第四章 世界に嵐を呼ぶ7歳児

31.7歳の誕生日、お披露目会で大注目



 魔王ウルティアとのガチバトルから、2週間ほどが経過した。


 俺は王都にある、王城に来ていた。


 今日は7歳の誕生日会がある。


 昼下がり。王城にある、化粧室にて。


「なー……ほんとにお披露目会、やらないとだめなのか?」


 大きな鏡の前に、俺は座らされている。


 俺の後には、銀髪の美しいメイドが絶っていた。


「……ダメです。王族としての勤めですから」


 彼女はミリア。俺のそば付きメイド。ちょーつよい。


 ミリアは髪の毛をセッティングしている。

 逃げようとすると鋭い眼光でにらんでくるのだ。


「そうですよー。逃げちゃメッ! ですよーぅ」


 俺の体に巻き尺をあてているのは、そば付きメイド2。


 ココ。茶髪でくりくりっとした目が愛らしいメイドさんだ。


「王子様たちは7歳になったら、国民や来賓のかたがたに、鑑定の儀の結果をお披露目する。それが習わしなんですからねー」


 先日、俺は鑑定の儀とやらを受けた。


 神から与えられた才能を鑑定するという儀式であり、7歳になると誰もが受ける。


「なるほど……だからお披露目会が7歳にあるんだな。しかし……ううん、ますます嫌なんだが……」


 俺の右手には包帯が巻かれている。


 この下には、紋章が刻まれていた。


 天使の輪に、翼の生えた剣。


 これは【神の使徒】の証たる……【栄光紋えいこうもん】という。


「……レオン様。なぜ栄光紋をおかくしになさるのですか?」


「えー、だって目立つじゃん……」


 この世界において、神の使徒とは特別な存在なのだ。


 古今東西の英雄全てに、この紋章が刻まれていたらしい。


 神に愛され、認められた存在。それが……俺、ということで非常に目立って仕方ない。


「だめだめですよー。せかっくキレイなお召し物を着るんですから、包帯なんて似合わないです。取りますねー」


 しゅるしゅる、とココが俺の手から包帯を回収する。


 ああもう、やだなぁ。


【問。なぜマスターは嫌がっているのですか?】


 俺の脳裏に、無機質な女性の声が響く。


 彼女は回答者。

 神から転生特典として与えられた、何でも知ってる凄いスキル。天の声ってやつ。


 今はさらにパワーアップして、叡智神ミネルヴァさんになってる。


(だってよー、あんま目立つと動きにくくなるだろ?)


 俺は脳内で叡智神ミネルヴァと会話する。


 あ、そうそう。

 最近仲良くなったからか、【さん】付けすると怒るようになったのだ。


【是。ただでさマスターはパワーがアレなのに、神の使徒の称号が加わることで、さらに多くの人の注目を集めることになります】


(アレってなんだよ。俺は普通ですよ?)


【草】


 最初は無機質な音声に過ぎなかったが、女神カーラーンさんから力をもらって、こうして会話できるようになったのだ。


 俺には魔法を極めるって目的、そんで、俺を転生させてくれた女神の弟を探し出すっていう、クエストがある。


 だからそれらの妨げになることは、したくないんだよなぁ。


「はい、坊ちゃま! 準備かんりょーです! FU~♪ 良い仕事~♪」


 鏡の前には、髪の毛をセッティングされ、高級そうな礼服を着た7歳児がいた。


 普段はボサっとした黒髪に、適当なシャツと半ズボンなのだが。


 今は青色の礼服にみをつつみ、髪は整髪料でオールバックにされている。


「うん! あいかわらず坊ちゃまは、偉い! セッティング中いっさい手間がかからなかったし!」


 えらいえらい、とココが俺の頬を手で包んでムニムニしながら言う。


「長い時間じっとイスに座ってられて、偉い!」


 まあ中身が子供じゃないからな。


「……レオン様、とてもお似合いです。とっても、かっこいいですっ」


 普段クールなミリアが、頬を赤らめて、興奮気味に言う。


【マスター。素晴らしく似合っています。世界一カッコいいですっ】


 おお、普段クールな叡智神ミネルヴァもまた褒めてくれるなんて!


 ……。


 ……なんか最近スキルとしての役割を越えてきてる気がする。


 ま、いっか!


