12.国王からも大絶賛される
俺は魔道具ギルドを立ち上げた。
趣味でやっていただけのことが、一大事業へと発展して、正直ビビってる。
まあ、なんだかんだで魔道具作りは面白いしな。
それが金になるなら、更なる活動の幅が広がるってことで、よしとしよう。
ポジティブシンキングだ。
「さて、レオン。これからのことだが」
俺とデネブ第二王子兄さんは、教会本部を出る。
「組織を運営していく上で必要なものはなんだとおもう?」
「うーん……金?」
にっ、とデネブが笑う。
「正解。さすがレオン。どこぞの第一王子とは違って、賢いな」
わしわし、と兄さんが俺の頭をなでる。
肥満体質のデネブ兄さん。
クリームパンみたいな手でなでられるのは……結構好きだ。
俺、前世では兄がいなかったし、兄貴のいる生活って憧れてたからさ。
だから嬉しいんだよね。
「材料費、建築費、人件費……何にしても組織を運営していく以上、資金は必要だ」
「そうだね。どこから資金を引っ張ってくる?」
にやっ、と兄さんが邪悪に笑うと……。
「そんなもん、
ややあって。
俺は王都にある王城……。
つまり、実家へと帰っていた。
謁見の間へと、俺とデネブ兄さんは通される。
毎回思うけどやたらめったら広いな。
大学の講堂なんて比じゃないくらい広い。
「レオンハルト、久しいな」
「お久しぶりです、父上」
「お前の活躍はわしの元にも届いて居るぞ。凄いな、レオンよ」
厳つい顔つきのおっさんが、ニッと笑う。
親父は結構忙しい。
季節のイベントでも、同じ会場にいても会えないくらいだ。
分刻みでスケジュールとか入ってるんだとさ。働き者だなぁ。
「父上。ご機嫌麗しゅう」
「うむ。デネブよ。お前は……もうちっと痩せる努力をしなさい」
「うぐ……ぜ、善処します」
でっぷりと出た兄さんの腹は、だらしがない。
けれど俺は、兄さんが痩せれば、美形になるんじゃなかろうかとにらんでいる。
顔の作りはアルフォンス
背も結構高いし。
頑張れ兄さん、モテモテロードはもうすぐそこにあるぞ。
「して、レオン、デネブよ。なにをしに参った?」
……うーん、こういうの苦手だ。
プレゼンって言うの?
それを見かねたデネブが、俺にこっそり耳打ちする。
「……レオン。交渉ごとはボクに任せろ。貴様は最後に」
ごにょごにょ、と軽く打ち合わせをする。
それくらいなら、まあ俺にもできそうだ。
「父上、実は本日は資金援助をお願いしたく」
デネブは俺が付与魔法を披露したところから、魔道具ギルド立ち上げるに至るまでの物語を、簡潔明瞭に話した。
第二王子は、たしかに見た目こそ悪いが、しかし口は上手いし頭の回転もいい。
「ということで、資金の援助をお願いしたくはせ参じました」
「なるほど……お前の言いたいことはよくわかった」
父上はご機嫌な調子で、俺を見て言う。
「よくやったな、レオン。さすがだ」
「え? 俺? 何かしちゃいました……?」
デネブが呆れたように言う。
「レオン、おまえはとんでもないことしたんだよ」
「マジで!? え、うそ……怒られる……?」
「逆だ逆」
くくくっ、と父上が笑う。
「レオンよ。こちらへ参れ」
「あ、はい……」
何されるんだろう。怒られないとは思うんだけど……。
父上の前にやってくると、向こうから、頭に手を載せてきた。
「見事だレオン。お前は我が国に、多大なる利益をもたらすことになる。さすが我が息子だ」
ぎゅーっ、と父上が抱きしめてくれる。
中身おっさんの俺からしたら、気恥ずかしいことこの上ない……。
だが、なんでだろうな、家族からのはぐって、心地よいというか……。
「マジっすか父上……なんで?」
【解。マスターは……】
「ボクが説明してやろう」
【…………】
あれ、回答者さん? 今、何か言いかけてなかったかい?
【解。ファ●ク】
回答者さん!? 放送禁止用語言ってません!?
え、怒ってる? 怒ってるよね絶対!
【解。シ●ト】
ほらぁ怒ってるぅう!
