13.ドワーフ国に人材と資材の確保へ行く


 俺はひょんなことから、魔道具ギルドを立ち上げ、さらに宮廷魔道具師に抜擢されてしまった。


 6歳だぜ、6歳。

 そんな子供に大役を任せるって、どう思うよ、回答者さん?


【解。それだけマスターに能力が備わっていると言う証左かと】


 まあ……確かに今世は魔法適正SSSだし、地球での知識もあるからなぁ。


「とは言え……ううーむ……」


 俺がいるのは、13王子である俺にあてがわれた屋敷。


「ぼっちゃまー、おやつですよー!」


 そば付きメイドのココ、そしてミリアが、カートを押して入ってきた。


「これまたどえらい【離れ】ですねー、ぼっちゃま」


 魔道具の作成に必要だからと、親父におねだりしたところ、快諾。


 結果、屋敷内に、立派な魔道具作成工房が完成した……が。


「六歳で大役任されるなんて、さすがぼっちゃまです!」


「……しかし、レオン様。なぜそんな浮かないお顔をなさってるのですか?」


 メイド達が俺に尋ねてくる。


 おやつを食べながら2人に説明する。


「問題は山積みだからだ」


「ほへ? 問題?」


 ココが小首をかしげる。


「魔道具ギルドをやってく上での、問題は大きく分けて2つ」


「ほほう、2つも問題が……」


 ココがカニのように両手でピースサインを作る。


 銀髪メイドのミリアが、察した様子でうなずく。


「……人材と資材の不足ですね」

「そのとおりだ」


 魔道具を公に作って売れる立場にはなった。

 

