07.魔王との謁見と嫁ゲット
俺は魔王にまぬかれて、城へと案内される。
魔族に案内されて、一番奥の部屋へと通される。
バカ広いホールの奥に、赤いドレスを着た、長身の美女が、けだるげに玉座にかけていた。
黄金の長い髪に、切れ長の瞳。
そしてグラビアアイドルなんて比じゃないくらいの、大きな胸。
そして頭からは、可愛らしい猫耳。
綺麗なお姉さんだな。この人が魔王なのか?
あ、そうだ、初対面だし挨拶しないと。
「どーもこんちは!」
俺がその女に声をかけると……。
『このばかちーーーーーーーーん!』
突如、頭上から少女のきゃんきゃん声が聞こえる。
ぽかっ、と叩かれる。
「おお! 妖精か!」
俺の目の前には、フィギュアみたいな大きさの少女がいる。
背中からは虫のような羽、あわくピンクに輝いている……。
『んなっ! あんた……アタシが見えるの!?』
妖精が俺に驚愕の表情を浮かべる。
「え、見えるけど?」
『……上位妖精は、魔法適正の低い人間には見えないはず。アタシが見えるってことは……そうとう……』
ぶつぶつ、と妖精がつぶやく。
しかし……へえ! これが妖精か!
初めて見るなぁ。妖精って魔法が色々使えるイメージがあるし……!
是非ともお近づきになりたいな!
「も、もうちょっと調べさせてくれない? 特にその妖精の羽って、確か魔法アイテムなんだろ?」
俺がにじり寄ろうとすると……。
『ふぎゃー! 近寄るんじゃあないわよー! 焼き尽くすわよ!』
「【ドロシー】。それくらいにしてやれ」
玉座に座るが魔王、穏やかに笑う。
「ドロシー? 君の名前か! よろしく俺レオン!」
『ふーんだ! だーれがあんたとよろしくするもんですかー!』
んべー、と
「初めまして、矮小なる種族の子よ」
「どうも。俺、レオンハルト。あんたは?」
『口の利き方に気をつけないさい!』
ふしゃー、とドロシーが歯を剥いて言う。
『このお方は【ウルティア】様! 魔なる者たちを束ねる王なのよ! 頭が高いわ!』
やっぱり魔王なのか、このお姉さん。
「よい、ドロシー。相手は子供だ。多少の無礼は許そう」
『ウルティア様……ぐぬぬ、あんた、ウルティア様に感謝するのね!』
もっと怖いイメージがあったけど、すごい穏やかそうだ。
「さて、小僧。魔王の城へ来たのだ、何かよほどの理由があるのだろう? 聞いてやるから、ほれ、申してみよ?」
おお、話聞いてもらえそうだな。
けど……ううん。
「なあウルティア。小僧じゃないよ。俺は、レオン。レオンハルトだ」
ぽかん……とウルティアが目を丸くする。
え、なに?
『こ、こ、こんのばかーーーーーーー!』
妖精ドロシーが俺の元へ飛んできて、顔をぽかぽかと殴る。
『ウルティア様は魔王なのよ!? 人間ごときがそんな口効いて! 死んでも知らないからね!』
すくっ……と魔王が立ち上がる。
「いや、大丈夫でしょ」
だが魔王はスッ……と表情を険しくする。
「……口の利き方が、なってないようだな」
バチバチッ、とウルティアの体から雷が走る。
ずがあああああああああああん!
落雷とともに……そこにいたのは、雷を纏う獅子だった。
『ひぃいいいいい! ま、魔王様が真のお姿にぃいいいいいい! あんた、逃げなさい! 魔王様、この土地を地図から消すつもりよ!』
確かに凄まじい魔力量だ。
あれ、モンスター?
【解。魔王ウルティア。種族は雷獣。神獣の一種です】
「雷獣……なんか俺の世界にも、そういう妖怪いたような。てか、神獣?」
【解。この世界に存在する、神と同等の力を持った獣、あるいは神から力を与えられた獣のことを指します】
なるほど……神の力を持つ魔王か。
『怖いでしょ! 恐ろしいでしょ! 逃げなさい!』
「いや……わくわくするな!」
『なぁああんでよぉおおおおおお!?』
ドロシーが目を剥いて叫ぶ。
『あ、あんた頭おかしいんじゃないの!? 相手は魔王で、神獣なのよ!』
「え、だからなんだよ」
俺は大剣を構える。
「元より俺は、魔王と一戦交えるつもりで、ここに来たんだからな」
『ま、魔王と戦うですってぇえええええええええええええ!?』
めっちゃ驚くなこの妖精の子。
『くはは! 面白い小僧だ! わらわの一撃を耐えられたら、話を聞いてやろう』
「え、勝たなくて良いのか?」
『くぅうううははははははっ! いいな! 面白いぞ貴様! 気に入った!』
バチバチバチ……! と雷獣の姿のウルティアの、体全体から雷がほとばしる。
『食らうがよい、わが【神の雷】!』
ウルティアは体から、凄まじい量の雷を発生させる。
ずががああああああああああああああん!
