ケトーの系譜

 エルフに類する種族の特徴として魔素の知覚能力の高さと、静的な生物…植物等との親和性の高さが上げられる。

 そんなエルフの知覚能力は非常に高い、魔素の知覚能力が高い為、魔素の揺らぎを感覚的に理解出来る為に、五感で感じることが出来る以上の情報に触れることが出来る。

 また、魔法行使の適性が高い固体が生まれることが多く、魔法を使用した知覚も得意である。

 だが、それでも此方の技術で不可知化し隠蔽を施した、人型の偵察機を察知することは出来ない。

 魔法・宗教・科学の垣根が最早ないと言って良い程に発達した技術は、この惑星に存在する文化レベルでは到底届かない領域に存在している。

 言語に関しても、データさえ取ることが出来れば、数時間もすればある程度翻訳することが出来る様になる。

 この言語データは順次アップデートして、私がこの惑星を旅するときに活用する。


 空が茜色に輝く時分、エルフ達は保存食を取り出しながら、各々の死角を気にしながらも休憩を取っていた。

「あの黒い壁、あれは一体何なのだろうな?」

「それが解れば悩むことはない」

「そうなのだがな」

「あれだけ近づいても反応がなかったのだ、既に放棄されているのではないか?」

「そうなると、例の落下物とは無関係だと?」

「そもそも、あれだけの物が我らに気付かれずに建てることなど出来るのか?」

「そうだ、そこが問題だ」

「この森はハイエルフ様方が管理している森だ、しかも、そのハイエルフ様方が御座おわす領域から、山を隔てて直ぐ反対側なのだぞ。

 それで、誰にも気付かれずに建てられるものか」

「確かに、あれだけの建造物、相応に建造に時間が掛かるはず。

 誰も気付けないというのは可笑しな話だ」

「前回森を見回ったのは何時か?」

「一月も経っていないと思うが」


「色々と困惑しているようだね」

「はい、マスター。

 私達と彼等の間には隔絶した技術が存在しますから、想像出来ないのでしょう。

 この拠点が一週間程度で築かれたものだとは」

 人型偵察機から送られてくる映像を見ながら、ピオニアとネートは言葉を交わしていく。

「それはそれとして、エルフ種としては比較的ポピュラーなタイプだね、彼等は」

「そうですね、ハイエルフを信仰の対象にして精神的主柱とし、豊かな森の恵みを享受して生活を営んでいるようです。

 また、見た目に関しても華奢な体躯に笹穂耳と、ケトーの系譜と推測されるエルフの特徴が見られますので、ちゃんと鑑定をするまでは確定ではないですが、おそらく、ケトーの系譜かと」

「ケトーねぇ…、私も一応ケトーの系譜って話だけど実感ないね」

「現在確認されている、ケトーの系譜で、知識・技術を引き継げている組織・個体は確認されていませんから、そういうものですよマスター」

「まぁ…ね、そうなんだが。

 宇宙崩壊を生き延びる為に精神生命体になって、宇宙が新たに生まれて受肉して。

 こういった事が何度も繰り返されているのではないか…

 この広い宇宙で、それこそ数える程にしか見つかっていない遺物と、宇宙に類似している種族が何故多く発見されるのか、これの答えとしてケトー論がある訳だけれど、今一信用出来ないよね」

「ですと、他のクローン説や、奴隷種族説または奉仕種族説等の方を信じますか?」

「それもそれでな~」

 特に気になる情報が出なくなって来ているが確認だけは怠らず、目の前のエルフとは直接関係のない、雑多な話をしながらピオニアとネートは映像を見ていた。

 この間も仕事を熟しながら。

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