39.いざ、魔法学校へ。さっそくやらかす



 いよいよ魔法学校へ行くことになった。


「おおい、まだかよー」


 屋敷の前にて。

 俺は馬車に乗り込もうとしている。


 だが……もう一人の、同行者がまだこない。

【問。同行者とは?】


「なんか俺の、学校に居る間のお手伝いさんを決めるっつって、騒いでるんだ」


 魔法学校は、俺の屋敷から随分と離れた場所にある。


 学校に通っている間、寮に住むことになるらしい。


 メイドのミリアがまず『自分が当然ついて行く』と主張。


 そこへ奴隷メイド30人が猛反対。


 誰が俺と一緒に行くかでめちゃくちゃもめてるらしい。


「人気者だな坊主は」


 ドワーフのタタラが、やれやれ、と首を振る。


「俺がいない間のギルドは、イヤミィとタタラに、任せるわ」


「おう」「お任せください殿下」


 二人とも腕は良いし、イヤミィは鍛えていった結果、結構使えるようになったからな。


「まー何かあったら連絡くれ」


 と、そこへ……。


「坊ちゃまー!」


 茶髪で小柄なメイド、ココが、こっちへかけてくる。


「おっまたせしましたー!」


「結局おまえになったのか?」


「はいっ! 不戦勝で! ぶいっ」


 不戦勝?


【解。どうやらメイドたちでバトルロイヤルを繰り広げた結果、全員が倒れ、残っていたのは最初から戦いに参加しなかったココのみとなってます】


「ず、ずるい……」

「さあさあ坊ちゃま参りましょう。いざゆかん、王立魔王学校へ!」


 俺たちを乗せた馬車が出発する。


「わわっ! すごいですよ坊ちゃま!」


「んー? どうした?」


「この馬車、全然揺れがありません!」


 馬が引いてる、荷台。

 荷台の車輪には、俺が考案した【タイヤ】がついてる。


「ゴムの生成に成功したからな。タイヤ作ってみた」


「タイヤ? ああ! あれですね。坊ちゃまがこの間おやつに作った、たいやきってやつのお仲間ですかっ?」


【ぶほぉー!】


 叡智神ミネルヴァが吹き出す。


 え、なに?

 どうした急に……?


【た、鯛焼きと……ぶ……タイヤ……間違えるなんて……なんて、高度なギャグを……!】


 いや別にギャグじゃないと思うけど……。


「坊ちゃまが作った凄い物のおかげで、馬車が快適なんですねー! すごい! 凄い坊ちゃまー!」


「おいおい快適だからって寝るなよー。いちおう、おまえは俺の従者、お手伝いさんってことで来てるんだから」


「わかってますよ! 絶対寝ませんって!」


 1分後。


「ふごー……ふごー……むにゃむにゃー……」


「そっこーで寝てるし……!」


 自由人過ぎるぞこいつ……。


 まあ人が眠れるくらい快適な馬車を作れたってデータがとれたからよしとしよう。


【問。マスターはタイヤを開発したということは、この次を見据えてのことですか?】


「もちろん。次は自転車、そんで自動車ってレベルアップさせてくつもりだよ」


【問。その心は?】


「え、魔法でいろいろできるようになるの、楽しいじゃん?」


 科学が発展してないこの世界で、魔法だけでどこまで再現できるのか……。


 考えただけでわくわくしてこない?


【否。わたしはマスターのような魔法変態ではありませんので】


 魔法変態とはなんだ。俺は普通だ。


 恐ろしく静かな馬車はまっすぐ街道を進んでいく。


「ふがっ! くわぁー……坊ちゃま~。おふぁよーふぉふぁいふぁーふ」


 あくび混じりにココが言う。


「おまえ寝るなよ、従者のくせに」

「従者だって寝ますよ、人間だもの!」


 へりくつメイドめ。

 まあいいけどさ。


「ところで坊ちゃま。王立魔法学校ってどこにあるんですか? 王都?」


「いや、【ジョーサン】って街。別名、学園都市」


「学園都市……?」


「ああ、冒険者学校、騎士学校などをはじめとした、色んな学校が一つの街に集まってるんだってさ」


「はえー……すごいですねぇ。坊ちゃまは魔法使い達の学校、魔法学校へ行くってことなんですね?」


 そういうこと……。


 ……。

 ……あれ、叡智神ミネルヴァ


【はい】


 ココからの質問に、答えなくて良いの?


