76.新年会で報酬ゲット



 俺は特級ダンジョンをクリアして、騎士アーシリアと一緒に、実家に帰ってきた……。


 話は、数日後。


 今日は城で、身内を集めての新年会が行われていた。


「にいさまっ! 新年おめでとうございますっ!」


 我が弟ラファエルが、輝く笑顔を俺に向けてくる。


 新年会ということで、普段よりもかっちりした服装だ。


「おう、おめっとさん。今年も仲良くしてくれよ~」


「もちろんですっ!」


 そこへ、ラファエル以外の王子達が、ぞろぞろと集まってきた。


「レオンー! 新年おめでとうございますわー!」


 むぎゅっ、と王女が俺のことを抱きしめると、別の王女、王子達がこぞって、俺を取り合う。


「レオン! じつはおまえに頼みたいことが……」

「おい新年会の席よ! レオン、あっちで二人きりでおしゃべりしましょー♡」


「レオン、この料理最高だな!」


 新年会には俺の作った、地球料理が結構並んでいる。


「うますぎますわ~♡ さすがレオン、天才ですわ!」


「こんな美味いメシが食えるなら、レオン、おれんとこの【領地】で働かないかっ?」


 王子の一人が言う。


 この国では成人した王子には、土地が与えられる。(王位継承者の第一王子アルフォンス以外の王子)。


「領地で働く……なぁ。ごめん、俺他にやることあるし」


「「「そんなぁ~!」」」


「告。もぐもぐ……他の王子達は……むしゃむしゃ……マスターをおそばにおいておきたいようでしたね……はぐはぐ」


 青髪の美少女が、俺の隣で皿いっぱいのローストチキンを頬張っている。


 彼女はミネルヴァ、俺のスキルであり会おう棒が、人間になった姿である。


「おまえなんで顕現してるの?」

「解。正妻だからです、どやぁ……」


 胸谷さんは相変わらず、戦闘以外だとポンコツだなぁ。


「胸谷!? 谷って! ありますよ、ちゃんと膨らみが! 山がほら! マウント富士がほらぁ……!」


 と、そのときだった。


「殿下」

「おお、アーシリア」


 パールホワイトの美しい髪の毛をした女騎士、アーシリアだ。


 王族以外にも、騎士団長など、国の政に関わるトップの人物達も参加してる様子。


 アーシリアは副騎士団長だからいるのだろう。


 今日はアップにまとめていた髪を、たらしている。


 少しウェーブのきいたロングヘア。

 そして……。


「ま、マウント……富士……だと……」


 まな板さんが、アーシリアの胸部を見て、驚いている。


 今日のアーシリアは鎧ではなくフォーマルな平服だった。


 鎧に包まれてない……かなりの大きなおっぱいが、俺たちの前にさらされている。


「ミネルヴァ。わかった? これが本物の富士山だよ」


「是。……どうせ、わしは時代の、敗北者じゃけえ……」


 しょんぼり、とミネルヴァが頭を垂れる。


「んで、アーシリア。何のよう?」

「今日は謝罪に参ったのです」


「謝罪だぁ?」


 俺の前で、アーシリアが深々と、頭を下げた。


「殿下……先日はまことに、申し訳ございませんでした。護衛であるにもかかわらず、あなたの足を引っ張るどころか、逆に守ってもらうことになってしまって……護衛としての任務を全うできなかったこと、心よりお詫び申しわげます」


 確かに、彼女が親父から任されたのは、俺を守れという任務。


 特級ダンジョンにおいての彼女は、護衛役として不適当だったかもしれない。


 でも俺は別に怒る気なんてさらさらない。


「気にすんなって」


「ですが……」


「親父の真意は護衛じゃなくてお目付役って意味だったんだと思うよ。だからおまえはちゃんと役割を果たしてたよ。謝る必要ないって」


「殿下……」


 アーシリアは頭を上げて、胸に手を当てて言う。


「お心遣い、感謝申し上げます。また……ダンジョンでは、私の命を救ってくださり、ありがとうございました」


「え? そんなことしたっけ?」


「はい。相手は魔神。私のような一般市民では決して勝てない相手でした。単独で会っていたら、死んでました」


 うーん、そうかな? ミネルヴァ?


「うぃーひっくぅ~。しーらねしらね、おらしらね~ひっくっ」


 すでにワインをなみなみ飲んだのか、顔真っ赤にして酔っ払ってるミネルヴァ。


 ほんっと、肝心なとき以外はポンコツなんだからこの人……。


「殿下。あなたは、本当にお強い方だったのですね。お見それいたしました」


「いやいや、なんのなんの」


「さて……と。ここからは、騎士としてではなく、私個人としての発言、お許しいただけますか?」


「へ? ああ、いいけど」


 ニコッ、とアーシリアが綺麗な笑みを浮かべる。


 ……だが、なんだろう。 

 眉間に怒りマークが浮かんでるような……。

「なんで、進んであぶないことするのぉ~~~~~~~~~~~~!?」


 アーシリアが俺のほっぺたをつまんで、横に引っ張る。


「ふぁ? ふぁにー?」


 別に痛くはないんだが、ほっぺつかまれて、浮いてるような状態だ。


「殿下! あなたは王族! あなたの体はこの国の大切な大切な財産の一つなんです! 王の血をつぐ人間が、あんな……あんな! 危ない場所に護衛もつけずに単独でいって、トラップに自ら引っかかって、モンスターに自らつっこんでいくような、危ないまね、しちゃいけません……!」


