34.現・剣聖すらも凌駕する
お披露目会が終わった。
翌週。
俺は屋敷へと戻り、一息ついていた。
「ぼっちゃま〜」
「おお、ココか」
「お茶にしませんか~?」
そば付きメイドのココとともに、俺は庭へと移動する。
紅茶を入れてもらって、のんびりする。
「この間のお披露目会、凄かったですねぇ」
「そうかぁ?」
「そうですよっ! 石化魔法をばしっと防いで、呪われたお姫様を助けたんですもの~。はー、さすが坊ちゃま、すごいなぁ」
蛇姫ことハクアが魔法を暴発させた。
俺は
反魔法と付与魔法の組み合わせ、俺はあれを【魔封じ】と名付けた。
【問。魔法封じの略語だとは思われますが、安直すぎる名前では?】
いいんだよ、わかれば。
それとも、何かいい案あるの?
【是。元・回答者として、魔封じよりも、最適かつエレガントな回答を用意できます】
おお、期待。どんなの?
【解。全部の魔法絶対殺す術式verレオンハルトwithミネルヴァ】
……。
……。
……。
「あ、そーいえば今日ですよね?」
「え、なにが?」
「婚約者さんたちが来るの」
「え? そうだっけ?」
と、そのときである。
「レオン! 来てやったわよ!」
肩を怒らせて俺の元へやったきたのは、金髪に、燃えるような赤い瞳の少女。
「よぉデニス」
「ふんっ、ここ遠いわね」
婚約者2号ことデニス=フォン=グラハムは、俺の元へとやってくる。
ココが椅子を引こうとすると……。
「不要だ」
デニスの後ろには、背の高い、獣人の女がいた。
オオカミのような耳に尻尾。
背中には身長と同じくらいの大剣を背負ってる。
おそらくデニスの従者だろう。
彼女が椅子を引き、デニスが座る。
「で、何しに来たの?」
「お礼参りによ」
「はぁ……? お礼参り?」
にやり、とデニスが勝ち気そうに笑う。
「この間はよくも、人前であ、あんな破廉恥なまねしてくれたわねっ!?」
破廉恥なまね……?
【解。お披露目会にて、石化されたデニスを、反魔法で解呪。その際に服まで粉々にして全裸にひんむいた事件を指していると推察されます】
あ、なるほど……。
「悪かったって」
「いーえっ、許さないわ! あんたをボコってやらないと気が済まない!」
「またやるの、けんか?」
この間突っ込んできたデニスを、魔法障壁で防いで、気絶させたことがあった。
「さすがに7歳児相手にけんかはできないなぁ」
「ふんっ! 誰があたしがやるって言ったの? アタシの従者がお相手するわ!」
従者……多分後ろに立っている、獣人女のことだろう。
重心の取り方を見て……結構やるやつだってわかった。
「あんたがこの【ゼスト】に勝ったら、この間の破廉恥事件はチャラにしてやるわ。そのかわり! アタシが勝ったら一生下僕ね!」
「下僕て」
【解。[名]下働きの男性。下男。】
ありがとう、でも解説して欲しいわけじゃないから。
「まーようするに、俺が気にくわない訳か」
「そうよっ! アタシは認めないわ。あんたみたいな破廉恥やろうが使徒様だなんて!」
あれは事故だったんだけどなぁ……。
まあ、あんま突っかかられても困るし、相手してやるか。
「ゼスト、だっけ。いいよ、稽古つけてやる」
「ほぅ……このワタシにその態度。面白い……」
俺たちは少し距離を置いて互いに向かい合う。
「ゆくぞ……」
ゆらり……とゼストの体から
「おお、闘気使えるんだ」
「!? 闘気を知ってるのか……? 」
ゼストが目をむいて俺に問うてくる。
「ああ。自然エネルギーを取り込んで、運動エネルギーに変えるやつだろ?」
「ふっ……面白い男だ。はぁ……!」
ゼストが大剣を軽々と担いで、俺に向かって突進してくる。
「どひー! 早すぎるぅ! 坊ちゃま危ないですよぉ!」
ココの台詞が言い終わる前に、ゼストの剣が俺の脳天をかち割ろうとする。
ズバンッ……!
庭の石畳を軽々と砕き、地面に大きな傷跡を残す……。
「やる気ないのか?」
ゼストの剣は、俺のすぐ真横を通って振り下ろされた。
つまり最初から俺を殺す気じゃなかったのだ。
「ふむ……ワタシの剣をよく見切ったな」
「剣に殺気が乗ってなかったからな」
「見事……あの気迫を前に、みじんも動揺しないとは」
ゼストがにやり、と笑う。
俺は今ので大体のゼストの力を測り終えた。
「
「いや、失礼した……では、次は本気で、取らせてもらおう」
ばっ……! とゼストが跳躍し、俺から離れた場所におりる。
「ぼ、坊ちゃまー! その人めちゃ強ですよ! 本気でとか言ってるし、やめといたほうがいいかもー!」
ココはデニスを連れて、かなり離れた場所に避難していた。
さすが王家直属のメイドだ。
「心配ないよ。すぐ終わらせる。ほら、かかってきな?」
「参る……!」
しゃがみ込んで、踏み込んでくる。
ぱんっ……! と遅れて音が来た。
音を置き去りにする超加速からの、大剣による刺突。
がきぃいいいいいいいいいいいん!
