24.奴隷に名前付けて進化
俺は奴隷を手に入れた。
「わわわー! ぼっちゃま、なんですかこのたくさんの女の子達はー!」
大広間にて、そば付きメイド1号、茶髪のココが目を剥いて叫ぶ。
俺の前には奴隷がいて、総勢30名。
「女の子パラダイスじゃあないですかー! しかも、結構見た目可愛い子ばっかだし!」
言われてみると女が多いな……。
なんでだろうか?
【解。女奴隷の方が男奴隷より生存しやすいです】
なんで?
【解。男は過酷な労働環境に放り込まれ、肉体を酷使されるからです】
言われみりゃそうか。
「……さすがレオン様」
「うぉっ! ミリアか。急に現れるなよ、びっくりするなぁ」
うつろな目でミリアが俺を見下ろす。
「このようなたくさんの、しかも見栄えもそこそこ良い奴隷を30名も連れてる貴族なて、そういません。レオン様の威信をしらしめる、いいステータスになるかと思います。さすがです」
「お、おう……ありがとう。でも、なんでそんなビキビキって怒ってるの?」
額に血管浮かんでるし!
「怒ってません?」
怒ってない?
【解。怒ってます】
ほらぁ!
ココがきょとんと首をかしげる。
「ミリア様なーんで怒ってるんですかー……あ! わかったー! 大好きなぼっちゃまに、たくさん女の子が出来て嫉妬して痛い痛い痛い頭がわれりゅぅうううううううううううううう!」
ミリアがココにアイアンクローを食らわせてる!
「そ、それくらいにしておけ」
「チッ……! レオン様に感謝なさい、ココ。レオン様がいなかったら今頃ミンチですよ」
「うわわーん、ありがとう坊ちゃま~」
抱きついてくるココの頭をなでる。
「ミリア、ココ。こいつらの教育を頼む。一般的な知識や教養をたたき込んで、人前に出ても大丈夫なようにしてやれ」
「「かしこまりました」」
すっ、と揃ってココとミリアが頭を下げる。
なんだかんだ言って、2人とも優秀なメイドなんだよな。
所作が美しい。
「ごしゅじんさまー?」
キツネ獣人の子が、とてとて、と近づいてくる。
俺が最初に、魔法で治療してやった子だ。
「どうした……えっと、あれ?」
そこで、俺は気づく。
「なあお前、名前なんて言うんだ?」
「えっ!?」
獣人が目を剥いている。
「どうした、驚いて。名前だよ名前」
「なまえー……ないよぉー……」
は? 嘘だろ?
【是。奴隷には基本、名前がありません】
マジか? なんでだよ。
【解。奴隷は基本的に物と同義とされます。道具に名前がないのと同様に】
なるほどなぁ……それはちょっと可哀想だな。
「よし、俺が名前を付けてやろう」
「ええっ!? いいのー!?」
ぴょんっ、とキツネの子が飛び跳ねる。
赤銅色のくりくりっとした髪の毛が可愛らしいな。
【告。今の状態で亜人種に名前を付けるのは危険です】
え? なに急に……?
あ、わかった! 回答者さん嫉妬してるんでしょ?
【解。は?】
は、って。いま、は? って言いましたよ……こわ……。
あ、えっと……ほら、回答者さんも名前ないじゃん。
なのに、俺がほかの子に名前を付けて、嫉妬してるんじゃないかなーって……。
【解。は?】
……あ、いや、なんでもないっす……。
ま、まあそんなことより名前だな。
でも回答者さんの忠告って、なんだったんだろう。危険って……?
【解。つーん……】
ああ、へそ曲げちゃったよ。
ま、へそないんですけどね。
「ごしゅじんさまー……なまえー」
「おう、そうだったな」
赤毛で、キツネで、くりくりしてるから……。
「コロン。おまえはコロンだ」
ガクンッ……!
んんっ? なんだ、今の……引っ張られる感覚があったけど……?
「あたし、コロン! コロン! わーい! お名前だぁ!」
ぴょんぴょん、と飛び跳ねるコロン。
かわええ……。
「なあなあ坊ちゃん。あたいにも名前くれよ」
蜥蜴人の女が、俺に言う。
見た目は人っぽい蜥蜴ってかんじ。
デカいとトカゲが二足歩行してるって言えばわかりやすいか。
体のフォルムは、すらっとしてて美しいんだけど、ちょっと目とかトカゲで怖い。
「じゃあ……おまえはリザ」
ガクンッ……!
あ、あれ……? またちょっと引っ張られた感じが……。
何かが、俺から抜けてくような……。
か、回答者さん? これ、なんですか?
【解。つーん……】
ああまだ拗ねてらっしゃる!
ねえねえ怒らないでくれよー。
「なぁー旦那様~♡ うちにも名前、つけてほしいわあ~……」
人間と馬が合体してるような見た目だ。
人の腰から下が馬って感じ。
ただ顔は若干馬面。
横から見ると顔が前にでっぱってる。
「じゃ、じゃあ……ギャロップで」
ガクンッ!
また体がふらつく……なんなんだこれは一体……?
