46.授業でも無双しちゃう



 俺は学校に入学した。


 Aクラスに所属することになったのだった。

 今は授業中。

 魔法の基礎学の授業!


 さてさてどんなことを教えてくれるんだろう~。


「今日は魔法陣のおさらいをしましょ~」


 担任のアズミ先生が前に立っている。

 俺は教壇の一番前に座っているので、彼女の顔が見えない。


 おっぱいが、でかすぎて。


【ケェーーーーーーーーーーーーーー!】


 叡智の神が怪鳥みたいな声を出した。

 神は鳥だったか……。


「魔法の発動には~、呪文の詠唱と、魔法陣の構築、二つの方法があります~」


 それがこの世界での一般論だ。

 魔法陣を使えば、長ったらしい呪文を使わずにすむ。だが準備が結構居る。


 一方で、呪文の詠唱は、準備は少なくて良いが、長ったらしい呪文を覚える必要がある。

 と、この世界では思われてる。

 ちなみに魔法陣は付与魔法とは違う。

 魔法陣は地面にしか展開できず、道具に付与することはできない。


「今日はこの魔法陣です~」


 アズミ先生がかかかっ、と魔法陣を描く。


 そして黒板に完成したのは……。


「うわ、ぐっちゃぐちゃだな……」


 無駄な式や図形がえがかれた、なんとも汚い魔法陣だった。


「では問題です~。この魔法陣は、何の魔法でしょうか~?」


 いや、いろいろ変な要素があるけど、下級火属性魔法の【火球ファイアー・ボール】だろ?

 

 なあ、叡智神ミネルヴァ


【だいたい胸の大きさで女の価値が決まるなんてナンセンスです。私は言いたい。女は胸だけにあらず。あふれ出る知性、そう私には胸は無いけどこの膨大な知識量と知性があるから】


 おーい、ミネルヴァさーん?

 どうやら胸の大きさにとらわれてるご様子……。


「ねえねえあの魔法陣わかる?」「むずかしいわ……」


 あれ? 周りの奴ら、まだ答えてなかったの?


 こんなの見りゃ一発だろうに……。


「はい」


「じゃ~、レオン殿下~」


 俺は立ち上がって答える。


火球ファイアー・ボール……だよな」


「正解です~」


「「「おおー! すごい! さっすが殿下ー!」」」


 いやいや、感心されても困るんですが……。

「あの、先生? マジでこれでいいの?」

「と、言いますと~?」


 アズミ先生が首をかしげる。

 これはマジでわかってない気がする。


「その魔法陣、間違ってるぞ」

 

 ざわ……。ざわ……。


「あら~? 間違ってる~?」

「というか、色んな無駄なもんが入ってて、魔法の発動を阻害してる。ちょっと直して良い?」


「どうぞ~」


 アズミ先生が俺に場所を譲ってくれた。

 俺は彼女からチョークと黒板消しを借りる。

 浮遊魔法でそれらを動かす。


「「「!?」」」


 先生達なんか固まってる?

 まあいいや。


 魔法で黒板消しとチョークを複数同時に動かして、新しい魔法陣を完成させる。


「ほい完成。どう? これのほうがすっきりしてるだろ?」


 だいぶ無駄な式や図形を削って、シンプルな魔法陣になったと自負してる……。


「「「す、すごーーーーーーーーい!」」」


 おお、生徒達から歓声があがる。

 うんうん、この方が無駄がないって気づいてくれたか……。


「殿下凄い!」「今のふわーって浮く魔法! 凄すぎる!」


 え、そっち!?


 生徒達が拍手する。


「物を浮かせる魔法なんてすごい!」

「しかも詠唱も杖もなく魔法を発動させるなんて、すごい!」


「さすが殿下! 魔法の天才です!」


 ええー……そこに反応してもらいたくなかったんだけど……。


「ほ、ほらみんな見てよ! この美しい魔法陣を!」


「「「絵がきれいですね!」」」


 そこ!?


 どうなってる叡智神ミネルヴァさん……?


【解。マスターの作った超効率的な魔法陣は、高レベルすぎて、彼女たちの理解力ではすごさがわからないのです】


 マジかよ……!?

 どんだけ魔法のレベルが低下してるの……?


【解。現世は長く平和な時代が続いた結果、魔法のレベルもまたかつてより低下しているのです】


 1度目に俺が異世界に転生した時代から、今は未来の世界。


 あのときのようにモンスターが跋扈してない世界だから、戦う必要もなくなり、戦う技術でもあった魔法は廃れていった……。


 という理屈らしい。まじかいな。


「…………」


 アズミ先生はじーっ、と火球の魔法陣を眺める。


 そして……。


「すごいです、殿下~」


 先生が俺のことを、正面からハグする。


 あ、頭にスライムが!


【ケッ! スライム……ケッ! 私だって……ケッ! キングスライムくらいあります!】


 いや、どっちかっていうとモンスタ●ファームのモノリス(板)……。


【問。誰が板ですか? え、誰が板なんですか? 板ってなんですか? え?】


 どうどう。

 ほら、バインバイン。

 叡智の神はバインバイン。


【ふぅ……どやっ】


 単純~。


 アズミ先生はぎゅぎゅっ、と俺をハグする。

「さすが殿下です~。この魔法陣、威力が倍に、効率も倍になる、すごい革新的な魔法陣です~」


「「「えー!? すごーい!」」」


 先生も時間をかけて理解してくれたようだ。

「おいおい、倍じゃないよ。威力は10倍だよ」


「あら~! まあまあ~! すごい~!」


 ぎゅーっ、と先生がハグする。


 いやいや、あんた教員でしょうが……。


「レオン殿下は本当に博識ですね~」

「これくらい当然だろ」

「素晴らしいです~」


 頭の上にスライム2個乗ってるので重い……。


【マスター! 私肩がこります! スライムが常に2個乗ってるので、肩がこりますー!】


 モノリスさんが戯れ言をおっしゃっていた。

【問。モノリスってだれですか? 新キャラですか? よもや私のことではありませんよね?】


 胸平神モノリスさんが怒ってた。


【ああ! なんか名付けられてレベルが上がってます! 理不尽! 不名誉! こんな称号はいりません!】


 なんか無意識に名付けしてレベルが上がってるみたいだ。マジかよ。


「レオン君って本当にいろいろ知ってるんだね。すごなぁ~」


 俺の席の隣に座っていた、同室の少女シャルルークが目を輝かせる。


「いっそのこと坊主に習いたいくらいだぜ」


 プリシラ皇女がうんうん、とうなずきながら言う。


「それは良い提案ですね~。そうしちゃいましょうか~」

「先生!?」


 急にどうした!?


「私よりも~。殿下の方がいろいろ知ってそうですし~。基礎魔法の授業はお任せしたいな~って」


「いやいやいやいや! 俺生徒ですよ? 7歳児ですよ?」


「でもわたしなんかよりずぅっと賢いですし~。みんなのレベルが向上するなら、殿下にお任せしたいな~って」


 マジかよ……。


「みんなはどう思う~?」


「「「だいさんせー!」」」


 ええー……マジで言ってるの?


「校長先生に聞いてみないとですが~。たぶん大丈夫だと思いますよ~」


「は、はあ……ま、まあ俺は別にいいけど」


 こうして、なんだか知らないが、俺も一部授業で、生徒達に魔法を教えることになったのだった。


 まあ、魔法に興味持つやつが増えるのはいいことだし、俺の復習にもなるから、いいけどね。



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