 魔道具を作る場所も用意した。


 しかし肝心の魔道具を作ってく上で、それを作成する人間、そして使われる資材が圧倒的に不足している。


「作るのってぼっちゃまなんでしょー? ならぼっちゃま一人居ればいいのでは?」


「趣味で作ってくならそれでいいけど、俺は国から依頼を受けて、魔道具を量産しなくちゃいけないからな」


「……生産ラインを組むためには、どうしても作業員が必要ですからね」


 ミリアの言葉に俺はうなずいて返す。


「そうだ。それも、手先の器用なヤツを雇わなきゃいけない」


「ほえー? なんで?」


「俺の作る地球の商品は……こたつやエアコンは、かなり精密な部品や仕掛けが多いからな」


 必ずしも現実のものと同じものを、作るわけではない。


 それでも【ガワ】はしっかりと作っておかないと、正常にエアコンなどは動かないのだ。


「……いくらレオン様の付与魔法が素晴らしくとも、それを入れる【箱】がしっかり作られてないといけない、ということですか」


「そういうこと。俺の要求するレベルの職人がいない。それが問題の1つ。あとは……」


 はいはい! とココが手を上げる。


「魔道具に必要な部品……【魔石】が足りないんですね!」


 俺はうなずいて、収納魔法でしまってあった、魔石を取り出す。


 魔石。魔物の体内等から採取される、魔力を帯びた鉱物の総称だ。


 かならずしも魔物のなかにあるわけではないが、たいてい、倒すと落とす……まあドロップアイテムだ。



「魔道具は性質上、大量の魔石がいる。……し、それも純度の低い魔石じゃだめだ。エアコンを動かすにしても、かなりの魔力が込められた魔石がいる」


 魔石には、内蔵できる魔力量によってランク付けされている。


 エアコンを動かすには、大量の魔力が必要となり、必然、高い純度のそれが要求される。


「国王陛下に、資材を頼めばいいんじゃないですかー? お抱えの商業ギルドだってあるでしょうし、そっから買えば?」


「そうもいかんのだ」


 俺は収納魔法をつかって、2つの魔石を手に取る。


「ココ。これらの違いわかるか?」

「うーん……さっぱりわかりませんな! 同じにしか見えないですよ?」


 そう、そこが問題なのだ。


「右手の魔石はランクAの魔石。左手は最低ランクのF」


「……なるほど。純度の高低は、鑑定魔法の使い手でなければわからない」


 ミリアの言うとおりだ。


「少し親父に頼んで買ってもらったこの魔石、ランクはまちまちだし、なにより純度の低い魔石がほとんどだった」


 俺が欲しい魔石は、ほぼないに等しい。


「とまあ、人材と資材、ふたつの問題を抱えてるわけだ」


 俺がおやつを食べ終える。

 ココはハァ~……と感心したようにつぶやく。


「ギルド立ち上げたらはいスタートって、わけにはいかないんですね~」


「そーゆーこと。さてどうすっかな。まずは腕の良い職人からだが……」


 俺が一度この世界に来たのは、だいぶ昔の話し。


 今(一度目)と昔(二度目)とでは世界情勢が異なる。


 だが、世界がどれだけ変わっても、変わらないものはある。


「なあ、国内にドワーフって、いるか?」


 ファンタジーものの定番。

 ずんぐりむっくりしてて、手先の器用な、亜人種。


 彼らがいれば、魔道具作成の効率も大幅に上がるだろう。


「……国内にいませんね。ドワーフは南東にある国、【カイ・パゴス】にいるかと」


「外国か……」


 てゆーか国内にドワーフがいないって。


 この何世紀かで、やっぱり事情が変わってきてるんだな。


 回答者さん、カイ・パゴスってどんなとこ?


【解。ゲータ・ニィガ王国から船で南東に、ひとつきほど行った距離にあります。年中雪と氷に囲まれており、魔石・魔鉱石の取れる鉱山が多く、腕の良いドワーフたちがかなりの数存在します】


 おお、なんと都合の良い。


 人材と資材の問題が、一気に解決するじゃあないか。


「ミリア。ココ。俺は出かけるぞ」


「……どちらへ行かれるんですか?」


「行き先はカイ・パゴス。ドワーフを何人か雇ってきて、ついでに魔石・魔鉱石を回収しに行って……き……ます……」


 ごごご……! とミリアの体から、魔力が立ち上る。


「ひぃい! ぼっちゃまぁ! ミリア様を怒らせちゃだめでしょー!」


 ココが俺の体に抱きついて、ガタガタと震える。


「な、なんで怒ってるんだ、ミリア?」


「……そんな危ないところに、レオン様がお一人で行こうとしてるからです」


 一人で行こうとしたのバレてるのか。


「だってこっから船だとひとつき掛かるんだろ? でも飛べば一瞬だよ」


「……なりません! 空中でワイバーンにぶつかったらどうするのですか!?」


 ミリアはココから俺を引き剥がすと、ぎゅーっと力強く抱きしめる。


 大きな乳房が、俺の顔に当たってぐんにゃりと形を変える。


 花のような甘い匂いと、眠くなるような温かく柔らかな感触……。


「ミリア様は心配性ですねー」

「……海に沈めましょうか?」


「ごめんなさいなんでもないでぇす!」


 ……とにかく、ミリアは俺が海外へ一人で行くことに、反対のようだ。


「しかし飛行魔法は、俺でしか飛べないぞ……」


 さてどうしよう……?


【解。まお】「そうか! 魔王に運ぶのを頼めば良いのか!」


 魔王ウルティアは雷獣だ。

 空を凄い速さでかけることが出来る。


【…………】


 あれ? 回答者さん?

 どうしたんですか、だんまりして。


【解。なんでもありません】


 いやでもなんか不機嫌そう……。

 ハッ! そうか、俺が自分で正解を導いたのが、気にくわないのか! そうだよね!?


【解。違います】


 そうだよね!?


【解。違うったら違うと言ってるでしょう。それ以上追求してきたら怒ります】


 どうしよう、いつもクールな回答者さんが怒ってる姿、見てみたい気もする……。


 まあそれは冗談として。


「ミリア。おまえがそんなに心配なら、ついてくれば良い。ウルティアならカイ・パゴス行きを快諾してくれると思うが?」


 ミリアは凄い渋った後……。


「……わかりました。では、私も同行することで、手を打ちましょう」


 かくして、俺は魔道具作成の人材と資材確保のため、ドワーフの国へと向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る