「正論で草ぁ~……」


 へらへら……とミネルヴァが笑いながら言う。


「いやいや、危なくないってば」


「今回はたまたま、対処可能なレベルの相手でしたが! もしもっともっともとぉっと強い相手がいたらどうするの!?」


「わくわくする!」


「わくわくするなっ! もうっ! もうっ! いったい何回……何十……いや何万回心配したと思ってるの!?」


 ぎゅっ、とアーシリアが俺を抱きしめる。


 大きくて、柔らかなおっぱいが、俺を包み込む。


 甘い匂いと、暖かな感触が……実に心地よい。


「…………」


 ミネルヴァが、カメハメ波みたいなポーズ取っていた。


「なにしてんの?」

「解。胸が凹むように念を送ってます」


 そんな魔法ねえよ。


 アーシリアが俺を放してくれた。

 その瞳は、涙で少し濡れていた。


 本気で心配してくれたのか……。


「……悪かったよ。気をつける」

「本当ですか?」


「ほんとほんと」

「今度また特級ダンジョンが出現したら?」


「……………………………………一言声をかけます」


 うん、とアーシリアがうなずく。


「よろしい♡」


 と、そこへ……


 ぱちぱちぱち……と手をたたきながら、親父が近づいてきた。


「親父。それにアルフォンス兄さん、デネブ兄さん」


 今回の依頼主である3人が、俺の元へ近づいてくる。


 護衛達が人払いをする。

 アーシリアも立ち去ろうとするが……。


「いや、アーシリア。君はここに残りたまえ」

「ぎょ、御意……」


 アーシリアが俺の隣でひざまづく。


「んで、なに?」

「レオンよ。此度の活躍、まことに大儀であった」


「ああ、すごいぞ! レオン! 見事だ!」

「まさか特級ダンジョンをひとりでクリアするなんてなぁ。ま、わかってたけど」


 うんうん、と三人がうなずく。


 びきっ、とアーシリアの額に、血管が浮かぶ。


「ぶ、無礼を承知で……発言……よろしいでしょうか?」


「うむ、許可しよう」


「……あなたたち、何考えてるんですか!」


 アーシリアが毅然と言い放つ。


「なんで褒めるんですかそこで!」

「うむ? なぜ褒めてはいけないのだ! 弟が王国の危機を救ったのだぞっ!」


 アルフォンス兄さんが笑顔で言うが、アーシリアは首をふるって言い返す。


「確かに、危機を救って、凄いことだとは思います! でも! そこで褒めちゃうから、殿下は反省なさってくださらないのです!」


 いや反省したんだけど俺……。


「危ないとこへ子供がいったら、きちんと注意しないといけないと、具申いたします」


「そうだぜ兄貴。あんま甘やかせちゃいかんって」


「あなたもですよデネブ殿下! なぜ依頼するときに、引き留めようとしなかったのです!?」


 今度はデネブに飛び火したようだ。


「あ、いやだって……レオンはこれくらい余裕なの、昔から知ってたし……」


「だからといってまだこの子は7歳なのです! 子供にそんな危険なお使いをさせるなんてっ!」


「す、すみません……」


 王子二人を完全に言い負かせている、アーシリア。


 それだけ、マジで俺のことを心配してくれてるんだな。


 ……反省しないとな。


「貴重な意見、感謝する」


 親父に言われて、アーシリアがさぁ……と顔を真っ青にする。


「も、申し訳ございません! 出過ぎたまねを……」


「いや、よい。おぬしだからこそ、【任せられる】」


「は? 任せられる……とは?」


 親父が今度は、俺を見て言う。


「レオン。おまえに褒美を与える」

「褒美? 魔法関連以外ならノーサンキューだけど」


「そういうな。おまえに領地を与える」

「えー、領地ぃ~?」


 そういえば成人した王子は、領地を与えられるんだったな。


「正直いらね……」

「近くに奈落の森という、強力な魔獣がうろつく森があるのだが……」


「領地くれるー! それを早くいえよー!」


 いやそれナイスじゃーん!


「へ、陛下! なぜそんな危険な土地を与えるのですか?」


「いいだってアーシリア! 強力な魔獣ってことは~。凄い魔法使うだろうし~。それに解剖してみたいし~」


 あきれたような顔になるアーシリア。


「で、ですが……そんな危ない場所に、あなたを行かせたくありません」


「うむ。ならちょうど良いな」


「は? お、おっしゃる意味が……?」


 親父が笑顔でうなずく。


「レオン。おまえにはそれと、騎士団を1つやろう。アーシリア。おまえは今日からレオン騎士団の団長に任命する」


「は……………………?」


 アーシリアが、驚愕の表情で、固まってる。


「おー、よかったじゃん。副団長から、騎士団長に出世だぜ?」


「い、いやいやいや! いやいやいやいやいや! 無理です無理ぃいいいいいいいい!」


 アーシリアが大汗かきながら首を振る。


「私には無理ですよぉ!」

「そんなことはない。きちんとレオンのたずなを握っていたじゃあないか。この子にはおまえのようなしっかりした人物が必要だ」


「いやでも……!」

「それとアーシリア。おまえも褒美をやらんとな。騎士爵をやろう」


 アーシリアが爵位を授与される。


「これでレオンとつきあっても問題なくなったな」


「いやいやいやいや! 無理です! さすがに無理! 無理です! この子のおもりなんてしてたら、命がいくらあっても足りませんよ!」


「え……やなの?」


 それはそれでさみしい……。


 うぐ……とアーシリアが言葉に詰まる。


「……ずるいですよ、殿下。そんな顔されちゃ……断れないじゃないですか」


「え、じゃあ?」


 こくん、とアーシリアがうなずく。


「あーもうっ、わかりました! 騎士団長の任、そして騎士爵、謹んで拝命いたします」


 こうして、特級ダンジョンのいざこざは、一件落着したのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


これで一区切りとなります。

次回からも引き続きがんばっていきます!


モチベになりますので、


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