尋問
第14-1話 「「……あ、あの‼︎」」
「「……あ、あの‼︎」」
また別の日の昼休み、俺が椎川に例の疑惑についてそれとなく問い詰めようとすると、全く同じタイミングで椎川が話し始めようとして言葉が被ってしまう。
「「そっちからどうぞ」」
気まずくなってしまったので、先に椎川に要件を話してもらおうと思ったのだが、その言葉さえ椎川と同じタイミングになってしまった。
1度言葉が被っだけでも気まずいのに、2度もタイミングが被ってしまい俺と椎川の間には微妙な空気が流れている。
「すまん。そらじゃあ俺から訊かせてもらうわ」
「ど、どうぞ」
「椎川の彼氏ってどこに住んでんの?」
「……へ? なんでそんなこと新谷んに言わないといけないの」
うん、それはごもっともです。ごもっともなご意見なんですけどね? あなた今まで散々俺にそういう質問してきてるのよ。
なんで俺がその質問答えないといけないの? って類の質問を大量にしてきてるのよ。
それなのに、今回俺が珍しく質問したら、なんでそんなこと言わないといけないの、ってその仕打ちはなくないですか椎川さん。
「いや、まあそりゃそうなんだけどさ」
「個人情報なんで言えません」
本当に彼氏がいないのだとしたら、どこに住んでるかと質問すれば椎川は狼狽えるはず。
そう思って質問をしたが、椎川は俺の質問に答えてはくれなかった。
直接彼氏がいないのではないかとは聞きづらかったので、遠回しに彼氏がいないかどうか事実確認をしていこうと思っていたのだが、個人情報だと言われて隠されてしまえばこちらとしてはもう打つ手がない。
もう少し粘ってみて、粘っても答えが引き出せなさそうならとは思っていたがもう俺には手札がない。
こうなったら……。
「椎川ってさ、本当に彼氏いるのか?」
できることなら直接的な質問をせずに答えを知りたかったが、そう質問する以外方法はなかった。
「え、な、そんな嘘なわけないじゃん。急に疑ったりしてどうしたの?」
まあ想定していた回答ではある。
仮に本当に彼氏がいなかったとして、彼氏いないんじゃないか? と聞かれて、そうなんですよ彼氏いないんですよ、と正直な回答をするはずはない。
「いや、特に理由はないんだけどな。なんとなくだよ」
「なんとなくでそんな質問する?」
「したんだから仕方がないだろう」
「じゃあ新谷んこそ、本当に彼女さんと付き合ってるの?」
勿論想定はしておりその想定が杞憂に終わることを願っていたが、嫌な質問が自分に返ってきてしまったと先程の質問をしたことを後悔する。
「付き合ってるよ。付き合ってもないのに付き合ってるなんて言うわけないだろ?」
「それなら私だって同じだよ。付き合ってないのに付き合ってるなんていうわけないし」
「どうだかな。周りの友達はすぐ彼氏ができるのに、彼氏ができないのが嫌で嘘ついたんじゃないのか?」
「そ、そんなわけないでしょ⁉︎ それなら今度ダブルデートでもしようじゃない‼︎」
「ああいいよしてやろうじゃねぇか‼︎」
……あれ?
思わず熱くなってしまったが今俺、売り言葉に買い言葉でとんでもないことを口走らなかったか?
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