第21話 臨時ボーナス
俺たちが屋敷の外に出ると、そこには大軍勢。
さっきまで晴天だった空は真っ黒な雲に
「一応、聞いておこう。何者だ貴様?」
マロニーさんが、良く通る澄んだ低めの大きな
すぐに魔族軍団の中心部辺りから、イラッとする感じのチンピラ
「なんだテメエ片目野郎が! このキリヤ様に向かって馴れ馴れしく名前を聞こうとしてるんじゃねえ!」
……バカなのかな?
名前を聞かれるのを怒ってるのに、先にキリヤって自分で言っちゃってるよ。
ていうか、こっちは誰がボスなのかすら分からなかったのに、これで一発判明したし。
声の出どころを見る。
そこには肌が青くて頭の横から角が生えてる以外は、チンピラチャラ男そのものな奴がいた。
見た目は大したことなさそうだったけど、何となく
そう思った時、マロニーさんから指示が来た。
「洋児くん、君の解析チートで相手のデータを見れないか?」
「あ、そうか」
そ、そうだった!
こんな時に使わなくて、いつ使うんだよ!
イ・キリヤ・ロウ(
メインロール:ヴィラン
職業タイプ:タンク
これだけ?
つか、なんで名前が二つ表示されているんだ?
しかもチートの説明がちょっとしか出てこないよ!?
「変ですマロニーさん、アイツの情報がほとんど出てきません。名前も二つ出ているし」
「二つ!? どんな名前がどんな風に表示されているんだ洋児くん!!」
「え? えっと、ひとつはイ・キリヤ・ロウって異世界風の名前で、その後ろにカッコで
奴の名前が二つ表示されている事に、えらく食いついて来たマロニーさん。
それに
それを聞いたマロニーさんはさらに俺に
「そいつの名前に星マークは付いてないか!? 日本人名のところだ!」
「え? い、いや何も付いてませんけど……」
その俺の返事を聞いて、マロニーさんはキリヤと名乗った魔族を
その真剣な表情に少し不安になった俺。
思わず目の前の片目エルフに尋ねた。
「あ、あのマロニーさん。アイツの名前がどうかしたんで──」
そのとき俺は、例のマロニーさんの右目と左手を奪ったという転生者の弟の事を思い出していた。
マロニーさんのこの表情、もしかして……。
「ビンゴだ! こんな所で賞金首の転生者に出会えるとはな、思いもよらぬ臨時ボーナスだぜ!!」
「へ!? あの〜マロニーさん?」
こちらの予測と全く違う反応。
さっきの顔とは一転、
臨時ボーナスって……。
という俺の困惑に気付いて、マロニーさんが説明をしてくれた。
「ポンコツ達が作った転移転生機の初期不良事件を経てからな、
「え? 俺はてっきり、コイツがマロニーさんの目と手を潰した弟さんかと……」
思わず
しかしマロニーさんはそれを聞き逃さなかったようだ。
「ミトラは──弟はキッチリ殺した。生き返る事も転生する事も無い。心配すんな」
弟の名前はミトラっていうのか。
しかしその情報を
見るとそこには慣れ親しんだ、陰陽道に使う呪符が数枚。
俺はマロニーさんに再び顔を向けた。
「その呪符を中心部の地面に貼れば、結界が発生するんだろう? ちょうどココが中心だ、頼むぜ洋児くん」
「は? いやなんでマロニーさんが俺の呪符を!? っていうか結界張る外周にも呪符を貼らないと……」
「もう貼ってる」
「ええええ、いつの間に!?」
「さっきトイレを探している時に、ちょいちょいとな。まさか使う事になるとは思わなかったが」
あの時か!
やたらトイレの場所にこだわるから、何なんだと思ってたけれども。
しかも知らないうちに俺の呪符を持っていた事といい、油断も
「
例の何ちゃらプラガットさんが文句を言っている。
うん、あなたの気持ちはよーく分かります。
……っとと、そんな
俺は呪符を手に持ち、構えた。
「ったくアンタの事だから、どうせ呪符の配置もキッチリ出来てるんだろ? 見せてやるよ、ウチん
叫んで俺は、渡された呪符のうちの一枚を地面に叩きつける。
すぐに呪符に込められた力が広がり、マロニーさんが配置した外周の呪符が起動。
この屋敷の周囲を、薄く輝く光のドームが包み込んだ。
俺に、俺たちに、敵意を持つ者の呪力・魔力を
ついでに外部から援軍が来る事も、ここから逃げる事も出来なくなるんだぜ!
思った通り、キリヤも、不快そうな表情を浮かべた。
ざまあみろ。
「チッ、何だこりゃ。こんなチンケな術なんざ消し飛ばしてやるぜ!」
キリヤはそう叫ぶと、右手をグイっと上げた。
途端に引き連れた周囲の手下魔族が何人も苦しそうな顔になって、喉元を
その時になって初めて俺は、ヤツの両手から伸びる大量の
それが全部周りの魔族の首輪に
「
黒澄さんが見た目に似合わない声で叫んだ。
よく見るとキリヤは
その御輿を担いでいるのは……。
辛そうな表情の、たくさんの小さな子供の魔族。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます