11.ギルド協会で子ども社長、爆誕す
俺は第二王子デネブとともに、王都にあるギルド協会本部へとやってきた。
ロンドンとかにありそうな、馬鹿でかい、かつシュッとした建物だった。
中に入るとどこぞの超有名企業のビルかって思うくらい、なかが広く、かつ、吹き抜けになっていた。
「デネブ兄さん。ギルド教会本部って、何してるとこなの?」
俺の前を歩く太っちょ王子が、ふんっ、と鼻を鳴らして説明する。
「この世界にある数多のギルドを束ねる組織だ」
「ギルドってそんなに種類あるの?」
「ああ。冒険者にはじまり、錬金術師、魔術師、商業。それらギルドの大本が、このギルド協会本部だ」
それぞれ独立した組織かと思ったのだが、一本化されてるんだな。
「これから何するの?」
「協会本部長に、4つ目の魔道具ギルドを作らせる」
デネブが受付へと向かう。
2,3、受付嬢と何かを話すと、すぐにOKが出た。
受付嬢に連れられ、俺たちは本部の建物の最上階へと通された。
「これはこれはデネブ殿下! ようこそいらっしゃいました!」
出迎えてくれたのは、50くらいのおっさんだった。
白髪交じりの頭。
この人がギルド協会の偉い人なのか。
「本部長。すまないな、アポもなしに」
「いえいえ! ささ、どうぞお座りください! お茶を煎れますので!」
本部長がペコペコとデネブに頭を下げている。
まあ第二王子って立場もあるんだけど、なにか仕事上の繋がりでもあるんだろうな。
そういえばデネブ兄さんがどんな仕事してるのか、俺、知らなかったわ。
【解。デネブ王子は……】
ま、どうでもいいや。
【…………】
あれ、回答者さん? 何か言った?
【解。ばーか】
あれ!? 回答者さん!? 怒ってます!?
【解。キレてません】
怒ってるよこれ……ええ、なんでや、なんで回答者さん怒ってる……?
【解。ばーか】
……ああ、もう。それは後にしよう。
「おいレオン。聞いてたか?」
「え、ごめん兄さん。何も聞いてなかった」
はぁ……とデネブ兄さんがため息をつく。
「今ギルド協会本部長と話を済ませた。魔道具ギルド、新設の件、OKだそうだ」
「へー……。え? ギルド? なんでギルドなんて作るの?」
「貴様は世界でたった4人しか居ない、付与魔法の使い手だ。魔道具ギルドのギルマスになる条件を満たしてるんだから、なっといたほうが何かと都合が良い。特許の関係も、ギルマスになっていれば色々と融通してくれる」
あ、あれ……?
ちょっと……変な流れになってません?
「に、兄さん……話聞いてると、なんか俺が新しいギルドを作って、そこのトップになるみたいな感じになってない?」
「なってるよ。何を聞いてたんだ、まったく……能力があるくせに、興味ないことに関しては無関心だから……」
え、ええー!?
いや、え、え!?
ギルドのトップになるって……それって……。
「俺、6歳で社長になるってこと!? しかも、会社まで立ち上げる!?」
「しゃちょ……? よくわからんが、ギルドのトップになるってことだ」
まじかよ……6歳で社長とか、やばすぎんだろ……。
「あのぉー……少々、幼すぎるのではないでしょうか……?」
俺が恐る恐る言うと、ふんっ、とデネブが鼻を鳴らす。
「貴様は年齢と中身が一致してない。大丈夫だろう」
「はぁ……あの、能力テスト的なものは、いらないの?」
俺が尋ねると、ギルド協会本部長はうなずく。
「確かに。いくらデネブ殿下の弟とは言え、能力は確認しておきたいですね」
「そうだな。おいレオン。何かお前の力を示すものはないか? 付与魔法でも良いし、魔道具でもいいぞ」
ううーん……どうしよう。
正直、ギルドを立ち上げることに対して、モチベが上がらない。
ハッキリ言って、めんどくさい。
魔道具を作るのは楽しいけど、あくまで趣味の延長だ。
魔法を極める上での副次的なものであって、俺がやりたいのは、別に社長になることでも会社を経営することでもない。
……適当に手を抜いて、しまうかな。
「言っとくがレオン、貴様の魔法の腕が卓越していることはボクが知ってるからな」
う……手を抜けない状況。
じゃ、じゃあそうだ……こうしよう。
魔道具だ。
エアコンとこたつは、偶然の産物ってことにしよう。
あんまり凄くない魔道具を見せて、なんだたいしたことないな……と思わせる。これでいこう。
ごめんデネブ兄さん。せっかく用意してくれたけど、俺は魔法を極める方がいいんだ。
俺は収納魔法を使って、手のひらに1つの、時計を出現させる。
「で、で、殿下!? い、今レオン様が……!」
「まあそこはスルーしておけ。……レオン、これは、なんだ?」
俺はわざと自信たっぷりに言う。
たいしたことないものを、自信ありげに言うことで、無能ムーヴするのだ。
「腕時計です!」
ふふ、腕時計なんてありふれたもの程度しか作れないって……失望されることだろう。
「す、す、凄すぎるぅうううううううう!」
「え?」
ギルド本部長が、腰を抜かす。
「ま、まさか時計を!? お、お一人で!?」
「え、うん」
「どうやって!?」
いやぁ、前世では工作が趣味だったからさ。
時計の内部構造とかも、ちゃんと調べてたんだよね、趣味で。
「錬金の魔法を使ってパーツを作って、動力は魔法で……って、どうしたの?」
デネブ兄さんも、そして協会本部長も、唖然とした表情になっていた。
だがすぐにデネブはニヤリと笑う。
「手続き、進めておけ」
「かしこまりましたぁ!」
ふっ、とデネブが笑うと、俺の肩に手を置く。
「期待してるぞレオン。その調子でドンドン有名になってくれ。そうすれば、推薦したボクの株もあがるってもんだ」
「え、は? え、どういうこと?」
回答者さーん、たしゅけてー!
【…………】
無視してきやがった。
ああこれ拗ねてる!
ごめんて! 有能な美人の回答者さん!
【解。この世界における時計の価値は計り知れません。精密な時計細工というのは手先の器用なドワーフにしか作れず、しかもここまでコンパクトな時計はそのドワーフにすら一部の名工名匠にしか作れない代物。そもそも時計の価値が高い上に、この時計は動力に魔力を使っています。魔力による時計などこの世界においては存在せず……】
長い長い!
簡単にまとめて!
【解。腕時計を作ったことで、マスターのレベルの違う有能さをアピールしてしまったということです】
まじかよー!
「レオン殿下! 魔道具ギルドの申請を通して参りました!」
「早すぎぃいいいいいいいい!」
ギルド本部長もなんかにっこにこだし!
「ギルド名はあとで決めるか。おめでとう、レオン。今日からおまえは、魔道具ギルドの、ギルドマスターだ」
デネブ兄さんがニヤリと笑って言う。
「しっかり活躍してくれよ。後見人であるボクの株もこれであがるしな……くくく!」
「いやあの兄さん……俺、ギルドとか興味ない……」
「ああそうそう。魔道具ギルドは全世界から注文が来る。そうすれば他国の所有してる魔道書とか、宮廷魔法使いと知り合いになれて、海外の魔法を学べる機会も……」
「やりまーす!」
かくして、俺は6歳で社長……もとい、魔道具ギルドのギルドマスターとなったのだった。
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