75.魔神からも恐怖されるレオン殿下7歳
俺は特級ダンジョンのボス、魔神バフォメットと相対していた。
極大魔法1000発を同時に、魔神にぶち込む。
「殿下……これはさすがに……やりすぎじゃあ?」
俺の背後には女騎士アーシアがいる。
彼女は結界によって守られている。
俺の極大魔法の連発は、迷宮の壁や床を穴ぼこにしていた。
「迷宮の壁は恐ろしく固いと言われてます……それを傷つける魔法を……あんなに受けたのです……相手は木っ端みじんになってしまったのでは?」
「何言ってんだよ。この程度で壊れるわけないよ。なぁ?」
爆煙の向こうには、魔神がいた。
山羊の骨格標本のような見た目の魔神だ。
『こ、の……人間風情が……! 調子乗りよってぇえええええええええ!』
彼の背中からは8本の腕が生えている。
俺が折ったそのうちの1本が、再生していた。
『だが残念だったなぁ! 魔神は……死なぬのだぁ!』
「なん……だと……?」
がたがた、と魔神が歯を鳴らしながら笑う。
『そうだぁ! 魔神は不死身の存在なのだ……! つまり貴様がいくら攻撃しようと無意味なのだぁ……! どうだぁ……!』
「そん……な。不死身だなんて……こんなボスモンスター……聞いたことありません……」
アーシリアが声を震わせる。
俺も……震えていた。
『どうだぁ! 恐怖ただろぉ! 絶望したダろぉ!』
「やったー!」
「『ふぁ……!?』」
俺は飛び上がって喜ぶ……!
「え、不死身だって!? やったぁ! ラッキー! いいねぇ!」
「あ、あの……で、殿下? なにを……そんなに喜んでおられるのです……? 敵は、不死身なんですよ? 倒せないんですよ?」
アーシリアが困惑していた。
わかってないなぁ!
「何言ってんだ! 壊しても壊れないオモチャなんだぞ!?」
「お、オモチャって……」
俺は今までずぅっと不満だった。
身につけた魔法の力。
確かに強力なんだけど、だいたい、ワンパンで相手が壊れたり、敗北したりしてしまう。
「俺さぁ~……ずぅっと探してたんだよねぇ。おまえみたいな……いつまでも遊んでられる、オモチャを」
【草。発言が完全に敵サイド】
俺は一歩、前に出る。
ざっ、とバフォメットが、一歩下がる。
「ま、魔神がおののいてる……殿下に……?」
アーシアから指摘され、魔神が首を振る。
『こ、この
魔神は8本の腕を組み、複雑な印を組む。
『神域解放……! 【
その瞬間、地面から無数の骨の腕が生える。
それは魔神バフォメットのものと同じだ。
俺を取り囲むようにして、骨の腕が無数に伸びてくる。
やがて俺のことを完全に、骨で出来た籠のなかに閉じ込めた。
『我が神域は必殺必中の捕縛術! 中に閉じ込めたものから全魔力を吸収するもの! つまり発動させた途端に勝利は確定しているのだぁ!』
「そんな……! 殿下! 今助けにまいりま……」
ばこんっ!
「やるなぁ!」
「『なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』」
俺は骨の揺り籠から脱出する。
バフォメットと、そしてアーシリアがともに驚いていた。
『ば、ば、馬鹿な!? あの無数の腕から! 魔力を! 完全に奪い去ったはずなのに!?』
【告。マスターの魔力は敵の神域級魔法を受けて、50%を奪われました】
『ごじゅ……たった50%しか奪えなかったというのか!?』
【解。マスターの尋常ではない魔力量が、バフォメットの神域級魔法による吸収を上回っていたのです】
唖然とする……魔神。
「しっかしいい神域だなぁ……! バフォメットぉ!」
俺は知らず笑っていた。
だって新しい神域を……手に入れたのだからなぁ!
『ひぃい……! ば、化け物ぉ!』
【完全に立場が入れ替わってて草】
ぐっ、とバフォメットが歯がみする。
『だ、だ、だが……! 貴様が勝ったわけじゃない! そ、そう!