「なっ!?」
「狙いがバレバレだぜ?」
俺の手には、女神カーラーンさんから預かっている、聖剣がある。
聖剣の刃の腹で、俺はゼストの一撃を防いでいた。
「ばかなっ!? 竜すら貫く我が一撃を!?」
「パワーはたいしたもんだよ。だが……」
俺は剣の腹で、相手の剣を滑らせる。
「くっ……!」
足払いをして、ゼストを転倒させる。
「ぎゃっ……!」
「いかんせんパワーだけに頼りすぎてる感はあるな」
倒れ伏したゼストが、ぶるぶると肩をふるわせる。
「怒った?」
「いいや! これは武者震いだ!」
ゼストは立ち上がって、らんらんと輝く銀の瞳を俺に向ける。
「ワタシは今最高にうれしい! 自分を超える、最強の剣士と出会えたことを!」
結構な自信だなぁ。
どっかで剣術でも教えてる人なのかな?
「はぁあああああああああああああ!」
ごぉおおおお! とゼストの体から、さっき以上の闘気が噴出される。
「いくぞぉおおおお!」
「おうよ、来い」
ゼストの姿がゆらり……とぶれる。
俺は前を向いたまま、剣を後ろに回す。
がきぃいんん!
分身か、と思ったら、その分身すら斬りかかってきた。
俺は剣で後ろのゼストを払って、前から襲いかかるゼストの腹に拳をたたき込む。
どごぉおおおおおおおおおおおおん!
「ひぃ! なんか見えない攻防したあとに、壁にあの獣人さんが激突したぁ! は、早すぎるぅ……!」
「うそ……ゼストが、こんな……まるで、大人と子供の戦いじゃない……」
ゼストは壁に埋まってるはずだが、気づけば四方をゼスト【たち】が囲っていた。
「どひー! 分身魔法だ!」
「いや、少し違うな」
だろ?
【解。ゼストが使っているのは
まあ解説しなくてもわかってたけどね。
【むかっ! ……しかし、何故?】
まあ……あの剣は【見覚えがある】からな。
というか……。
「ぜ、ゼスト! さっさとやっちゃいなさいよ!」
デニスに命じられて、分身ゼストたちが俺に襲いかかってくる。
俺は……俺【達】は、分裂して、真っ向から挑む。
「なっ……!?」
「なんですってぇ!?」
分身体を、俺たちが切り捨てていく。
あっという間に、ゼストの分身は消え去った。
「んで本命は……ここっ」
俺は剣の柄で、背後に一撃を入れる。
ぼぐ……!
「ぐぅ……」
「ゼストっ!」
倒れ伏すゼストに、デニスが駆け寄ってくる。
「大丈夫なの!?」
「ああ……完敗だ」
大の字になって寝るゼスト。
「それ、剣聖の剣術だな?」
つまり大昔、俺が一度目にこの世界に来たときに、使っていた剣だった。
「ああ。すごいな……レオン殿下。あなたは……凄いお人だ。ワタシを倒すなんて」
一歩も動けないのか、倒れた状態のまま、ゼストが笑顔で言う。
「あんたもまあまあ良かったよ。まあ、まだまだだけど」
何せ肉体が7歳の俺に負けてるからな。
いくら魔法と闘気で強化してるとはいえ、全盛期の力には遠く及ばない。
ようするに、俺は全力じゃなかったのだ。
「ははっ……手厳しいな」
するとデニスが体を震わせる……。
「ゼストを……剣聖を倒すなんて……何者なのよ……?」
「え? 剣聖……こいつが? 今の?」
剣聖とは、最強剣士の称号のこと。
ゼストがそうだってことは……。
「あれ、もしかしてこの時代の剣聖って、弱い?」
そういえば平和になって、戦いのレベルが全体的に下がってるって言うしなぁ。
うーむ、ゆゆしき事態だな。
【ぶふぅう……! 言うしな、とゆゆしき、をかけただじゃれですね……ぶふー!】
いやだじゃれでも何でもないんだが……。
「ゼストに勝つなんて……何者なのよ、あんた?」
デニスが声を震わせながら、俺に問うてくる。
「え、ただの王子だけど?」
「あんたのどこが! ただの王子なのよ! この化け物ぉおおおおおおおお!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【★大事なお知らせ】
「期待!」
「面白そう!」
って思ったら、
ぜひ下の星評価を入れてもらえると頑張れます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます