74.魔神との邂逅
俺は特級ダンジョンに来ていた。
落とし穴にはまった女騎士アーシリアを助けたところ、偶然ダンジョンボスの部屋を発見。
「で、この向こうにボスがいるんだな?」
目の前には巨大な金属の扉があった。
【是。強力な魔力の波動を感知しました】
ほほう……どんなものだろうか。
どんな魔法使うだろう……たのしみ!
「で、殿下……本当に参られるのですか?」
アーシリアが不安げに問うてくる。
「うん。どうして?」
「……魔法適正の低い私でも、感じます。この扉の向こうに……強力なモンスターがいるということが」
かたかた……とアーシリアが震えている。
そんなに怖がるもんかね。
【解。常人がこの場にいたらおびえて当然です。特級ダンジョンのダンジョンボス。通常のボスですら強力なのが多いのですから】
「だいじょーぶだって」
俺はアーシリアに笑いかける。
「俺がついてるからさ」
「あ……う……」
かぁ……とアーシリアが顔を赤くしてうつむく。
ん? どうしたんだろうか、なぁ?
【解。うーわーきーもーのー】
え、何きれてるの?
【否。切れてないです】
ま、いっか! 魔法のほうが大事だしな!
【解せぬ】
俺はアーシリアとともに、ダンジョンボスの扉の前に立つ。
「殿下。お下がりください。この重そうな扉は、お姉ちゃんが」
俺は魔力の塊を手から放出する。
ばごんっ……! という音とともに、扉が吹っ飛んでいった。
「ん? どうした?」
「ああ……いや……もうなんでもないです……」
げんなりと肩を落とすアーシリア。
ここまで遠かったからな、疲れてるんだろうか。
【解。マスターのせいじゃぼけぇ】
やぐされてるなぁムネヒラさん。
俺は部屋のなかにはいる。
ホールのような場所になっていた。
空を見上げるとどこまでも闇が広がっている。
部屋の奥に、巨大な結晶がおいてあった。
【解。あれは
クリスタルが輝くと、そこに一匹のモンスターが現れた。
小型モンスターだ。
人間みたいだが、山羊の頭と下半身を持つ。
特徴的なのは、上半身が骨でできており、背中から8本の腕が生えていた。
「う……ぐ……うぅう……」
アーシリアがその場に倒れる。
「なにがあった?」
【解。
俺は結界で、アーシリアを包み込む。
魔力が吸われることがなくなったが、しかし立ってられないようだ。
「殿下……」
「だいじょぶ、行ってくるよ」
「……ご武運を」
俺は山羊頭のもとへと向かう。
『ほぅ……この
かたかた……と山羊が笑う。
「まぁ、魔力量にはちょいと自信があるんだ」
『ふん……不遜な餓鬼だ。だが……面白い……この
「ほぅ……魔神……?」
【解。上位の魔物が独自に進化して、神に近しい存在となったもののこと】
魔王とは違うのか?
【是。魔王は、神に力を与えられて、神に近しい存在となったもの】
つまり自力で魔王になったやつって、感じ?
【是。とはいえ魔神の場合は、魔王と違って強さはピンキリです】
いや……でも……。
「魔神……自力で……魔王になったやつ……か……」
バフォメットは俺を見て、にやりと笑う。
『くくく……! 魔神と知り、おびえているのか! 子羊のように、ぷるぷると震えよってぇ!』
「で、殿下! 逃げましょう! 相手は恐ろしい化け物です! 逃げて良いんです! おびえていいんです!」
俺は……。
「面白い!」
「『は……?』」【やれやれ……】
魔神とアーシリアが、ぽかんとした表情になる。
唯一、
「独自に魔王になった存在!? すげえ! 是非とも……近くで観察したいじゃあないか!」
俺はやつが、欲しくてたまらなかった。
神に進化したって? どうやって? 何が条件となってるんだ? ああもう! 知りたいこと多すぎる!
「なぁおまえ……俺のペットにならないか? 生活は保障するぜ?」
びきっ……! とバフォメットの体がこわばり、何かが壊れる音がする。
『……調子に乗るなよ、餓鬼がぁ!』
ごごご……と魔神の体から魔力が立ち上る。
『もうよい。殺す。貴様も、後ろの女も……鏖殺だ!』
魔神は体を浮かせると、8本の腕を広げる。
その腕が、恐ろしい早さで、俺の元へと飛んでくる。
がしがしっ! と俺の両腕両足を拘束し、さらに体中に腕が巻き付く。
『【
しゅうう……と音を立て、俺の体から、凄いスピードで魔力が吸われていく。
【告。吸命魔手とは、触れた相手の魔力を凄まじいスピードで吸収する魔法です】
『ふははは! この手に捕まれたものは、一瞬で人間の持つ魔力を吸い尽くす! つまり触れただけで相手は即死ということ!』
「殿下! 殿下ぁあああああああ!」
『くはははは! この
「すげえ……!」
「『ふぁ……!?』」【やれやれpart2……】
俺は体中に巻き付いてる、骨の腕を観察する……!
「聞いたことない攻撃魔法だ! 属性魔法でもないし……固有魔法か? すげえ! 触れただけで魔力を吸い取る? どんな理屈だよ!」
『「いやいやいやいや!」』
魔神とアーシリアがそろって首を振る。
『き、貴様!? なぜ生きてる!? 触れただけで全魔力を吸い取る魔法だぞ!?』
「え、でも全然俺元気だぜ? まだ1割も吸われてないんじゃないかなぁ?」
【解。吸収されたのは、マスターの全魔力の0.001%ほどです】
『なにぃいいいいいいいいいいいい!?』
驚愕する、バフォメット。
『ふ、ふ、ふざけるな! なんだその規格外の魔力量は!?』
【解。マスターはまだ7歳。魔力を使えば使うだけ魔力量が増える時期。この時期にマスターは神域級魔法をバンバンと使い魔力を消費し、さらに神の
おお、ムネタイラさんが解説者としての役割を全うしている。
「なー、この腕一本もらってもいい?」
『え?』
「8本もあるなら1本くらいいいよね?」
『いいやちょっと……』
「えいや」
ばきっ!
『うぎゃぁああああああああああ!』
残り7本の腕が取れる。
俺は手に入れた魔神の腕を、亜空間に収納する。
「あとでしらべよーっと」
『お、
魔神が俺を見て、驚愕の表情を浮かべる。
「なー、魔神よぉ」
ふわ……と俺の体が浮く。
「これで終わりなわけ……ないよなぁ?」
俺は、体の周りに、魔法を展開。
無数の魔法陣が出現し、そこから極大魔法……
『ひっ……!』
「魔神を名乗ってるんだ? まさか触っただけで相手の魔力を吸う……ってだけじゃあないだろ? なあ……見せてくれよ……
俺は
ずどどどどどどどおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
「あははは! なぁ魔神! まだまだ遊ぼうぜ! この程度じゃあ終わらせないぞぉ!」
【告。マスターのほうがよっぽど魔神してて草】
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