第27-1話 「どうする?」
今日は新谷んと関わらないでおこうとそう心に誓ったのに、そんな時に限ってなぜこんなことになるんですか神様……。
私はしばらく深く関わらないでおこうと決めたはずの新谷んと2人きりで教室にいた。
「よし、みんな出て行ったし俺らも行くか」
「うん……」
これまでは願っても新谷んと2人きりで教室にいることなんてなかったのに、2人で日直が当たっていたため、移動教室の最後に教室の鍵を閉めるため、私と新谷んは他の生徒が出て行くまで教室に残っていた。
いくら教室の鍵の管理が日直の仕事とはいえ、こんな日くらい杏樹に日直を代わって貰えばよかっただろうか……。
今朝新谷の姿を見て教室から飛び出して行ったこともあって新谷んとはどうも会話をしづらかった。
「どうした? やっぱ体調悪いのか?」
「いや、あの、本当にそういうわけではなくて……」
「体調が悪くないならなんだっていうんだよ」
「そ、それは……」
あーもうどうしよう。
新谷んに彼女がいないと知ってしまったことで、私は完全に新谷んを意識してしまっている。
まともに目を見て会話できないよ……。
それなのに新谷んは私の態度を訝しんで普段よりグイグイくるし……。
「椎川がそっけないから、心配なんだが」
「--へ?」
私は新谷んからでた意外な言葉に思わず硬直してしまった。
私がそっけないから心配というのは要するに、私に冷たくされて、嫌われていないかどうかを心配してしまったってこと?
それって本当は彼女がいない新谷んが私のことが好きで嫌われるのが心配ってこと⁉︎
いや、それは都合よく考えすぎなのは分かってるんだけど……。
「私がそっけないから、嫌われたんじゃないかってこと?」
「あえて短い言葉で話したんだから言語化すんな」
え、な、なにそれ……。
めっちゃ可愛いんだけどっっっっ⁉︎
だめだだめだこのままだと余計に私の関心が新谷んへと向けられてしまう……。
「……新谷んはさ、私に彼氏がいなかったらどうする?」
「どうするってなんだよ。椎川には彼氏がいるし、俺にも彼女がいるんだから」
「だからもしもの話だって言ってるでしょ」
な、何を聞いているのかと顔が赤くなってしまいそうだが、ここまで聞いたからにはもう後には引けない。
「……もし出会う順番が椎川の方が先だったら、どうなってただろうな」
「え、それって……」
「ほら、もう行くぞ」
「う、うん……」
新谷んは照れ隠しのようにそそくさと教室から出て行ってしまった。
いや、出会う順番も何も新谷ん付き合ってないんでしょ?
てことは、それってもう私に好意があるってことなんじゃ……。
もしかすると、私が彼氏がいないって新谷んにつたえれば私と新谷んは付き合えたりとか……。
そうしたら、手を繋いだらハグしたりキスしたり、最後には……。
そう考えた瞬間、私は両手に持っていた移動教室で使う予定の教科書類に顔をうずくめて、過去最高に顔が赤くなっていたと思う。
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