 と、ちょうどそのタイミングで……。


「レオンハルトよ。準備は終わったか?」


「父上」


 白髪の男が、部屋に入ってくる。


 バッ、とココとミリアがその場にひざまづく。


 この人は王子おれの親父、つまり国王陛下だからな。


「よく似合っているな。さすが我が息子」


 親父はニッ、と笑うと、俺の肩をポンポンと叩く。


「とてもカッコいいですよ、殿下」


「んえ? なあ父上。後の人、誰?」


 父上の背後には、背の高い、メガネをかけたお姉さんがいた。


 黒いドレスに、丸眼鏡。

 ふわふわした髪の毛に……そしてなぜか魔女みたいな三角帽子。


 見た目は20くらいかな。


「わしの妹のハートフィリアだ」


「初めまして、殿下。ハートフィリア=フォン=カーラーイルです。お会いできて光栄です」


 ハートフィリアさんは俺の前にしゃがみ込んで、手を出してくる。


「こんちは……って、父上の妹? じゃあ……叔母さんってこと?」


 ひくっ、ハートフィリアさんの口角が微妙にひきつる。


「そ、そうです……けどできればハートフィリアさん、もしくは、叔母上で」


 え、なんか怒ってる……?


【是。怒ってます。女性におばさん、は失礼かと】


 さすが叡智の神。何でも知ってるな。


【是。どやぁ】


 得意げな叡智神ミネルヴァをよそに、俺はハートフィリアさんにあいさつする。


「おうわさはかねがね聞いてました。ぜひとも、【うち】で欲しい人材ですわ、御兄様」


 ハートフィリアさんの兄、つまり父上に言う。


「そうだな。検討しておこう。もっとも、レオンの意思次第だがな」


「? 父上、叔母上も、なんの話? 【うち】でほしいって、どゆこと?」


「まあそれは追々、な」


 困ったときの叡智神ミネルヴァさん。

 おねがいしゃす。


【解。ハートフィリア=フォン=カーライルは、このゲータ・ニィガ王国魔法学校の理事長の職についています】


 学校の理事長……。


【ハートフィリアは魔法の天才であるマスターを欲している、ということでしょう】


 なるほど、生徒として欲しいのか。


 魔法学校……いいね!

 どんな魔法があるのか楽しみだ!


【告。やめておいた方がよいと進言します】


 えー。なんでだよ。


【マスターが大波乱を巻き起こすのが目に見えてるからです】


 いやいや、俺は大人しくしてるよ。

 おとなしーく授業受けて、おとなしーく文献を読むだけさ。


【否。草】


 なんで草生やしてるの!?


「さぁレオン。参ろう。皆が待っておる」


 父上が優しく笑って、俺の手を引く。


 俺は一緒に廊下を出る。


 護衛の騎士や、メイド達が、大名行列のようについてきた。


 ほどなくして、俺は大ホールへとやってくる。


「国王陛下! および第13王子レオンハルト殿下の、ご入場……!」


 騎士の一人が声を張り上げると、入り口の扉が開く。


 ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 お、おお……なんかヤバいくらいの大歓声だ。


「レオンハルト様ー!」「素敵ー!」「こちらにお顔を向けてくださーい!」


 すんげえ数の人たちが、ホールにすし詰めになっていた。


 東京ドームくらいホールが満席である……。


 え、なに? この人達、なんで集まってるの?


【解。マスターと懇意になりたいからと、国内外からやってきた有権者たちです】


 ふえ……!?

 お、俺に会いたいだけで? こんなに?


 って、ちょっとまった。

 有権者たちって……平民の人たちは?


【解。城の外にあふれんばかりの大人数が、押し寄せてます。ごらんになりますか?】


 ごらんにって……え、見えるの?


【是。叡智神ミネルヴァの力で、探知スキルが強化されてます。周辺の鳥瞰図を表示できます。いかがなさりますか?】


 じゃあ、いちおうイエスで。


 その瞬間、俺の脳内に、外の様子が映し出される……。


「って! なんだこれぇえええええええええええ!?」

 

 城の周りには、人、人、人!


 もう夏のコミケとかとは比べものにならないくらい、人がたくさん集まっている!


 こ、これ……みんな俺目当てなの?


【是。さすがマスター。人気者です】

 

 まじかよ……ちょっと人気すぎない?


【解。マスターは竜を倒した王子にして、神の使徒。注目されるのは当然】


 なるほど……。

 ドワーフ国で竜も倒してたね、俺。


 ややあって。

 俺たちは上座へとやってくる。


 親父がみんなの前に現れると、周囲が静まりかえる。


「みな、よく集まった。これより、我が息子……第13王子レオンハルトの御披露目と、誕生を祝う席を開始する」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


モチベになりますので、


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