47.妖精に会いに行こう



 俺は魔法学校に通っている。


 ひょんなことから、所属するAクラスを、教えることになったのだが……。


 場所は、訓練室。


「【火球ファイアー・ボール】!」


 生徒の一人、ツインドリルさん(名前知らん)の手から炎の玉が出る。


 どがぁんっ!


 訓練室の壁にひびが入った。


「やりましたわ! レオン殿下ー!」


 ツインドリルさんが俺に抱きついてくる。


 お姉様なのでおっぱいがおっきい。


【問。マスター、私もお姉さんなのですが?】


 ミネルヴァ・モノリスが俺に問うてくる。


【問。それが正式名称ですか? ストおこしますよ。コンプラ委員会に訴えますよ?】


 まあいいじゃん。名付けで進化したんだから。


【解せぬ】


 しかし……ううーむ……。


「どうしたの、レオン君?」


 同室の少女、シャルルークが首をかしげる。

「いや……シャルルーク。魔法打ってくれ」

「うん。【風刃ウィンド・エッジ】!」


 風邪の刃が発生して、訓練室の壁に亀裂を生じさせる。


「足りない……全然足りないなぁ……」


「「「?」」」


 クラスメイト達が、俺の元へと集まる。


「坊主。足りないってどーゆーことだい?」


 プリシラ皇女が首をかしげながら問うてくる。


「魔法の威力が、足りないなぁって思って」


「「「いやいやいやいや」」」


 生徒達が一斉に首を横に振る。


「な、何言ってるのレオン君。十分じゃないか」


「そうですわ。訓練室は特別頑丈に作られてる。そこに傷をつけられただけでも凄いことですわ!」


 いやいや、何をおっしゃるのかね。


「ほい」


 俺は右手から火球、左手から風刃を出す。


 どがぁああああああああああああん!

 ずばぁああああああああああああん!


 爆発の炎を、風の刃が威力を倍増させ、訓練室の壁を完全に吹っ飛ばした。


「まー、こんくらい普通はできないとな」


「「「いやいやいやいやいやいや!」」」


 ぶるぶる、とみんなが首を振る。


「ありえないだろ! 2重詠唱って!」

「え、できるでしょ。無詠唱を身につけたら、誰でも?」


 プリシラがあきれながら言う。


「あのなぁ、坊主。無詠唱魔法が超高等テクなんだよそもそも。それを二つ同時に発動させて、この威力……はっきり言って異次元の強さなんだよあんたは」


「ふーん……でもこれくらい出来てもらわないと困るよ」


 初歩も初歩だし。


「つってもなぁ……」


 何でこの子ら、壁を破壊できないんだろう。


 おしえて、ミネルヴァ・モノリスさん。


【…………】


 あら、怒った?


【解。怒ってますん】


 ますんってなんだよ……。

 えっと……す、素敵な大人のレディの、ミネルヴァさん? お答えいただけるとうれしいんですがー……。


【問。ミネルヴァの胸は?】


 ええー……。


【問。ミネルヴァの、胸は?】


 ば、バインボイン。


【解。彼女たちは魔力の絶対量が少ないことが、威力の低下を招いています】


 あ、なるほど。じゃあゼストみたいに、一度子供に戻して、魔力増強訓練を受けさせればいいのか。


【否。その訓練法法は、人間にはやめた方が良いです。ゼストは獣人、人間よりも体のつくりが頑丈でした。だから魔法による成長・退化の負荷に耐えられました。しかしただの人間であるAクラスたちには、無理です】


 なるほどなぁー……


 魔力を増やさないと威力が出ない。

 でも人間だと、子供に戻す裏技がつえないってことか。


 叡智神ミネルヴァ、何か手はないか?


【解。妖精との契約を結ぶことを推奨します】


 妖精と、契約?


 俺は叡智神ミネルヴァより得た知識を、Aクラスのメンバーに告げる。


「聞いてくれ、みんな」


 なんだなんだ、とツインドリルさんをはじめとした、Aクラスのメンバーが集まる。


「これからおまえ達には、妖精と契約してもらう」


「「「????」」」


 まあいきなり言われてもそうなるわな。


「妖精っていいますと、この世界に住まう、小さくて羽の生えたあの?」


 ツインドリルさんが手を上げて言う。


「その通り。やつらは精霊と密接な関係にある」


 精霊は、この世界にいる、見えない存在。魔法を使う際は、精霊に魔力を捧げている。


 一方で妖精は、目に見える存在。元々は精霊だったものが、この世に具現化した存在。上位精霊とも言われている。まあようは精霊の凄い版の一種だ。


「大人になると魔力量は増えなくなる。が、消費魔力量を減らすことはできる。妖精と契約し、加護を得ることでな」


 ようするに、専属契約を結ぶのだ。


 魔法を使う種類を限定することになるが、その分魔法の消費にかかる魔力量が減り、少ない魔力で高威力の魔法が使えるようになるって訳。


「「「おお! すごい! さすが殿下! 博識です」」」


 まあ全部叡智の神から引き出した知識なんだが。


 って、そうだ。俺がこのことを、みんなに伝えて良かったのか。


【是。私はマスターの一部ですから。マスターのモノというかたちで知識を披露してもかまいません】


 おお、器の大きな女だなぁおまえ。


【どやぁ……】


 ……胸は小さいけど(ぼそっ)。


【は? 胸は大きいですけど?(半ギレ)】


 はいはい、バインバイン。

 バインバイン。


【問。マスターはその程度で私の機嫌が直るとでもお思いですか。妖精の住まう場所までのルートはすでに検索しておきました】


 機嫌直し取りますやないかーい。 


「レオン君。妖精と契約するのはわかったけど、具体的に妖精がどこにいるのかわからないよ」


 シャルルークが手を上げて言う。


「安心してくれ。妖精の居場所はもうつきとめた」


「「「おお! すごい!」」」


 プリシラが感心したようにうなずく。


「妖精っていや、めったに姿を現さない、どこに住んでるか不明で有名なのに、それすら見つけ出すなんて。やっぱり坊主は天才だな!」


「どもども。んで場所だけど……【精霊界】って場所があるらしい。知ってる?」


「「「知らなーい」」」


 ですよねー。


「精霊と妖精の住まう世界があるらしい。んで、そこにいる【妖精王】ってやつに話をして、妖精との契約をしないといけないんだってさ」


 妖精王かぁー。

 どんなやつだろう。


 強いやつだといいなぁ! バトルしてみたいなぁ! 妖精の魔法見せてくれないかなぁ!


【悲報。妖精王、終了のお知らせ】


 かくして、俺は妖精王に謁見することになったのだった。

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