38.久々の魔王
ハートフィリアさんから、魔法学校への推薦状をもらった。
数日後。
精神と時の城にて。
俺と、魔王ウルティアはがちでバトっていた。
どがぁああああああああああああん!
『ははっ! またも一段と強くなったなぁ、レオンハルトよ!』
空中には雷の獅子が浮かんでいる。
彼女はウルティア。
俺が初めて出会った魔王。
『【神の雷】100連!』
俺の周囲に、魔法陣が展開。
そこから無数の雷が発生する。
ずがががああああああああああああああああああああん!
俺の体を狙って、雷がピンポイントに落下。
激しい爆発を起こす。
『やったか?』
「おしいな」
『なんと!?』
俺は空中に、浮遊魔法を発動させて立っている。
『無傷とな!? いったいどういうことだっ?』
【告。反魔法による魔法陣を展開。千の雷100連を防ぎました】
俺は魔王の懐に一瞬で潜り込む。
聖剣を収納魔法で取り出して、彼女の巨大な胴体に一撃を入れようとする……。
スカッ……!
「おお、体のサイズをかえたか」
猫耳をはやした人間のお姉さんに変化。
そのまま拳で殴ってくる。
どががががががががががっ!
【告。雷の魔法で体を強化している様子です。解析が完了しました。実行しますか?】
無論、イエスだ。
初見の魔法を一発で見抜き、模倣習得できるという、とんでもチート性能。
さらに回答者が
【告。魔法『
俺の体に雷がまとう。
ウルティアと同じレベルの早さを手に入れる。
逃げる魔王の背後に先回りする。
【告。魔王の千の雷を反魔法で打ち消した際、発生した余剰魔力をマスターの拳に充填します】
俺は右手をふるって、思いっきり魔王の腹に拳をたたきこむ。
どがぁあああああああああああああああああああああああん!
魔王の体は時の城とぶつかって崩壊を起こす。
それほどまでの、衝撃。
魔王の魔力はとんでもねえな。
【否。魔王の魔力ではなく、マスターが異常かと】
がれきの中から、ボロボロの魔王がゆっくり這い出てくる。
大の字に倒れて、笑顔になる。
「わらわの負けだ。見事だぞ、レオンよ!」
俺は魔王の隣に着地する。
進化してさらに便利になったなぁ。さすが
【是。どやぁ……】
ミネルヴァさんが心なしか得意げに、見えるわ。
【ぶふぅうう……! み、ミネルヴァと……見えるは、をかけた……ぷくっ……天才的ギャグ……! ぶふふぅうううううううう!】
別にそう言うつもりはなかったんだが……。
「運動したら汗をかいたな」
「あ、じゃあ風呂入ってくか?」
「む? 風呂か。よいな」
俺たちは時の城を出る。
屋敷へと向かい……。
「おおー! これは凄いな! 外に風呂があるぞ!」
俺の屋敷の風呂場には、露天風呂があった。
魔道具ギルドを立ち上げて、ドワーフのタタラや、メイド奴隷たちといった労働力が増えた。
俺は彼らに頼んで、俺のアイディアをもとに、異世界の物をいくつか作ってもらっている。
この風呂もそうだ。
「この開放感! 素晴らしいなぁ!」
全裸の魔王が腕を伸ばして言う。
【問。なぜマスターと同じ風呂に入ってるのでしょうか、このメスライオンは?】
まあ別にいいじゃないか。
露天風呂は一つしかないんだし。
【…………】
ぱぁ……と俺の右手の、栄光紋(使徒の証)が輝く。
俺の隣に、青髪の美女が出現した。
「む? 誰だ貴様は?」
魔王がじっ、と美女を見つめる。
「マスターの愛妻です」
「俺の相棒で、元スキル。ミネルヴァ」
「旦那がお世話になってます」
かかっ、と魔王が愉快に笑う。
「生きて冗談を言うスキルなど存在するとは! さすがレオンだなっ!」
「冗談ではありません、この泥棒猫」
不機嫌そうに美女が顔をしかめる。
泥棒猫って、リアルで言ってるやつ初めて見たな……。
「マスターはわたしのマスターです」
裸身のままミネルヴァが、俺の体を抱きしめる。
……板。
「マスター? 今、大変失礼なことを、考えませんでした?」
「え、ええー? なんのことかなー?」
「マスター。わたしとマスターの意識はリンクしてます。思考はダダ漏れです」
し、しまった……!
ごごご……とミネルヴァの体から怒りのオーラとともに、魔力が吹き荒れる。
「マスター。板、とはわたしの胸部を指して言ったのですか? その場合はやむを得ず生命活動を停止させますが?」
殺すって意味だろ!