「ああそうだ……殺すことはできない……けどなぁ……」
俺は両手を広げる。
「おまえの心を折ることはできるぜ?」
【告。解析完了しました。バフォメットの神域級魔法〝
【是】
俺は
その一方で、俺は解析結果を基に、あらたな術式を構築する。
「で、殿下……なにを?」
「やつを倒す、新しい魔法を作ったのさ」
『お、
おびえる魔神に、俺は笑う。
『ひぃい……!』
「ありがとよ魔神! 新しいオモチャをくれて! お詫びにプレゼントだ! とくとご覧じろ!」
俺は手を前に突き出す。
【告。極大魔法〝
「神域解放……【
その瞬間……バフォメットの体を、
『な、なんだ……! なんだこれは!?』
「俺のオリジナル神域級魔法……
鎖がガチガチに相手を縛り上げ、球状の結界が魔神を閉じ込める。
そして……。
かっ……! と強烈な光を発生させた。
『ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』
魔神の悲鳴がとどろく。
「で、殿下……あれは、一体、どういう魔法なのですか……?」
アーシリアが恐る恐る尋ねてくる。
「敵を太陽に閉じ込める魔法だ」
「たっ!? 太陽ぅ!?」
【解。結界内部は太陽と同じ温度が保たれております。すなわち、あの球結界内は小型の太陽と同義】
やつは太陽のなかに閉じ込められ、身動きが取れなくなっている状況。
「そ、そんなの……死んでしまうじゃないですか」
「普通ならな。でもあいつは不死身だからなぁ」
【解。
「…………」
絶句する、アーシリア。
俺は太陽を見上げて、にっこり笑う。
「さぁ、おまえはあと何回死ねば、心折れて、根を上げるかな♪」
太陽のなかでは、無限に等しい火あぶりの刑が続いている。
魔神の悲鳴が最初は元気よく聞こえてきたものの……。
途中から……声に元気がなくなっていった。
そして……五分後。
『ゆるして……ください……』
「ん? なんかいった?」
『もう……かんべん、してください……』
俺は結界を解く。
しゅうぅう……と煙を上げながら、バフォメットが倒れる。
『もう……ゆるしてください……
バフォメットが負けを宣言した途端、背後にあった
俺の前までやってくると、手のひらサイズへと変化。
それを手に取る。
【告。特級ダンジョンの権利がマスターに委譲されました】
「それって?」
【解。ダンジョンクリアです】
これで特級ダンジョンが踏破されたってことか。
迷宮は突破されると消えるっていうし、ココもあと少しで消えるのかぁ……。
ごごご……! とダンジョンが揺れ出す。
「で、殿下……! ダンジョンが崩れていきます!」
アーシリアが急いで、俺の元へやってくる。
「早く脱出を!」
『死ねる……これで
「うーん、もったいないなぁ」
「『ふぇぇえ……?』」
バフォメットと、アーシリアが情けない声を出す。
俺は
【告。解析完了しました。複製しますか?】
もちろん、YES!
その瞬間……一度、ダンジョンが消えた。
……そして、また同じ場所に、俺たちはいた。
「よっし、成功!」
「で、殿下……今のは……?」
恐る恐る、アーシリアが尋ねてくる。
「特級ダンジョンをコピーしたんだよ」
「『こぴいぃいいいいいいいいいい!?』」
アーシリアとバフォメットが叫ぶ。
「そ。亜空間にスペースを作って、そこに特級ダンジョンを、まるごとコピペしたの」
【告。現実世界からはダンジョンが消滅したので、王国の危機はさりました。ここはあくまでも複製された、もう一つのダンジョン】
『つ、つまり……?』
おびえるバフォメットに、にっこりと俺は笑う。
「よろこべバフォメット! これで外を気にせず、まだまだ遊べるドン!」
さっきまでは早く、ダンジョンを突破しなきゃ行けなかったからな!
外に影響が出るから、ってことで兄さんたちから派遣されてたわけだし。
でももうこれで時間を気にせず、じーっくり研究ができる……!
『…………』
「あれ? バフォメットどうしたん?」
【告。気絶しております】
「え、気絶? どうして?」
【草】
いや草って……こたえてちょうだいよ、回答者なんだからさぁ……ま、いいけどよ。
俺はアーシリアを見上げる。
唖然……呆然と……俺を見ていた。
「お使い完了! さ、帰ろうぜ、アーシリア!」
かくして、今回のダンジョン探索は……大成功に終わったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【★お願い】
カクヨムコン挑戦中です!
フォロー、星などで応援していただけますと嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます