第003話 バカにされる
「あひゃひゃひゃひゃっ……！！」
「そんなに笑わなくてもいいだろ……」
家に帰って今日の話をしたら、妹が人前では出してはいけないような声を出して大口を開けて笑っている。
折角の美少女なのに台無しだ。父と母はどちらかというと俺寄りで普通くらいなんだけど、妹だけは両親の顔のいいとこ取りをしたのか、めちゃくちゃ可愛らしい顔立ちをしている。俺にとって目に入れても痛くない自慢の妹だ。
俺はそんな妹の反応を見て苦笑する。
「いやだって……プププ……適性あるのにレベルも能力値もスキルもなしとかある？普通……プププ」
妹は腹を抱えて堪えるように笑いながら返事をした。
「いや、俺が一番信じられないんだからホント。昔からツイてる方だと思ってたんだけどなぁ」
「確かについてたね、オチが！！あははははっ！！」
俺のぼやきに妹は足をバタバタさせる。
こんなことされたら妹以外なら切れてしまうところだけど、妹は可愛いから問題ない。俺は妹ラブなんだ。
「頼むから外で誰にも言わないでくれよ？」
「分かってるって。こんな恥ずかしいこと家族以外に言えないよ」
「あー、面白かった」と妹はソファにグッタリと横になった。
妹は幼いながらも、家族の悪口とかを他人に言ったりはしないくらいの分別がある。だからこんなことも言えるんだよな。
「それで？大丈夫なんでしょうね、
ご飯の洗い物をしている母さんが心配そうに俺に尋ねる。
流石に担当さんもこんな例は見たことなくて狼狽えてた、とは言えないよな。そんなことを言えばもっと心配させるだろうし、多分探索者になるのを辞めさせられてしまう。
それは困る。華々しく高校デビューを飾るためには探索者になるのは必要なんだ。
「大丈夫大丈夫。担当してくれた人もレベル上がれば問題ないって言ってたし。最悪弱くても、浅い層のモンスターはステータスがなくても倒せるくらい弱いから」
だから俺は取り繕って返事をした。
一応嘘は付いてないからセーフセーフ。ひとまずダンジョン内に入ってステータスを覚醒させ、レベルを上げてみないと何も分からない。話はそれからだ。
「ならいいんだけどねぇ。本当に気をつけなさいよ？」
「分かってるって。稼いで贅沢させてみせるよ」
「期待しないで待ってるわ」
「私は期待してるね、お兄ちゃん！！」
少し呆れ気味の母と、少しバカにしつつも本当にそうなったら甘えて倒してやる、という気持ちがありありと顔に表れている妹。
ホント生意気だけど可愛いんだよなぁ。
絶対甘やかしちゃうわ。
「おう、遊園地でもどこでも連れてってやるさ」
「やったー！！約束ね！！」
ついつい調子になって適当なことをほざいたら、妹に指切りさせられて言質を取られてしまった。
うん、許す！！
どうしようもなくなったら普通にバイトして稼げばいいだけだし。
愛しい妹のためならそのくらい朝飯前だ。
「うーん、やっぱり俺と同じような境遇の人の情報は一切ないな」
昼食を食べ終え、ひとしきり妹と戯れた後、自室に戻りスマホで探索者についての情報を調べていた。
しかし、俺と同じようにレベル、能力値、スキルがない、なんていう書き込みの類は全く見つけられなかった。あっても多少皆よりステータスが低いとか、スキルが外れだった程度。期待するような情報は得られなかった。
俺はスマホを放り出してあおむけになる。
一体なんで俺はレベルもスキル無しなんてことになってるんだろうか。高校デビューしてやる、なんて
「あ～、止め止め。こんなことやる前から悩んでも仕方ない。とにかくダンジョンに潜ってレベル上げてからだ」
探索者登録自体は適性さえあれば何歳からでも可能だ。でも実際にダンジョンに潜ることが出来るのは十六歳を超えてから。俺の誕生日は四月二日だから、入学式前に入ることができる。
そこでレベル上げておけば高校デビューに間に合う。入学式前の誕生日の奴はそう多くないはず。
「そうと決まれば情報収集だ」
俺は初心者でも潜れるダンジョンの情報を集め始めた。
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