「ち、違うよほんと違う……」
「ではなぜ板と?」
「い、板、で……殴られると、痛いなぁって!」
「ぶふぅううううううううううう!」
ゲラゲラ、とミネルヴァがしょうもないダジャレで笑い転げる。
ふぅ……ごまかし成功。
「愉快な奴らじゃな……ところでレオンよ、少し小耳に挟んだのが……おぬし、学校へ通うそうではないか」
ウルティアが急にそんなことを言ってきた。
「え、なんで知ってるの?」
「おぬしんとこのやかましいメイド娘が宣伝しておったよ」
ココか……あんにゃろう。
「魔法学校……どんなとこなんだ?」
「文字通りだよ。15歳以上の子供が通う学校。ハートフィリアさんはその学校の中でも、特にエリートを集めた……【アイン王立魔法学校】の校長先生なんだ」
「ふむ? 15歳以上……? おぬしは7歳ではなかったか?」
「うん。でもなんか、入っていいって」
笑い転げていたミネルヴァが、復活して言う。
「ハートフィリアからすれば、優秀な学生は早くしないと他国に取られる危険性がありました。ゆえに早くからつばをつけておきたかったのでしょう。さすがマスターです」
「なるほどなぁ……確かにレオンは並ぶ物のない優秀な魔法使いだからな」
うんうん、と二人がうなずく。照れるぜ。
「しかしレオンよ、学校に行く必要があるのか? おぬしは十分に強い魔法使いだろう?」
「行くよ! 当たり前じゃん。王立魔法学校には、秘蔵の魔導書があるみたいだし、俺の知らない魔法の使い手もいるだろうし!」
「マスターは魔法以外には興奮しませんよね。ここに、二人のナイスバディーな女が二人も居るというのにも関わらず」
くねっ、とミネルヴァがしなをつくっていう。
ナイス……バディー……?
「告。邪念を関知しました。排除します」
ごご……とミネルヴァの右手に魔力がたまる。
「邪念なんて、気のせいじゃねん?」
「ぶふふぅうううううううううううう!」
ゲラゲラゲラ、とミネルヴァが笑う。
うん、ギャグでごまかすのは有効だな。
「まああと、ダオスの情報もあるかもだしな」
「ダオス……か。懐かしい名だな」
神、ダオス。それは、俺に力を与えた女神カーラーンさんの弟。
地上に降り立ったダオスは、その力を分け与えて魔王を作っているという。
「なあウルティア。ダオスの居場所はわからないんだな?」
「ああ。あやつとは大昔。ほんの一時一緒にいただけだからな。今は行方知らずだ」
というわけで、ウルティア以外のやつから、ダオスの居場所を聞き出すなり、自分で探し出すなりしないといけない。
「今度【宴】があるから、そのとき、ほかの連中にも聞いておこう」
「宴? なんだそりゃ」
「【
「
なんじゃらほい?
「解。魔王が一同に集まり、互いの近況や議題について話し合う重要な会合のこと」
「まあ早い話が、魔王達による飲み会だな」
ふっ、とミネルヴァが勝ち誇ったように笑う。
「何ですかその具体性に欠ける説明は」
「なるほど、魔王の飲み会かぁ」
「マスター!?」
ミネルヴァが半泣きで、俺の腕にすがって言う。
「わたしのほうが正確な解説でしたよね!?」
「ああ。でもウルティアの方がわかりやすかったしな」
「そん……な……」
がくん、とミネルヴァがうなだれる。
「で、
「最近現れた、最も新しき魔王についてだな」
「ふーん……そんなのいるの?」
はぁ……とあきれたようにウルティアがため息をつく。
「おぬしのことに、決まっておろう」
「え、俺ぇ……?」
あ、そういえば……。
俺はカーラーンさんから、力をもらった。
あの人は、神。
神から力を与えられた存在を、この世界では魔王って言うから……。
「我ら魔王の仲間に、おぬしを加えるかどうかの話し合いが行われるのだよ。無論、わらわは賛成だが……」
「反対するやつもいる、か」
「
どうやら魔王にもいろいろと事情があるらしい。
「
「ああ。さすればほかの魔王にも会いやすくなるだろう。わらわ以外のやつらは、みな変わり者でな。なかなか世界に姿をあらわさん」
なるほど……。
奴隷メイド達を使って情報収集させてるが、一向にウルティア以外の情報が出てこないのは、そのためか。
「
「おう。わかった」
こうして俺は、王立魔法学校に通うことになったのだった。
……のだが。
「マスター? わたしはお払い箱ですか?」
いじいじ……とミネルヴァがいじけていた。
「そんなことないって。何落ち込んでるんだよ」
「でも回答者なのに、わかりにくいって」
「まあたまに暴走するけど、俺、おまえのこと一番に頼りにしてるからさ」
「ふっ……。是。わたしはマスターの頼れる相棒……きゃっほぉーーーーーーーーい!」
うん、ちょろいぜ、叡智の神。
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