第27-2話 「椎川先輩可愛そう……」
いつもより疲労を感じながら帰宅した俺は自室でベッドに寝転がりながら椎川の行動について考えていた。
「……はぁ。最近あいつどうしちまったんだよ」
ここ最近の椎川は、うるはのことが好きかと尋ねてきたり椎川に彼氏がいなかったらどうするかと尋ねてきたり、これまでと比較して明らかに様子がおかしい。
明確な理由は分からないが、以前のようなただ冗談で毎日告白をするだけの関係性ではなくなってきているような気がする。
いや、嘘で告白をするだけの関係ってのも変な話ではあるが、お互い彼氏彼女がいる状況なのだから俺たちが友達以上の関係になることは絶対にあり得ない。
変わるはずのない関係なのに、椎川の様子がおかしくなってしまったのはなぜなのだろうか。
万に一つもありはしないと思うが、やはり俺とうるはの関係に気付かれてしまったのか?
それならそれで軽蔑されるような気がするのだが、椎川の様子からは別段俺のことを嫌いになったような雰囲気は感じ取れない。
「ダメだ、本当に分からん」
「どうしたの? なんか考え事してるみたいだけど」
俺の部屋に入ってきてそう声をかけてきたのは妹の
唐突に俺の部屋に入ってきては漫画を持っていき勝手に読み漁っており、今回もどうやらまた漫画を取りに来たらしい。
妹ながら部屋着の短パン半袖に髪を上げたその無防備な姿に見惚れてしまいそうになる。
一度は椎川を近親相……と疑ったというのに、人の事は言えないな。
「ちょっとした悩み事だ」
「お兄ちゃんが悩み事なんて珍しいね。何でもかんでも嘘ついて上手くまとめてるのかと思ってたけど」
雫は俺が彼女がいると嘘をついていることを知っている。
雫は俺と同じ中学に通っていてうるはとも面識があり、今は俺と同じ高校に通う1年生なので流石に妹にまで嘘を貫き通すのは難しいと考えたからだ。
「おい、お兄ちゃんは必要な時しか嘘つかないからな。何でもかんでも嘘で片付ける適当な人間ではないからな」
「私からはそう見えてたけどねー。それで、何に悩んでるの?」
「同じクラスの椎川のことなんだけど……」
「--え⁉︎ お兄ちゃん椎川先輩と面識あるの⁉︎」
今まで興味なさそうに話していたのに、椎川の名前を出した途端急に食いついてきた。
というか友達でもなく、面識あるの⁉︎ と言ってる時点でお兄ちゃんのこと見下してるだろ。
「ああ。一応同じクラスで席が隣だし、普通に会話くらいはするけど」
「うわー。お兄ちゃんみたいな人と話さないといけないなんて椎川先輩可愛そう……」
俺のこと、どんな目で見てるんだ妹よ。
「椎川の様子が最近変でな。それで悩んでたんだ」
「そうなんだ」
「どうしたもんかなぁ」
「何に悩んでるかは知らないし別に聞く気もないけど、お兄ちゃん変に勘がいいところあるから、自分がそうした方がいいと思ったらその通り進んでみた方がいいと思うよ」
「なんだそれ」
「それじゃ、この漫画借りてくねー」
そう言って雫は部屋を出て行った。
俺の思ったとおりって言われたってなぁ……。
まあ考えている事がないわけではない。
雫の言う通り、思った通りに行動してみるか。
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