第2話

 ミサキには別に俺に承諾を求める意思はなかったと思う。何故って、俺の返事を待たずに、唇で唇を塞いできたからだ。実のところ、男とキスをするのはこれが俺にとって初めてである。尾花とはしたことがないので。する理由もないし。


「んっ……先輩ってやっぱり、思ってた通りだ。とっても美味しい。それに、とっても上手」

「それは光栄だね」


 99%がた間違いなくほとりの薫陶の賜物ではあるのだが、それは黙っておく。


「先輩は……あたしを、どうしたいですか?」


 言葉による焦らしと、深いところに響いてくる心理的な揺さぶり。こいつは、ほとりとはまったく違うタイプの、しかし“女”であった。


「見たい。脱いで」


 そう言ってみた。いや、どこからどういう具合に脱ぎ始めるのか、そこに興味があったもので。結論から言うと、そう言われたミサキが脱ぎ捨てたものは、先走りの汁でてらてらに濡れたアンダーウェアだった。つまり、下半身を覆っていた、一番肌に近いやつ。


「あたし、恥ずかしい……」


 といってもまあ前についてるものは俺のと同じ種類のやつで、そして実の所割と凶暴な外見をしているのだが、しかし、なんて言ったらいいのか、その姿は不思議と俺の情欲をそそった。


「自分の手で、してごらん。恥ずかしいことを」


 我ながらノリノリだなあ、と思わないではないのだが、もうここまできたらいっそこの状況のすべてを楽しまなければ嘘であろう。


「先輩……切ないです……見てるだけなんて……ひどい……」

「じゃあ、どうして欲しいんだ?」

「犯して……あたしのこと、めちゃくちゃに……あたしのいやらしいところを……」

「何処に何を?」

「あたしのおしりの穴を、あなたのペニスで、突いて、突いて欲しいです……! お願い、切ないの……!」

「よく言えました」



 というわけで、求められた通りにしてやった。ミサキは即座に精を放った。トコロテンとか言うんだっけ、こういうの。で、俺も(もちろんゴムはしているが)内部で放出し、すっきり。お互い気は済んだので、あとはダベる。男女のピロートークのような甘いものにはならなかった。



「あーっ、気持ち良かったー。やっぱ、たまにはウケにも回らないとね。しゃぶらせて突っ込むばかりがセックスじゃないからさー」


 あ、そう。


 で。


 それから三年の歳月があっという間に過ぎ去った。俺はほとりと結婚し、このあいだ子供が産まれた。玉のような女の子だった。しかし。


 ほとりに対しては秘密だが。


 あの二人との関係は、ごくたまーにだが。実はまだ続いているのです。

 

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新機軸、新宿二丁目。 きょうじゅ @Fake_Proffesor

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