【是。わたしが答えるのは、マスターからの質問だけですから】


 なるほど、叡智神ミネルヴァは俺のスキルだからな。


【是。ミネルヴァはマスターの女ですから】


 え? なぜ言い直した?


【解。重要なので】


 そ、そうかな……?


【告。王立魔法学校は女生徒、女教師の割合が非常に多いのです】


 え、そうなの?


【是。一般に、魔法適性は女性の方が高く出る傾向にあります。王立魔法学校に集まる人材は、どれも高い魔法適性を持つ。つまり自然と女が多くなるのです】


 はぁー……なるほどなぁ。

 え、でも俺男だけど、魔法適正SSSだぞ?


【草】


 いや草ってなんだよ。


【マスターは例外中の例外ですから。基本的に男の魔法使いは少ないです】


 いなくはないんだろ?


【是】


 友達できると良いなぁ。魔法友達。

 魔法について一緒に研究したり、高め合っていく、そう言う友達。


【マスターの周りは女ばっかりで、男友達が皆無ですからね】


 そーそー、ラファエルもデネブ兄さんも男だからなぁ。


 男の友達がほしいなぁ。


【笑】


 笑って何だよ……。


    ★


 学園都市ジョーサンへとたどり着いた。


「おお、学生の街って感じだなぁ」


 あちこちで食べ物屋が目立つ。


 街を行き来しているのも子供ばっかりだ。


「なんだあの馬車……?」「車輪に妙な物を使われてるぞ?」


 がやがや……。がやがやが……。


「坊ちゃま目立ってますねーさっそく」

「まあ物珍しいだろうからなぁ」


 都市についたら基本的な移動は徒歩にしとくか。


 俺たちがやってきたのは、学園都市内にある、【アイン王立魔法学校】だ。


【解。いにしえの勇者が創始者である学院です。優れた魔法使いを輩出することで有名です】


 ありがとうガイドさん。


 学校の前に馬車が停止すると……。


「レオン。待ってましたよ」


 父上の妹である、ハートフィリア叔母さんが出迎えてくれる。


「こんちは。今日からよろしく」

「はい、よろしくお願いしますね。長旅ご苦労様。とりあえずお茶にでもしましょうか」


「うっす」


 俺はハートフィリアさんとともに、建物へと向かう。


「でっけえ校舎……」


 見上げるほどの、城みたいな外観の校舎だった。


 塔とかあるし、マジで城みたい。


【解。ここはかつて、魔王の住む城だったものを、改造したものとなっております】


「え、まじ? 元々魔王城だったの?」


 前を歩くハートフィリアさんが、目をむく。

「なぜそれを知ってるんです?」


「あ、えっと……まあ本で読んだ」


 叡智神ミネルヴァの声はあくまで俺にしか聞こえないんだ。


 会話するときも気をつけねえとな。


「なるほど……さすがレオン、博識ですね。やはり【適任】でしたか」


「ん? 適任? どーゆーこと……?」


 俺たちは歩いていると、でっかい門までたどり着く。


 門の左右には、巨大な石像ガーゴイルがあった。


 くぐろうとした……そのときだった。


【【またれぇえい!】】


「うぉっ! 石像が、しゃべった!」


 左右にいた、石像達がぎぎぎぎ……と音を立てながら動き出したのだ。


【【主よ! 敵です! それも凶悪な!】】


【告。どうやらガーゴイルたちは、マスターの持つ強大な魔法力に反応し、敵と認定した様子です】


 いや別に敵じゃないんですけど……。


「こら、おやめなさい! この子は今日からここへ通う生徒なのですよ!」


【【いえ主! 我らにはわかります! このまがまがしい力……人の皮を被った化け物だと!】】


【是。大正解】


 いや何納得してるんだよ……。


 てか……ふーん! へぇ! 魔法で動く……石像かぁ!