「いいかレオン。この世界で魔道具を作れるのは、三魔工房だけといったな」
「確か付与魔法の使い手が、3人しかいないんだっけ?」
デネブ兄さんがうなずいて説明を続ける。
「使い手は3人、だが全員このゲータ=ニィガ王国の国外にいるんだよ。しかもどれもが国のお抱えとなってる」
「はーん……なるほど。そいつらに魔道具作成すると、余計に金がかかるわけか」
ただでさえ魔道具は作り手が少ないゆえに希少価値が高く、値段も相応になってくる。
そこに利権問題などが絡むことで、更なる出費がかさむって訳だ。
「一方で今回、レオン、貴様がこの国のお抱え魔道具師となれば、自前で魔道具の生成ができる。さらに他国からの注文が入れば国が潤うってわけだ」
デネブの説明を聞いて……。
「え、それって……結構ヤバくない?」
「ヤバいところではない、勲章ものだぞ」
兄さんに言われて、ようやく事態が飲み込めてきたぞ!
あわわ、やばいなんかやばいことになってる……!
「レオンハルトよ。そう難しく考えるでない」
父上は笑顔を浮かべて、俺を抱き上げ、膝の上に乗っける。
「おお、大きくなったな……。立派になったものだ」
慈しむように、父上が俺を抱きしめてくれる。
滅多に会えない父親だけど、ちゃんと愛情は伝わってくる。
子供達各々に、ちゃんと愛情を注いでくれてるのは……ほんと凄いと思う。
「レオンよ。見事な働きだ。わしはお前の父として、誇りに思う。生まれてきてくれてありがとうな」
ぎゅっ、と父上が俺を抱きしめる。
なんだか照れくさいぜ。
けれどこうして親が俺に期待してくれてるのは、悪くないし、褒められるとうれしいな。
「デネブよ。資金援助の件、もちろん承諾しよう」
「ありがとうございます!」
ぐっ、とデネブがガッツポーズを取る。
父上は俺をおろし、居住まいを正すと、まっすぐに俺を見て言う。
「レオン。おまえには宮廷魔道具の称号を与える」
「ほへ……? きゅ、宮廷……魔道具師……?」
何か聞いたことない単語がでてきたぞ?
で、でも宮廷って……ことは……。
「おめでとうレオン。貴様は国のお抱えとなったのだ」
つ、つまり……国家公務員ってことか!
え、えええっ!? 俺、まだ6歳だぞ?
「使える人材に年齢は関係ない。レオンハルトよ、それほどまでに、お前は凄いということだ」
「良かったじゃないか、レオン。父上も貴様の有能っぷりを認めてくださったってことだ」
マジか……六歳にして一国の王に認められるなんて……。
「これはもう次期国王はレオンで決定か?」
「いやいや、兄さん! それはアルフォンス兄さんに悪いよ!」
何言ってるんだろうかこの第二王子は!?
けれど冗談じゃない様で言う。
「あんなバカ王子より、貴様の方がよっぽど優秀で頭も良い。腕っ節も強いんだろう? なら言うことない。なぁ、父上」
「ふむ……」
いやふむって!
「そんなのアルフォンス兄さんが許さないよ……」
「おれはいいぞっ!」
ばーんっ! と謁見の間の扉が開くと、アルフォンス第一王子、および末っ子であるラファエル第十四王子が入ってくる。
「レオン! 聞いたぞ! 魔道具師として認められたのだってな!」
黒髪の大男は俺を抱きかかえると、ぎゅーっとハグしてくる。
「ぐえええ……」
「すごい! さすがだぞレオン! すごい!」
「ちょ、ちょっと離して……」
ハグされてる俺を、ラファエルがキラキラした目で見てくる。
「さすがですにいさまっ! 尊敬しますっ!」
「あ、ありがとう……」
アルフォンスが俺を解放してくれる。
どうにもこの王子、パワーがありあまってるようだ。
「おれはレオンが王になっても一向に構わんぞ! 頭脳労働は嫌いだ!」
「いやいや」
「だってよ、レオン。ボクも貴様が王になるのには賛成だ。よっぽどこの国の未来は明るいし、貴様はリーダーに向いてるすごいやつだよ」
「いやいやいやいや!」
アルフォンス、デネブのブラコン兄たち……。
「にいさまが作る国なら、きっと立派な、すごいお国になるとおもいますー!」
「いやいやいやいやいや! ないない! ねえ、父上!」
父上は笑顔で、うむ、とうなずく。
ほら、父上も反対してる……。
「検討しよう」
「いや大賛成なんかい!」
まあ、何はともあれ。
俺は国からの資金援助をもらえることになった。
そのかわり、俺はこの国ただ一人の、宮廷魔道具師として、就任したのだった。
ろ、六歳ですよね、俺……?
まだ、ねえ……?
【解。草】
回答者さんやっぱ怒ってるじゃんかー!
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