。


 そしてその数秒後に、俺の前に探索者なら全員が見ることが出来るステータスウィンドウが目の前に自動的に展開された。勿論自分のステータスは自分にしか見えない。


 そこにはこう記載されている。


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 ■名前

  佐藤普人ふひと

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「おお!!これがステータス!!」


 俺は思わず叫んでしまう。


 確かに黒崎さんが言う通りレベルもスキルも表示されていない。


「改めて見せられると落ち込むなぁ」


 その表示を見て俺はついついため息を吐いて肩をがっくりと落とした。


 いや、だめだだめだ。またネガティブ思考になっている。レベルは確かに今はない。でも、戦闘すれば経験値が入ってレベルが表示されるはずだ。そして表示されればレベルが上がり、スキルの一つでも覚える可能性もある。


「とにかく敵を探すぞ!!」


 俺は頭を振って改めて敵を探すことにした。


「確か……ステータスは消したいと念じれば消えるんだよな……」


 ネットで調べたことを元に、俺はステータスが消えるように念じると、ステータスウィンドウは綺麗さっぱり消えてしまった。


「すげぇ……めっちゃ不思議」


 探索者じゃなければ出会えない不思議体験についついボーっとしてしまう。

 

 あぶないあぶない、ここはダンジョン。いつどこでモンスターが襲ってくるか分からない場所。気を引き締めて行かないと。


 俺は再び辺りを警戒しながら奥へと進んでいく。


『"鼓動"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』

『"代謝"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』


 しばらく歩いていると、再びあの声が聞こえてくる。


 熟練度?


 なんだろうそれ、ネットでもそんな情報なかったけど……。あれかな。書くまでもない情報だったってことなのかな。


 俺は気になったので再びステータスを開いてみる。


「ステータス」


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 ■名前

  佐藤普人

 ■熟練度

 ・鼓動(103/99999)

 ・代謝(103/99999)

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 そこには熟練度という項目が増えていた。


 なんだろう、鼓動って。熟練度が上がると良いことがあるのかな?


 今のところ分からないけど、熟練度といえばゲーム内で上がっても良いことはあれど、悪いことはなかったはず。鼓動なんて無意識にやってることだし、勝手に上がるのだからひとまず放っておくことにしよう。考えても分からないだろうし……。


 ひとまず問題を棚上げして俺は先に進むことにした。ステータスを消して再びキョロキョロと辺りを見回しながら恐る恐る歩いていく。


『"思考"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』

『"呼吸"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』


 それからまた数分ほど経つと再びあの声、いやもう面倒だからアナウンスさん、通称アナと呼ぼう、の声が聞こえた。


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 ■名前

  佐藤普人

 ■熟練度

 ・鼓動(308/99999)

 ・代謝(308/99999)

 ・思考(255/99999)

 ・呼吸(102/99999)

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 またステータスを確認すると、今度は呼吸という項目が増えている。


 一体この熟練度って何なんだろうな。


『"五感"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』

『"直感"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』


 まただ……。


 俺は良くわからないまま、敵を探して彷徨い続けた。

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