最後の最後
結末
第33-1話 「体が勝手に」
「へぶしっ‼︎」
椎川を見つけた俺は衝動のまま後方から抱きついた。
冷静になって考えてみれば急に後方から抱きつかれれば驚くのは当然で、抱きついてすぐ椎川から強烈な一発をお見舞いされた俺は一歩だけ後ずさりし両手で頬を抑えた。
「あ、新谷ん!? 何やってるの⁉︎ 急に抱きつくとかどうかしてるんじゃない⁉︎」
「す、すまん。体が勝手に」
「か、勝手に女の子を襲うような人だったんだ。新谷んって」
「椎川じゃなきゃこんなことしてねぇよ」
「なっ……何それ」
椎川は赤面しているが、自分でも恥ずかしい言葉を口にしているのは理解している。こんな状況でもなければ自分で恥ずかしいと理解している言葉を口にすることはなかっただろう。
しかし、今はどんな言葉であっても思い浮かんだ言葉は口にしたいと思うしするべきだとも思う。
「俺は椎川以外の女の子には心を許してない。だから椎川以外にはこんなことはしない。あ、いやまあうるはには心を許してるけど」
「じゃあ新谷んはうるはちゃんにも簡単に抱きつく軽い男ってわけだ」
「いや、うるはにも心は開いてるけどさっきみたいに抱きついたりはしないよ。もしかしたら子供の頃にはそういうこともあったかもしれないけど」
「やっぱり軽い男なんだ」
「子供の頃はノーカンだろ」
「さあね。というかうるはちゃんに抱きついてないわけないじゃん。だってうるはちゃんと付き合ってるんでしょ?」
「いや、それは嘘だ。俺はうるはとは付き合ってない」
これまでは気付かれまいと躍起になっていたが、今はもう嘘をつく必要はない。俺も椎川も、秘密を知った状態じゃないとフェアじゃないのだから。
「知ってるよ。付き合ってないって嘘ついてたけど本当に付き合いだしたんでしょ」
……は? 知ってる?
椎川は俺とうるはが付き合っているという話は嘘だと気付いていたのか?
というか、本当に付き合い出したって話は全くの見当違いなんだが……。
「ちょ、ちょっと待て。ツッコミどころは沢山あるけど、俺がうるはと付き合ってないって知ってたのか?」
「知ってたよ。新谷んと橘くんが2人でファミレスにいた時に偶然私も隣の席にいて盗み聞きしちゃったから」
盗み聞きってマジか……。必死になって隠してたのにそんなことでバレてたのかよ……。
注意をしていたつもりだったが、やはり嘘ってのは隠しきれないものなんだな。
「なんだよそれ……。まあそれはまだいい。俺とうるはが付き合ってるって話は誰に聞いたんだよ」
「だ、だって新谷んたち……」
「新谷んたち?」
「……」
「……?」
「な、なんでもない‼︎」
「気になるだろ‼︎ 教えろよ‼︎」
「嫌だね、教えない‼︎」
「教えてくれ‼︎」
「教えない‼︎」
「教えてくれ‼︎」
「教えない‼︎」
「頼む、教えてくれよ……」
「ああもううるさいなぁ‼︎ だって新谷んたち、キスしてたじゃんか‼︎」
……キス?
椎川から飛び出したとんでもない発言に俺は疑問符を浮かべた。
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