【問。マスター? なにを?】


「いやちょっと、ちょこっとだけ調べるだけだから、ね? ね?」


 俺は巨大ガーゴイルの前に立つ。


 ガーゴイル達は、翼をはやした悪魔みたいな姿をしている。


【【ここは通さない! 死ねええええ!】】


 ガーゴイル達が口を大きく開く。


【告。左敵からは麻痺の、右敵からは毒のブレスが発せられます】

 

 ぶしゅぅううううううううううううう!


「やめなさい! 死んでしまうではありませんか! ああレオン!」


【【我らは門を守る物! 敵は排除する! 我らは仕事を、全うした!】】


 だが……。


「すげえな! 魔法まで使うのかよ、その石像!」


【【なにぃいいいいいいいいいいい!?】】


 俺は、無傷だった。


 いいやまあ傷とかどうでもいい。

 重要なのは、こいつの構造だ!


【【ば、ばかな! 我らのブレスは、竜を倒し、溶かすほどの威力なのに!】】


 驚愕するガーゴイル達に、俺はにじり寄る。


「どうなってるんだ? ねえ、声はどうやってだしてるの? 内蔵は? 声帯は?」


 ああもう、中身をばらして調べたくてしかたないじゃあないかぁ!


【【くっ! もう一度だ!】】


 ガーゴイルがまたブレスをはこうとする。


 だが……。


【【なっ!? バカな! 魔法が発動しない!】】


「魔封じを施させてもらったぜ」


 右側のガーゴイルの背後に、俺は立っている。


【【ばかな!? いつの間に!】】


「とりあえずバラしてもいいよね? 戻すから、いいね? うん! そうかありがとう!」


 俺は空間魔法でしまってあった政権を取りだし、軽く振るう。


 バラッ……。


【兄じゃぁああああああああああああああああああああああ!】


 バラバラに落ちたガーゴイルの石片を手に取り、調べる。


「へえ! すげえ……神威鉄オリハルコンに軟化と硬化の魔法を施してるのか! そうだよな、しゃべるんだから、固いからだじゃだめだもんな!」


【ひぃいいい! 兄者が! 分解されて、悪魔に解剖されてるぅううううう!】


 それで思考はどうやって発生してるんだ? ん?


「……すごい。我が校のガーゴイルは、鉄壁の門番、それをたやすく打ち破るなんて……」


「もー坊ちゃま! 他人のおうちのおもちゃを勝手にばらしちゃだめでしょー!」


 ココが俺を引っ張り上げる。


「もうちょっと、もうちょっとだけ調べさせてっ!」


「はいおもちゃを直しましょうね!」


「はいよ」


 ぱちんっ。


【はっ! われは一体……?】

【兄者っ! 元に戻ってる!? あんなに細かく分解されてたのに!? なぜ!?】


 ガーゴイルが驚きながら俺に尋ねる。


「え、ただ元にくっつけただけだぞ?」


 浮遊魔法を応用し、バラバラになった石片を元の位置に戻しただけだ。


【【あ、あ、ありえん! 修復魔法を使ったのではないのか!?】】


「うん。だってほら、単に切っただけだし、くっつくだろ普通」


【解。達人の剣は、たとえ切ったとしても、組織結合のみを切断しているため、接着剤等を使わずとも元通りになるのです】


「え、それって普通じゃないの?」


【【【普通なわけないだろ(でしょ)!?】】】


 ガーゴイルと叡智神ミネルヴァにつっこまれてしまった。


「やはり……レオン。あなたはこの学校に、新たな風を吹き込む者となるでしょう。さすがです」


「風というか、嵐を巻き起こしそうですけどねー」


 え、俺何かしちゃいました?

 まだ何もしてないよね? 学校にすら入ってないし。


【笑】


 だから笑ってなんだよ叡智神ミネルヴァ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


モチベになりますので、


よろしければ↓より、

星をいただけますと嬉しいです。


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