前世の俺が見た、神の雷。
それを遥か凌駕する威力。
だが……俺は怖くない。
むしろドキドキしてるね!
『あ、あああんた、この状況で笑うとか、イカレテルわよ!』
「だって、魔法力がすごいってことは、たっくさん魔法を知ってるってことだろ! わくわくするぞ!」
『ひぃいいいいい! 死んだぁああああああああ!』
襲い来る雷を前に……。
俺は剣を……槍を構えるようにして、持ちなす。
「【
槍を突き出すかのように、俺は剣を思いきり突き出す。
その衝撃波はまさしく、真空の槍となって、押し寄せる雷の槍を……穿つ。
『うっそぉおおおおおおおおおお!?』
驚くドロシーをよそに、真空の槍は雷獣へと向かって飛ぶ。
ザシュッ……! とその眉間に槍が突き刺さる。
『ま、ま、ま……』
「ま?」
『魔王様に、一撃入れたですってぇえええええええええええ!?』
ドロシーが大声で叫ぶ。
『く、くくくく、あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーはっはっはーーーーーーーーーーーーーー!』
雷の獣は、腹の底から笑い出す。
それは城をぐらぐらと揺らすほどだった。
『面白い! 実に、愉快だ!』
なんか楽しそうだな、あの魔王。
一方で……ぺたん、とドロシーが、俺の頭の上で尻餅ついてる。
「どうしたの?」
『あり得ないわよあんた! 魔王様の魔法を打ち破っただけじゃなくて! 体にダメージを入れるなんて、前代未聞よ!』
「え、そうなのか?」
『そうよ! 何世紀も、ウルティア様は上昇無敗、その体に傷一つ負わせることはなかったんだからね!』
はー……そうなんだ。
「へー」
『いや、へーって……あんた、やばいわよ……規格外すぎる……なんなの?』
「ただのレオン。ふつうの五歳児だ」
『いったいどこのふつうの五歳児が、魔王の体に傷を付けられるっていうのよ!』
「え、ここにいるけど?」
『やだもぉおおおおおおおおおお!』
ぽんっ、とウルティアが人間の姿へと戻る。
赤いドレスを翻し、金髪をたなびかせながら、俺の元へやってくる。
「小僧。名は?」
「レオン。レオンハルト」
「レオンハルトか……わらわはウルティア。そう呼べ」
「わかった、ウルティア」
にっ、とウルティアが俺を見下ろして笑うと……。
抱っこして、ぎゅーっとハグしてきた。
『んななっ! 魔王様!?』
「わらわはレオンハルトを気に入った。婿にする」
ぽかーん……とドロシーが口を大きく開くと……。
『む、む、婿ぉおおおおおおお!?』
「え、やだ」
『やだぁあああああああああ!?』
なんか驚きまくってるな、この妖精。
「くふふっ♡ なんでだ、わらわと結婚すると、次の魔王になれるのだぞ?」
「魔王とか興味ないんで」
俺が知りたいのは魔王の使う魔法であって、別に魔王になりたくない。
「よい、よいぞ。わらわはいっとう、おぬしのことが気に入ったぞ、レオンハルト」
むぎゅーっ、とウルティアが俺を抱きしめてくる。
体は子供なので、完全に母親とか姉が、子供を抱っこしてるようだった。
『し、信じられない……人嫌いのウルティア様が、人間を好かれるなんて、しかも婿に取りたいっていうまで……なんなの?』
「レオンハルト。おぬしはナニをしに来た?」
「あ、そうだ。治癒魔法おしえてくれよ。俺、魔法が知りたいんだ」
にっこり、とウルティアが笑う。
「良い良い♡ 好きなだけ教えてあげよう。わらわの使う、魔王の秘術を」
『ええー! ウルティア様、いいんですかー!?』
ドロシーが叫ぶと、ウルティアはうなずく。
「無論だ。こやつはわらわの婿だからな」
「いやだからお断りしたってば」
「なに、それはまだお互いをよく理解してないからだろう? これからじっくり時間をかけて、仲を深めていけばよい♡」
ちゅっ、とウルティアが俺の頬にキスをする。
「まあいいや、今はそれで。治癒魔法を教えてくれ。弟の病気を治したいんだ」
「ふむ……よかろう。ドロシー、出かけるぞ」
『で、出かけるって……どこにですかー?』
ウルティアはさも当然とばかりに答える。
「人間の街へ。レオンハルトの弟の居る場所にな」
こうして、俺は魔王と謁見を果たし、協力を取り付けた。
……そんでもって、なぜか魔王が嫁になった。なんでじゃ?
【解。はぁ~……】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます