79.魔道具でさくさく住環境整える



 俺は自分の領地を与えられた。


「それでは領主様のお屋敷にご案内いたします」


 村長のチョールが、俺に言う。


「へー、領主の屋敷なんてあるんだ」


「はい。ですがここ最近は手入れをしておらず、放置されている状態です」


 なら掃除とかしないとだな。

 めんどくさい……。


「あ、じゃあ家は良いよ。適当に建てるし」


「「「は……?」」」


 女騎士アーシリア、弟のイルマ、そしてチョールが驚いている。


「殿下。家を建てるとは?」

「え、その言葉通りだけど。ちょっと余ってる土地かしてな」


 俺はチョールに案内してもらい、領地内の余っている土地へとやってきた。


 といっても……。


「で、殿下……本当にこの、奈落の森のなかにお屋敷を建てるのです……?」


 アインの村からあること数分。


 深い森の中に居る。


 ここは魔物がうろつくという最高の環境!


「おう。んじゃまとっとはじめるかな」


「レオン様! あっしが手伝います!」


 筋肉マッチョマンに変貌を遂げたイルマが願い出てくる。


「他の村の衆達にも手伝わせます!」


「あ、いいって……行っちゃったわ……」


 イルマが、俺が止めるのを無視して、村へと走って行った。


 チョールが溜息交じりに言う。


「領主様が来たというのに手伝おうとしないなんて……申し訳ない」


「村人達もだいぶ困惑している様子です、殿下。お気を悪くしないでくださいまし」


 アーシリアの言うことも最もだからな。


「仕方ないんじゃない。それにここ魔物が村人が近づきたくないんだろ?」


 それに他人の手を借りずとも、俺はサクッと作りますか。


「とりあえず樹が邪魔だな」


 俺は両手を広げる。


 右手に炎を、左手に氷を魔法で出現させる。


 胸の真ん中で合成して、放つ。


 かっ……! と七色の光が周囲に輝くと……近くにあった木々が消滅する。


「よし、次……」


「殿下!?」


 アーシリアが驚愕の表情を浮かべている。


「ん? どうした?」

「どうした、じゃないですよ。何ですか今の……! 一瞬で森の木々が消滅しましたよ!?」


「消滅魔法だよ」

「しょう……めつ……?」


「うん。炎の魔力と氷の魔力、それを等量にぶつけることで、消失の魔力を作り出せるんだ」

「そ、そんなの……聞いたことがありません……!」


 あれ、そうなの?


【是。2属性の魔力を操れるものがそもそもこの世界には存在しないので】


 へー、そうなんだ。


「いやぁ……さすがレオン様! 見事な魔法の腕前!」


「そうかな。普通じゃない?」


「【普通じゃない!】」


 ミネルヴァとアーシリアにそろってツッコまれてしまった。


「んじゃ家を建てるか」


「レオン様ー! 助っ人連れてきましたぜー!」


 ちょうどイルマが村から若い衆をあつめて、俺のところへと戻ってきた。


 イルマの後ろには、困惑気味の村人たち数名。


「ど、どうしたんですかい、このあたりだけ木々がないんですが……?」


 うんうん、と村人達がうなずく。


「ああ、消した」


「「「消した!?」」」


「魔法で」


「「「魔法で!?」」」


 やっぱり消滅魔法はこの世界じゃまだ一般的じゃないみたいだな。


「と、とりあえず……家を建てましょうか! あっしらに任せください!」


「いやいや、大丈夫だよ。もうできてるから?」


「は……?」


 ミネルヴァ。あれを取り出してくれ。


【是】


 空間に裂け目が空いて、そこから収納していた魔道具が、ころん、と飛び出る。


「殿下。それは……箱、ですか?」


 アーシリアが俺の手元を、しげしげと見やる。


「魔道具だよ。俺お手製の」


 俺は手に持っている箱を、空中に放り投げる。


 すると、ぼこっ、と箱が……増殖した。


 1個だった箱が、2個、三個……とどんどんと増えていく。


「ええええええええええええええ!?」


 増殖していくブロックが、あらかじめ登録していた形へと、超高速で積み上がっていく。

 あっという間に、ブロックでできた家が完成。


【マイクラで草】


 そっから着想を得たからね。


「で、殿下なんですか今のは!?」


「【どこでもハウス】。あのブロックには増殖と性質変化、自動建築の魔法が付与されてるんだ」


 ブロックを指定の場所に置くだけで、あらかじめインプットしていた形にブロックが積み上がる。


 あっというまに家が完成するってわけ。


「す、すげえええええええええええ!」


 イルマをはじめとした、村の若い衆達が驚愕している。


「家が一瞬でできるなんて!」「すごい! さすがレオン様!」


 ぱちぱち、と拍手する村人達。


「いやこれ凄いってレベルじゃないですよ! 世紀の大発明じゃないですか!?」


 アーシリアがブロックハウスを指さして言う。


「そう?」

「そうですよ! 原理を知りたいひとたちが、殿下の持つ製法を狙ってきちゃうかも……」


「どうぞどうぞ。作れるもんならな」


【解。付与魔法を使えるのはこの世で現在4人のみ。そのなかで、ここまで高度な魔道具を作れるのはマスターだけ。原理を知ったところで再現は不可能】


 というわけで、別に盗むならどうぞってかんじ。


「俺は魔道具を作れればそれでいいし、もうけようなんて思ってない」


「は、はぁ……やっぱり変わってますね、殿下は」


 そうだろうか?


【禿同】


 はげどうってなんだよ。


「次は水かな」

「水といわれましても、井戸のある街まで結構距離がありますし、森の中の川までもかなりありますぞ?」


 チョールが俺に教えてくれる。


「問題ないよ。ミネルヴァ。あれを」


 また空間から、ぽろっ、と目当ての魔道具が出てくる。


 手押しのポンプだ。

 ただし、先っちょがドリルみたいになっている。


「殿下、これは?」

「どこでもポンプ。この辺にぶっ指して……」


 ぐさっ、と手押しポンプを指す。


「イルマくん、ちょっとこのレバーを上下に動かしてごらん?」


「了解です!」


 マッチョマン・イルマがポンプのレバーを持って、ガシガシと上下に動かす。


 じゃー! と水が勢いよく蛇口からできた。


「「「ええええええええええええ!?」」」


「うん、問題なく水が出たな」


 村人、そしてアーシリアもまた、驚愕している。


「え、なに?」

「殿下!? これもまた魔道具なのですか!?」


「おう。どこでもポンプ。ぶっさすと近くの水脈と接続して、いつでもどこでも水がくみ取れるって魔道具」


【完全にドラえもんの秘密道具で草】


 ミネルヴァさんの的確なツッコミ。

 まー、そっから着想を得てる感あるからね。

【現代知識と技術で異世界で無双するのは聞いたことがありますが、まさか未来の世界の猫型ロボットの技術を、異世界の魔法で再現する人はあなたくらいですよマスター】


 それ、褒めてる。


【草】


 褒めてないよね!?


「いやぁ、すげぇや!」

「やっぱレオン様すごすぎぃ!」


 村人達がわぁわぁ、となんだか知らないがはしゃいでる。


 アーシリアが驚愕の表情のまま、ポンプから出てくる水を見ている。


「てか、おまえさっきから何に驚いてるんだ?」


 アーシリアは俺を見て、怒ったような口調で言う。


「全部にですよ!!!!!!!!!!」




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