回答者さんは答えてくれないし……。
「へへっ、リザかー。かっちょいい名前!」
「ころんはころん! ねえねえころんかわいい?」
「ふふ……ギャロップかぁ。なんや早そうな名前で、きにいったわー」
すると……残りの27人も……。
「ご主人様! わたしもー!」
「あたしも名前をおくれよーう!」
自分も自分も、と奴隷達が俺の前に押し寄せてくる。
「レオン様はお疲れのご様子です。また後日になさい」
ミリアが奴隷達の前に立って、防壁となってくれる。
「「「ええー!? ずるいですぅ!」」」
女達が非難の声を上げる。
「わりぃな、先に名前もらっちまってよー」
リザがニヤニヤと笑う。
「あんたらはまた明日にでも付けてもらえばいいちゃいます~?」
「お、ギャロップもそう思うよな~? がははは!」
リザとギャロップがこんな子というもんだから……。
「レオン様わたしも!」「名前ちょうだーい!」「ご主人様ー! 名前ほしー!」
きゃあきゃあ、と奴隷達が騒ぎ出す。
ああもう……!
「わかったわかったよ! どんとこいや!」
こうして、俺は27人分の名前を、付け終わった……の、だが……。
★
「はえ? ここは……?」
気づくと俺は、ベッドに寝かされていた。
「なんか、名前の途中で、急に体がだるくなって……急激に、眠くなって……それから……」
と、そのときである。
「あー! ごしゅじんさま、おきたー!」
俺の部屋に……赤銅の髪の、美しいお姉さんが入ってきたではないか。
「ごしゅじんさまー! おっきったー~?」
お姉さんはニコニコしながら、俺の体に抱きついてくる。
「お。おう……ど、どちらさま?」
「えー! ひっどーい! あたしのこと、忘れちゃったのー!?」
ぷー、と頬を膨らませるお姉さん。
え、忘れるも何も……初対面なんだけど……。
「って、ん? え、キツネの耳……? え……もしかして……」
ふさふさの、赤いきつね耳に尻尾。
え、うそ……まさか……。
「こ、コロン!?」
「そうだよー? ころんはころん! それ以外になにがあるのかねー?」
いや、いやいやいや!
コロンって最初、7歳の俺と大差ない見た目してたよね!?
それが今や……17,8くらいの、すんごい美少女お姉さんになってるし!
「おー、どうしたー? 坊ちゃん起きたか?」
「旦那様~。おはようございます~」
2人、部屋に入ってきた。
けれどこの2人も、どえらい美人だった!
褐色の肌の、エスニック系美少女。
黒い髪の、和風美少女。
「どちら様!?」
「なんだよー。冷てえじゃあねえか。リザだよ」
「うちです、ギャロップですよ~」
えええええええええええ!?
リザは、トカゲっぽさの残る女。
ギャロップは、馬っぽい女だった。
けれど2人にその頃の面影はない。
リザは目がトカゲみたいに、瞳孔が盾に割れてる以外は、ただの超美人お姉さんだし。
ギャロップに至っては、下半身が馬だったのが、完全に人間になってる!
馬要素は、長い黒髪を、ポニーテールにしてるくらいだ。
「おまえら、いつの間にそんな、がらっとかわったんだよ?」
するとコロンが手を上げて言う。
「3日前だよっ! ごしゅじんさまに、名前もらってからー!」
名前……?
名前もらって、なんでこんなガラッと変わるんだ?
てか3日前って……
か、回答者……さん。
【…………】
貴女のありがたみが、痛いほどわかりました! 俺が悪かったから許して!
【是】
おお、許してくれたみたいだ!
【解。個体名コロン、リザ、ギャロップ他、全ての奴隷達は、存在進化したのです】
存在進化……?
【解。魔物に見られる現象です。上位個体より大量に魔力を分けてもらうことで、ワンランク上の個体となる現象】
ポケ●ンの進化みたいなもん?
魔力が経験値ってことか。
【是。魔物の場合、名前という要素は非常に重要となります。名を与えることは己の
魔物の理屈はわかったけど、亜人種と魔物って別もんじゃね?
【解。獣人を含む一部の亜人種は、魔物から派生して生まれた種族です。ゆえに、コロン達に名前をマスターが付けたことで、ランクアップしたのです】
む、むずかしくてわからん……。
【解。マスターが
おお! わかりやすい!
「え、あれ? つまり……」
そのときだ。
どどどっ! と俺の部屋に……絶世の美人美少女達が、入ってきたのだ。
「なな、なんだこりゃー!」
合計30名の、色とりどりの美人たちが、俺の元へとやってきた。
え、まさか……あの奴隷達!?
全員進化したの!?
【是。さすがマスター。人間の魔力量では全ての個体に魔力を分けられませんでした。マスターだからこそ可能だったのです】
おいおい、安く買ったつもりの奴隷が、名前付けただけで、こんな美人に変わるなんて……
「レオン様ー♡」「きゃーレオン様ぁ♡」「レオン様ー好き〜♡」
し、しかもお姉さんズがなんか好感度高すぎません!?
な、なんだかとんでもないことになっちまったぞ。
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