53.獅子座竜星群《レオニーズ》
俺は妖精王ラスティローズの放った
ブラックホールを魔法で発生させ、そこに閉じ込めるという魔法だ。
脱出不可能といわれるこの空間から、俺は脱出するため、研究成果を発表することにする。
すなわち、俺もまた、神域級の魔法を発動させると言うこと。
『な、に……言ってるの。無理に決まってるわ!』
魔法で作られた宇宙空間にて。
妖精王はふるふると首を振る。
『神域級魔法は! 魔王となっただけじゃ使えないの! 与えられた神の力を、長い年月かけて、修練を重ねた結果に到達できる! それが神の領域!』
びしっ、と妖精王が俺に指を向ける。
『たった7年ぽっちで習得できる魔法じゃないのよ!』
「ん? 神域のこと知ったの、7年前じゃないぞ」
『は……?』
俺は思い出しながら言う。
「俺が神域級魔法の存在を知ったのは、魔王ウルティアと出会ったときからだ。つまり5歳のときだよ」
がくん……と妖精王が、顎を大きく開く。
『じゃ、じゃあ……2年ぽっちで、習得したの? あ、あたしが……ウン百年かけて取得したものを?』
「おうよ」
とはいえ、まだ自力では発動できないがな。
【告。そこで登場、正ヒロイン】
そう、俺の神域級魔法には、複数の大魔法を同時に展開させる必要がある。
魔道具師イヤミィから、発想を得た。
あいつは、1つの魔道具をゼロから作るのでなく。
既存の魔道具を複数組み合わせて、新たなる1つの、魔道具を作った。
つまり、新しい魔法を、既存の魔法を組み合わせて、作る、という発想。
「いくぞ
【是】
俺は空間収納していた聖剣を取り出す。
女神カーラーンからもらった、この剣。
今まで見てきた、習得してきた魔法を……展開。
【極光竜】。触れると消滅する、極大の光が集合して作られたドラゴン。
【神の雷】。広範囲、高威力、最高速の雷。
そこに、俺が初めて出会った魔王の……獅子のイメージを合わせ。
そして、俺の力を100%反映できる、この聖剣を依り代とする。
俺一人では、神の領域には、たどり着けない。
今は、まだ。
でも今は、一度目の異世界と違って、多くの出会いと才能に恵まれた。
だから、これは。
俺が二度目の人生で手に入れたものの、集大成。
一度目に、手が届かなかった……憧れの、到達点。
「【
俺と
俺は聖剣を天高く掲げる。
刃を中心に、極大の魔法陣が展開。
『違う……これは、扉?』
呆然とする容易西欧。
俺は剣を捻ると、光の扉が……解放される。
そこから召喚されたのは……。
『バオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
超巨大な、雷の竜だ。
青白く帯電したその竜の関節部分には、極光を固めたような、光点が存在する。
それは星のように見える。
星と星をつなぎ合わせ、竜を形どる。
まるで星座のような、そんな……。
『きれい……』
美しさと、そして破壊力を秘めた……。
俺、オリジナルの魔法。
神域級魔法【
『この魔力……この力の波動……あたしには、わかる。魔王だから……わかるわ。これが……本物の、神域級魔法だってことが……』
脱力して、ふらふらと落下していく妖精王。
俺は彼女を手で受け止める。
『ほ、本当に……2年で、完成させるなんて……』
「まー、二年ってゆーけど、それは準備期かんっつーか構想を練ってた期間で、完成させたのは、極光竜をおまえんとこで見てからだぞ」
『………………………………』
「妖精王? おーい、どうした?」
【解。驚きのあまり失神してます】
人って驚いて失神するんだなぁ。
「さて、と。さーって……とぉ」
俺は巨大な雷の竜を見上げる。
俺が作り上げた、神の魔法。
なんつーの……なんつーか……うん!
「素晴らしい充実感! 達成感だなぁ!」
二度目の人生は、辛い日々なんてひとつもなかった。
でも、今日は、この瞬間は、二度目の人生の中で、トップに入る幸福感! この充実感!
【告。マスター。作って終わりじゃないですよ】
「そうだったな。魔法はやっぱり。使ってこそ! それでこそ、俺が憧れた魔法使いってもんよ!」
俺は右手を前に出す。
「
【
その瞬間……。
星をつないでできた雷の竜は、体をぐぐっと縮ませると……。
ビゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
全方位に向かって、超高密度の雷が照射される。
それはレーザー砲とでもいうのか。
光点から射出された無数の最強のレーザーが、魔法で作られた宇宙空間を破壊していく。
【神の雷の範囲攻撃に、極光竜の消滅の力を付与した、宇宙すらも破壊せしめる、純粋なる破壊の魔法……マスター。オモチャにしては、少々危険すぎません?】
「ん、まあ、だから使い時は選ぶって。でもほら、今日はさ……良い実験台があったからさぁ」
【告。さすがです、マスター。さすがの、
やがて宇宙は終焉を迎える……。
ぱぁんっ……! という、風船が割れたような音とともに、俺は外へと出た。
「ふぃー……ん? あれ? 妖精王のいた、巨大樹は?」
俺がいるのは、巨大樹の前に広がっていた、草原……。
草原?
「荒野じゃん」
【解。妖精王の
なるほど~。
「れ、レオン君!」
外で待機させておいた、魔法学校のAクラスの面々が、そこにいた。
同室のシャルルークが、俺の元へ駆け寄ってくる。
「大丈夫!? なんか急に黒い球体が現れたと思ったら、一瞬で周囲のものが消えて、とおもったら、レオン君が出てきたけど……」
ぎゅっ、とシャルルークが俺を抱きしめる。
幻惑魔法で姿を変えているから、モノリスの胸だけど。
【告。マスター。モノリスの胸とは? もしや私の胸のことではありませんよね? その場合は慰謝料の準備をしておいてください】
はいはい、バインバイン。
【告。マスター、雑にバインバインさせるだけで、私の機嫌が取れると思ったら大間違いです。体力回復用に回復魔法をかけておきました】
ちょろな~胸平神は。
「いやぁ……やばかったわさっきの……よく生きてたな坊主。さすがだぜ」
皇女プリシラが、感心したようにつぶやく。
「おかえりなさい、レオン殿下~」
「「「殿下! おかえり~!」」」
アズミ先生と、クラスメイト達が、俺を出迎える。
俺はにかっと笑って答える。
「おう、ただいま」
すると手の中で眠っていた妖精王が目を覚ます。
「おう、起きたか」
『…………』
妖精王は空中で……土下座の体勢を取る。
『すみまっせんでしたぁあああああああああああああああああああああああ!』
なんだなんだ、急に土下座して騒ぎ立てて。
『あたしの負けです! 負けを認めます! だからどうか! あなた様の子分にしてくださいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
なんだ急に、子分とかいってきたぞ……。
いや、でもまあ、都合が良いか。
「「「さすがです殿下! 妖精王すら、配下に加えてしまうなんて!」」」
【告。こうして大魔王レオンの驚異的力を前に、魔王ラスティローズは完全敗北&屈服するのでした】
誰が大魔王やねん。
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