56.大魔王の帰還
俺は妖精界での用事を終えた。
「うっし、じゃあ帰るかー」
「「「はーい!」」」
Aクラスの面々と、そして妖精を伴って、元の世界へと戻ろうとする。
妖精王ラスティローズが恐る恐る手を上げる。
『大魔王様、ご帰還なさると言うことですが、どのようにしてお帰りになりますか?』
「来た時みたいに空間をズバッとぶったぎろうかなって」
『く、空間を斬るぅううううううう!?』
びっくり仰天の表情を浮かべる妖精王。
あ、そっか。
妖精界って、聖域って場所からしか普通出入りできないんだっけ。
【是】
『なるほど……しかし大魔王様なら、転移魔法を使えばよいのでは?』
「あいにく転移魔法は習得してなくてな」
『あたしは使えますよ?』
俺はラスティローズをがしっ、と握りしめる。
「まじで!? 使えるの!?」
【告。マスター、大魔王がとどめを刺すみたいな感じになってます。抑えて抑えて】
おっとしまった。
しかし大魔王呼びが定着してるななんか……。
【告。名は体を表すといいますから】
たしかに、
【否。それはマスターがつけた不名誉な名前に過ぎません。私は叡智と豊満の神ミネルヴァ】
ダジャレと貧乳の神じゃなくて?
【告。極大魔法、
ごめんって怒るなよ。バインバイン。
やっぱりバインバインは荒ぶる神を沈める呪文のようだ。
「んで、転移魔法。おまえ使えるのか、妖精王?」
『はい。もっとも対象は1人だけですし、行ったことのある場所のみ転移可能ですが』
それでも! 転移魔法!
ウルティアも彼女が持っている書物にも書いてなかった!
欲しかった魔法が……手に入るぅ!
【告。転移魔法を習得しました】
あれ?
俺の全能者のスキルって、魔法を一度見ないと習得できないんじゃなかったのか?
【解。マスターに名付けられ、ミネルヴァ・バインバインとなった私は、存在が進化したのです】
え、そんな名前だっけ……?
ミネルヴァ・モノリスだろ?
【解。ミネルヴァ・バインバイン・ムネデケーナとなった私は、新たな能力として鑑定スキル(最上級)を習得しました】
おお、鑑定スキルか! しかも最上級!
あと名前なんか違いません?
【告。鑑定スキル(最上級)を獲得したことで、対象の鑑定を行えば、魔法の使用をみずとも習得可能となりました】
ムネデケーナさんに新たな力が……!
「つまり妖精王を見ただけで、こいつが持ってる転移魔法を習得したって訳か」
『ええー!? す、すごい……! さすが大魔王様!』
ふむ……けれど1人しか転移できないんだよな?
【問。ミネルヴァの胸は?】
え、何急に……?
【問。ミネルヴァの胸、は?】
まない………………バインバイン。
【告。ミネルヴァ・モノリスに進化したことで、〝魔法改良〟スキルを獲得しました】
魔法改良だって!?
【解。魔力を消費しますが、習得済みの魔法の効果を、自由に改良が可能となります】
このスキルは、1つの魔法を改良して、威力を底上げしたり、範囲を拡大したりできるようになるらしい。
【是】
す、すげえじゃん……!
今まで以上に自由に魔法で遊べるじゃんかー!
【問。ミネルヴァの胸は?】
ビッグボイン!
【是。イグザクトリィ!】
長くなったが、俺は見ただけで魔法を習得でき、さらに自由に魔法を改良できるようになった!
「よっし、じゃあ帰るぞ!」
【告。転移魔法に改良魔法を使用し、転移対象人数を変更しますか?】
もちろん、YESで!
一瞬で、目の前の光景が切り替わる。
「あら~。学校に戻ってきましたね~」
引率のアズミ先生がほわほわした調子で言う。
「すごい!」「さすが殿下!」「やっぱり殿下はすごいですー!」
クラスのみんながきゃあきゃあと歓声をあげる。
「……みんな、感覚麻痺ってない?」
同室のシャルルークが、疲れたように溜息をつく。
「あきらめな、シャルルーク。みんな今回の旅で、坊主のやばさを体験しまくってるんだよ」
皇女プリシラが、ぽんぽんとシャルルークの肩をたたく。
俺たちがいるのは、学校の校庭のど真ん中だった。
【告。転移魔法には転移先の強固ないじめー時が必要となります】
あ、そういえば学校以上のイメージしてなかったわ。
【告。そのため私が代わりに、学校の校庭をイメージしておきました】
【どやぁ……】
「レオン!」
「おお、おば……校長せんせえ」
親父の妹であり、この学校の校長でもあるハートフィリアさんが、俺たちの元へかけつけてきた。
「心配したのよレオン。あなたたちのクラス全員が教室にいないから、集団失踪していたのかと……」
あ、そういえば出かけること学校に告げてなかったな。
「ごめんちょっこし妖精界に行ってた」
びしっ、とハートフィリアさんが硬直する。
え、どうしたの?
俺、何かしちゃいました?
【告。マスターの病気が発症しました】
病気って何!?
【解。俺何かやっちゃいました病。己の行いのすごさを自覚せず、周りに何かやりましたかと聞く、という症状が発生します。なお根治不可能】
がしっ、と校長が俺の肩をつかんで、揺する。
「本当なの!? 妖精界に行ったの!?」
「う、うん。ほら、見てよ」
背後にはラスティローズを含めた、妖精の大群がいる。
「えぇえええええええええええええええ!?」
ぺたん……と校長が尻餅をつく。
「よ、よよ、妖精!? しかも……あの翅! 妖精王ラスティローズ!?」
「おう。え、どうしたの?」
「どうしたのじゃないわ! 妖精界が人間界へとやってくるなんて、前代未聞よ!」
「え、そうなの?」
【是】
どうやらそうらしい……。
え、なんで教えてくれないの?
【解。聞かれてなかったので】
指示待ち人間め。
【否。私は正妻です】
指示待ち正妻貧乳め。
【告。極大魔法の使用を】
はいはいバインバイン。
ハートフィリアさんは声を震わせながら言う。
「な、なんでここに……妖精王が?」
すると妖精王が前に出て、胸を張って言う。
『あたし以下妖精達は、大魔王レオン様の子分となったのですっ!』
あんぐり……とハートフィリアさんが口を開いて、驚いている。
ううーん……。
「なぁ、ハートフィリアさん。さっきから何に驚いているの?」
すると彼女は立ち上がると……。
「全部によぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
校長の慟哭は、学校中に広まったそうだ。
かくして、俺は妖精界でのミッションを終え、無事、学校に帰ってきたのだった。
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